ディープラーニングとは?従来の機械学習の違いや仕組み【DX用語辞典】
DX用語辞典近年、AI(人工知能)関連のニュースを目にする機会が増え、ビジネスや日常生活への応用が急速に進んでいます。その進化を牽引している中心的な技術が「ディープラーニング」です。聞いたことはあるけれど、詳しいことはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ディープラーニングの基本的な概念や従来の機械学習との違いを解説します。
ディープラーニングとは?従来の機械学習との違い
ディープラーニング(深層学習)は、大量のデータからコンピュータが特徴やパターンを自ら学習する技術のことで、機械学習のひとつです。
従来の機械学習では、人間がコンピュータに特徴量(データセットの特徴を定量的に表したもの)を設計する必要がありました 教え込む必要がありました。例えば、猫を認識させるためには「耳の形」や「ヒゲの長さ」など、猫の特徴を人間が定義しなければなりませんでした。
一方ディープラーニングでは、大量の猫の画像データをコンピュータに与えるだけで自ら「猫らしさ」を学習し、猫を認識できるようになります。
人間が特徴量を設計 を定義する必要がないため、開発効率が大幅に向上し、より複雑な問題にも対応できます。この自動的に特徴量を抽出する能力が、ディープラーニングと従来の機械学習の大きな違いです。
ディープラーニングの仕組み
ディープラーニングは、ニューラルネットワーク(NN)と呼ばれる人間の脳の神経回路を模した仕組みを使っています。
ニューラルネットワークは入力層・中間層・出力層の3つの層で構成されており、一般的に、中間層が複数ある深い構造のニューラルネットワークを用いる機械学習手法をディープラーニング中間層が3層以上あるニューラルネットワークのことをディープラーニングと呼びます。
- 入力層:情報が最初に入力される層です。例えば、画像であれば各ピクセルの色の情報が数値化されて入力されます。
- 中間層:データを計算・分析するための層です。中間層が多いほどより複雑なデータ処理が可能になります。
- 出力層:最終的な判断や予測結果が出力される層です。
データはまず入力層に入力され、複数ある中間層を通って分析が行われたのちに、出力層から結果が出力される仕組みです。
中間層が多いほど、より複雑な分析や予測が可能になります。
ディープラーニングの種類
ディープラーニングには様々なアルゴリズムがあり、それぞれ得意な分野や特徴が異なります。ここでは、代表的なアルゴリズムを3つ紹介します。
- 畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network): 画像認識や画像生成に特化したアルゴリズムで、画像内のパターンや特徴を学習します。畳み込み層とプーリング層を交互に配置し、画像データから特徴量を抽出する能力があり、自動運転や監視カメラなど、多くの分野で応用されています。
- 再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network): 時系列データの処理に特化したアルゴリズムです。過去の情報を保持し、新しい情報と組み合わせて処理するため、データの順序が重要なタスクに有効です。高速道路の混雑状況予測や株価予測などにも用いられています。
- 敵対的生成ネットワーク(GAN:Generative Adversarial Network): データの分布を学習し、新しいデータを生成することに特化したアルゴリズムです。生成器と識別器という2つのネットワークが互いに競い合うように学習を進めることで、より品質の高いデータを生成できます。
ほかにも、オートエンコーダ(Autoencoder)や長・短期記憶(LSTM)などのアルゴリズムが存在します。それぞれ異なる特性を持ち、ディープラーニング技術の進化とともに多くの分野で活用されています。
ディープラーニングでできること・活用例
ディープラーニングにできることは、画像認識や自然言語処理、音声認識、異常検知などがあります。ここでは、ディープラーニングの活用例とあわせて解説します。
画像認識
画像認識は「画像に何が写っているか」をコンピュータが理解するための技術であり、パターン認識の一種です。対象物の形状や色などの特徴をもとに、それが何であるかを判断します。
具体的な活用例は以下の通りです。
- 自動車の自動運転: 自動車の周囲の状況を認識し、安全な走行を支援するために活用されています。
- 医療画像診断: MRI画像から病変を検出する支援ツールとしても利用されており、医師の診断をサポートします。
- 製造ラインでの欠陥検出: 製品画像を解析し、傷や汚れなどの欠陥を自動的に検出します。人による目視検査に比べて、検査精度の向上が期待できます。
自然言語処理
自然言語処理は、人間が日常的に使用する言葉をコンピュータに理解させる技術です。
ディープラーニングの進歩により、文章生成や要約、翻訳などのタスクで高精度な処理が可能になり、多くのツールが実用化されています。
- 文章の生成・要約: メールやコラム記事などの文章生成をサポートします。長文のニュース記事や論文などの要約も可能で、効率的な情報収集にも役立ちます。
- 翻訳: 従来よりも高い精度での翻訳を実現し、異なる言語間でのコミュニケーションを円滑にします。リアルタイム翻訳機能は、国際会議や海外旅行などの場面で活用されています。
- チャットボット: 顧客からの問い合わせに応答するシステムとして利用されています。
音声認識
音声認識は、音声データをコンピュータが認識し、テキストデータに変換する技術です。
ディープラーニングによって音声認識の精度が向上し、音声検索や議事録の作成などのシーンで利用されています。
- 音声検索: スマートフォンやスマートスピーカーに話しかけるだけで、必要な情報を簡単に検索できます。
- 議事録作成: 会議や商談中の会話をリアルタイムでテキスト化し、自動的に議事録を作成できます。
- 問い合わせ対応: コールセンターや電話窓口で顧客との通話内容を自動でテキスト化します。
異常検知
異常検知は、データの中から通常とは異なる異常なパターンを検出する技術です。ディープラーニングを活用することで、大量のデータから複雑な異常パターンを学習し、より高精度な検知を実現できます。
具体的な活用例は以下の通りです。
- 不良品検出: データを学習し、それにもとづいて不良品を識別します。例えば、食品業界ではキユーピーがダイスポテトの選別作業にAIを導入し、不良品の検知精度を向上させました。
- 機械故障の予知保全: 製造ラインでは、機械が故障する前に異常を検知するシステムが導入されています。機械のセンサーデータから故障予兆を検知し、予知保全に役立てます。
- 金融業界での不正使用検知: クレジットカード会社や銀行では、AIを用いて不正取引をリアルタイムで検知・防止しています。AIは過去の取引データからパターンを学習し、普段と大きく異なる行動を検出します。
ディープラーニングのメリット・デメリット
ディープラーニングについて理解を深めるために、メリットとデメリットについて解説します。
メリット
ディープラーニングには、主に以下のようなメリットがあります。
- 高い精度: 大量のデータから複雑なパターンを学習できるため、従来の手法よりも高い精度でタスクを実行できます。特に、画像認識、音声認識、自然言語処理といった分野では、人間と同等あるいはそれ以上の精度を達成するケースも出てきています。
- 自動的な特徴抽出: 従来の機械学習では、人間が特徴量を設計する必要がありましたが、ディープラーニングはデータから自動的に特徴量を抽出できます。また、人間が気づかない隠れた特徴量を抽出できる可能性もあります。
- 汎用性: 多様な分野に応用できる汎用性の高さもメリットです。画像認識から音声認識、自然言語処理まで多岐に渡るタスクに応用できます。
デメリット
ディープラーニングにはメリットだけでなく、以下のようなデメリットもあります。
- 大量のデータが必要: 高い精度を実現するためには、大量の学習データが必要です。数万枚、ときには数百万枚の画像データが必要となるケースもあり、データの収集と前処理に多大な時間とコストがかかる可能性があります。
- ブラックボックス問題: なぜその結果が出力されたのかを説明することが難しい「ブラックボックス」も指摘されています。特に医療や金融などの分野では、結果の根拠を明確にすることが求められるため、課題となっています。
- 高コスト: ディープラーニングの導入・運用には、高性能な計算資源(GPUなど)や専門知識を持つ人材が必要となるため、従来の分析手法よりも高額な開発コストが発生する傾向があります。
ディープラーニングの未来
ディープラーニングは、画像認識から自然言語処理、音声認識まで多様な分野で成果をあげてきました。しかし、大量の学習データが必要なことやその推論過程がブラックボックスであるといった課題も抱えています。
今後、これらの課題を克服するために、様々な研究開発が進められると考えられます。また、より人間に近い認知能力を持つ汎用人工知能 (AGI) の実現に向けた研究もディープラーニングを基盤技術として進展していくと期待されます。
ディープラーニングは、私たちの社会や生活を豊かに、便利にする大きな可能性を秘めた技術です。今後の発展に注目し、その可能性を最大限に活かしていくことが重要です。