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レガシーシステムとは?【DX用語辞典】

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DX Stock編集部DX Stock編集部
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レガシーシステムとは、企業や組織が長期にわたり使用している旧式の情報システムやソフトウェアのことです。これらのシステムは、かつては最新技術として導入されたものの、現在では技術的に時代遅れとなり、保守や運用が困難な状況にあります。

レガシーシステムは現在も多くの企業の基幹業務を支えており、重要な役割を果たしている一方で、現代のビジネス要件やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に対応できないという課題を抱えています。

レガシーシステムの特徴

レガシーシステムの一例として、金融機関や官公庁で大規模な業務処理を担ってきたメインフレーム、中小企業の事務処理に使われてきたオフコン、クライアントPCとサーバーで処理を分担するクライアントサーバーシステム、特定の企業向けに開発された独自開発システム、そして、サポートが終了した古いバージョンのパッケージソフトなどが挙げられます。

これらのシステムは、COBOLやアセンブラ、VBやDelphiといった古いプログラミング言語で開発されていることが多く、独自のOSやアーキテクチャ、専用のデータベースを使用しているなど、現代の技術とは異なる環境で稼働しています。

レガシーシステムがもたらす深刻な問題とは

レガシーシステムは、単に古いだけのシステムではありません。放置すると、企業の成長を阻害し、競争力の低下を招く原因となります。特に、以下のような問題が顕著です。

コスト負担の増大

レガシーシステムの運用や保守には、最新システムと比較して数倍のコストがかかることがあり、企業経営に大きな負担となります。さらに、改修や修正が必要な場合は、高度な専門知識を持つエンジニアを確保するために多額の費用が発生する場合があります。万が一システム障害が発生すると、復旧作業には膨大な時間とコストがかかり、業績の悪化につながるリスクも高まります。

セキュリティリスク

レガシーシステムは、最新のサイバー攻撃に対応するためのセキュリティパッチを適用できないケースが多く、顧客情報や企業の機密データが漏洩するリスクが非常に高い状態にあります。セキュリティホールが放置されると、攻撃者によるシステム侵入が容易になり、データ漏洩や不正アクセスといった重大な被害を引き起こす危険性が高まります。

DXの障害

レガシーシステムはクラウド対応や最新アプリケーションとの連携が困難で、新しい技術の導入を遅らせる要因となります。その結果、デジタル変革のスピードが大きく低下し、市場の変化に柔軟に対応できません。企業は競争力を維持するために迅速なDX推進が必要ですが、レガシーシステムの存在はその障害となり、成長機会を逃すリスクを高めます。

属人化のリスク

レガシーシステムは、その複雑な構造を理解できる担当者が限られているため、運用や保守業務が属人化しやすい傾向にあります。担当者が退職や異動をすると、システムを適切に管理・運用できる人材が不足し、業務の停止や大幅な遅延が発生するリスクがあります。さらに、属人化が進むことで業務効率が低下し、対応に必要な人件費や育成コストの増加を招く恐れもあります。

レガシーシステムからの脱却アプローチ

レガシーシステムからの脱却には、リプレイス(全面刷新)、リファクタリング(再構築)、ラップアラウンド(段階的モダナイゼーション)という3つのアプローチがあります。それぞれについて解説します。

Replace(リプレイス):システムを全面刷新して課題を根本解決

「Replace(リプレイス)」は、古いシステム全面刷新して最新のシステムに入れ替える方法です。このアプローチには、セキュリティや業務効率を根本から改善し、企業の成長を促進する効果があります。しかし、導入コストが高く、移行に時間がかかるため、業務への影響が大きくなる可能性もあります。将来的なビジネス拡大やセキュリティリスクの排除を重視する企業に適した選択肢です。

Refactoring(リファクタリング):既存システムを整理して再構築

「Refactoring(リファクタリング)」は、既存システムの内部構造を整理・改善する方法です。システムの寿命を延ばし、保守性を高めることで、リプレイスよりも低コストで移行期間を短縮できる利点があります。また、現行システムを使い慣れたまま改善できるのも大きなメリットです。ただし、根本的な問題解決にはならない場合や、高度な技術力を要する点が課題です。コストを抑えつつシステムを延命したい企業や、社内に専門技術者がいる企業に適しています。

Wrap Around(ラップアラウンド):既存システムを活かして段階的に強化

「Wrap Around(ラップアラウンド)」は、既存システムを活かしつつ最新技術を追加するアプローチです。古いシステムと最新技術を連携させることで、段階的にモダナイズでき、業務への影響を最小限に抑えられます。さらに、低コストで最新技術の恩恵を受けられる点も魅力です。しかし、システムの複雑化や根本的な課題の解決には至らない場合があります。コストを抑えつつ少しずつシステムを改善したい企業や、既存システムとの連携を重視する企業に適したアプローチです。

レガシーシステム脱却アプローチの成功事例

大手金融機関:基幹システム刷新で競争力を強化

課題:
大手金融機関A社では、COBOLで構築された基幹システムが老朽化し、保守費用が年々増加していました。システムの複雑化により、新たな金融商品やサービスへの対応が困難となり、頻発するシステム障害による顧客への影響や信頼低下も懸念されていました。

アプローチ:
レガシーシステムを全面的に刷新し、クラウドベースの最新システムへと移行する「リプレイス」を選択。業務プロセスを見直し、システム要件を最適化しながら、移行ツールと手作業を組み合わせることでデータの正確性を確保しました。

効果:
システム処理速度が従来の10倍に向上し、業務効率が飛躍的に改善されました。また、最新のセキュリティ対策を導入することでサイバー攻撃のリスクを大幅に低減。さらに、柔軟なシステム構成により、新たな商品やサービスの開発スピードが向上し、競争力強化と運用コスト削減を同時に実現しました。

ソフトウェア開発企業:顧客管理システムを再構築

課題:
ソフトウェア開発企業B社では、顧客管理システムのソースコードが複雑化し、保守や機能追加が困難になっていました。さらに、システム開発担当者の退職により仕様理解者が不足し、改修の遅れが顧客対応にも影響を与える状況でした。

アプローチ:
既存システムを活かしつつ、ソースコードを整理・改善する「リファクタリング」を採用。システム構造の可視化ツールを活用し、詳細な解析を実施。不要コードの削除や重複コードの統合、可読性の高いコードへの書き換えを行いました。

効果:
システムの保守性が向上し、改修作業の時間が大幅に短縮。新たな担当者もシステムを容易に理解できるようになり、属人化のリスクが低減しました。また、システムの安定性が向上し、障害発生頻度の低下と顧客要望への迅速な対応が可能になりました。

大手製造業:生産管理システムをモダナイゼーション

課題:
大手製造業C社では、生産管理システムが老朽化し、最新の生産技術への対応やデータ連携が困難でした。システムが複数部門に分散していたため、リアルタイムの生産状況把握や柔軟な生産計画の立案が難しく、クラウドサービスの導入も遅れていました。

アプローチ:
既存の生産管理システムを活かしつつ最新技術を追加する「ラップアラウンド」を選択。クラウドサービスと既存システムを連携させるAPIを開発し、データ連携を可能にしました。また、現場担当者がリアルタイムで生産状況を確認できるモバイルアプリを導入し、業務効率化を図りました。

効果:
既存システムを維持しながら最新技術を取り入れることで、業務への影響を最小限に抑えつつモダナイゼーションを実現。データ連携の強化により、正確な生産管理と迅速な意思決定が可能になりました。モバイルアプリを通じて現場担当者の作業効率も向上し、クラウド活用による運用コストの削減も達成しました。

レガシーシステムからの脱却でビジネスチャンスを拡大

レガシーシステムは、多くの企業にとって今なお重要な資産である一方、デジタル変革が求められる現代では競争力を低下させる要因にもなり得ます。そのため、システムの刷新やモダナイゼーションは、企業が持続的に成長するために欠かせない取り組みです。

適切な計画と最新技術の活用によってレガシーシステムからの脱却を成功させれば、業務効率の向上や競争力の強化が実現します。さらに、柔軟なシステム環境への移行は、企業のビジネスチャンスを広げるきっかけにもなるでしょう。

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