「改正NTT法」が可決。通信業界で波紋を広げる背景

通信業界に波紋を広げている「日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」(改正NTT法)が2024年4月17日に行われた参議院本会議で可決されました。 この記事では、NTT改正法に盛り込まれた内容と、通信業界で波紋を広げた背景を詳しく紹介していきます。

通信業界に波紋を広げている「日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」(改正NTT法)が2024年4月17日に行われた参議院本会議で可決されました。
この記事では、NTT改正法に盛り込まれた内容と、通信業界で波紋を広げた背景を詳しく紹介していきます。

改正NTT法とは

「改正NTT法」は、「日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」の通称で、日本の情報通信産業の国際競争力の強化を図るため、日本電信電話株式会社(NTT)および東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)の3社に対して、研究に係る責務の廃止、外国人役員に関する規制の緩和など、以下の5つの改正が盛り込まれています。

  1. 研究の推進責務及び研究成果の普及責務の廃止: これにより、研究開発の自律性を高める
  2. 外国人役員に関する規制の緩和: 外国人役員を一切認めない規制から変更し、外国人が代表取締役に就任することや役員の1/3以上を占めることを禁止する規制に緩和する
  3. 役員選解任の決議に係る認可の事後届出への緩和: 役員の選任や解任に関する決議を事前の認可から事後の届出に変更し、手続きを緩和する
  4. 剰余金処分の決議に係る認可の廃止: 剰余金の処分に関する決議に必要な認可を廃止し、より柔軟な財務運用を可能にする
  5. 会社名(商号)の変更の自由化: NTT、NTT東日本、NTT西日本の各社が、自社の商号を変更できるように規制を緩和する

通信業界で波紋を広げている背景

日本の通信はもともと国営事業(旧:電電公社)として運営されていました。当時は市場における競争が存在せず、1985年の東京から大阪への昼間3分間の通話料が400円に設定されるなど、料金が高止まりしていました。

そんな中、通信分野における技術革新や国際化の進展を目指して、1985年に「通信自由化」され、競争を活性化するために「日本電信電話株式会社法」(NTT法)が施行されるとともに、電電公社がNTTとして民営化されました。
これにより競争が促進されたことで、続々と民間企業が参入し、通信料金が低廉化するとともに、通信技術の進歩につながった背景があります。

またNTTは、30年間で約25兆円もの費用を投じて構築された「資産」を承継していることから、特別な規制がなければ公平性に欠けるとともに、全国に広がる通信網の維持ができなくなる懸念が持たれています。

資産には約1,190万本の電柱や約110万キロメートルに及ぶ光ファイバ、約7,000ビルの局舎などが含まれています。


他の大手通信会社が示した懸念

改正NTT法について、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの大手3社は2023年10月に連名で「NTT法のあり方に関する見解について〜国益・国民生活に影響を及ぼす懸念がある3つのポイント〜」を発表しており、慎重な議論を求める要望書を自民党と総務大臣に提出しました。

  • 公正競争
    競争に伴うサービスの発展がなくなることによる、料金の高止まりやサービスの高度化・多様化が停滞する懸念
  • ユニバーサルサービス義務
    (あまねく日本全国での提供が確保されるべきサービス) 公社から承継した特別な資産を有するNTTの義務がなくなり、サービス撤退が自由になることで、地方などの条件不利地域におけるサービス維持ができなくなる懸念
  • NTTの外資規制
    公社から承継した特別な資産を有するNTTの株式の多数が外国人・外国政府に所有されることにより、わが国の基盤である通信インフラの安全保障を損なう懸念


さらに、2023年12月には「NTT法の見直しに関する181者の意見表明」として、様々な企業や組合による意見が表明されました。

その上で、改正NTT法が可決されたことにより、3社は同日に以下の3点を「4月17日に成立した改正NTT法への見解」として表明しました。

  • NTT法廃止を含めた検討や時限を設ける規定は、拙速な議論を招きかねない
  • 今後の慎重な検討を求める付帯決議がなされたことは、国益・国民生活を保護する観点から非常に意義が大きい
  • 引き続きNTT法の「廃止」には反対、より慎重な政策議論が行われることを強く要望


その一方で、「『ユニバーサルサービスの確保、公正な競争の促進及び電気通信事業に係る安全保障の確保等の観点から慎重に検討を行う』こと、『国民生活への影響も大きいものであることから、広く意見を聴取し、国民の理解が得られるよう検討の過程及びその結果について十分に説明を行うこと』などを求める付帯決議がなされたことは、国益・国民生活を保護する観点から非常に意義が大きい」とコメントしています。

今後の見通し

今後も「NTT法の廃止」を含めた新しい規制のあり方が議論されていくことになります。

KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの3社は、「引き続きNTT法の『廃止』には反対するとともに、国民の負担により電電公社時代に構築された日本電信電話株式会社の『特別な資産』を維持し、保護するための規律の時代に応じた見直しや強化も含め、NTT法のあり方について付帯決議に基づき、より慎重な政策議論が行われることを改めて強く要望します」とコメントしています。

今回の改正により、情報通信産業の国際競争力の強化を期待するとともに、今後も適切な競争環境が維持されるよう、慎重な議論が期待されます。

ソース:NTT法を巡る議論について(PDF)