【調査レポート】日本企業におけるDXの取組とその成果をまとめた「DX動向2024」をIPAが発表
調査データ独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、日本企業のDXに関する最新調査結果をまとめた「DX動向2024」を2024年6月27日に公開しました。調査によると、日本企業のDXの取り組みは年々増加傾向にあり、成果が出ている企業の割合も増加しています。しかし、その一方で、特にデジタルトランスフォーメーション段階における成果創出は道半ばであることが明らかになりました。本稿では、「DX動向2024」の内容を基に、日本企業のDX推進の現状と課題について詳しく解説していきます。
日本企業のDX取り組み状況:米国に並ぶ高い取組率、しかし課題も
IPAの調査によると、2023年度における日本のDX取組率は73.7%に達し、前年度の55.8%から大幅に増加しました。これは、2022年度調査における米国のDX取組率とほぼ同水準であり、日本企業のDXへの意識の高まりが伺えます。
しかし、DXの取り組み状況を詳しく見てみると、全社戦略に基づいたDX推進に取り組んでいる企業は41.1%にとどまっており、残りの32.6%は部署単位での個別的な取り組みとなっています。全社的な戦略に基づいたDX推進体制を構築することが、より大きな成果につながると考えられます。
DXの成果:成果創出企業は増加も、質的な向上と米国との差が課題
DXの取り組みによって「成果が出ている」と回答した企業の割合は、2022年度の58.0%から2023年度は64.3%に増加しました。これは、DX推進の成果を実感する企業が増えていることを示唆しています。
しかし、9割近くの企業が成果が出ていると回答した米国と比べると、依然として大きな差があります。
デジタイゼーション・デジタライゼーション・デジタルトランスフォーメーション:各段階における成果と課題
DXの取り組み項目ごとの成果の状況を、「デジタイゼーション(アナログデータのデジタル化)」、「デジタライゼーション(デジタル化による業務効率化)」、「デジタルトランスフォーメーション(ビジネスモデル変革)」の3段階で尋ねた結果では、2022年度調査の傾向から大きな変化は見られなかった。
「アナログ・物理データのデジタル化」や「業務の効率化による生産性の向上」といった、比較的取り組みやすく成果も出やすい項目がある一方で、「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」といった、デジタルトランスフォーメーション段階の取り組みは、他の段階と比較して成果が出ていない傾向が見られます。これは、ビジネスモデル変革には、既存の組織構造や業務プロセス、企業文化などを抜本的に見直す必要があるため、多くの企業にとってハードルが高いことが要因として考えられます。
DX推進を支える技術:データ利活用、AI/生成AI、システム内製化…最新動向と課題
DX推進においては、データ利活用、AI/生成AI、クラウド、システム内製化、レガシーシステム刷新といった様々な技術が活用されています。
近年注目を集めているAI/生成AIは、業務効率化や顧客体験向上など、様々な分野での活用が期待されています。しかし、IPAの調査によると、AI/生成AIの導入率は未だ低く、その活用も限定的です。今後、AI/生成AIの倫理的な問題やセキュリティ対策などをクリアしながら、積極的に導入を進めていくことが重要です。
また、システムの内製化も注目されています。外部ベンダーに依存せず、自社でシステムを開発・運用することで、ビジネスニーズの変化に迅速に対応できるようになります。しかし、内製化には高度なITスキルを持つ人材が必要となるため、人材育成が課題となっています。
DX人材:育成と確保が喫緊の課題
DXを推進するためには、ビジネス、データ、テクノロジーに関する知識とスキルを兼ね備えた人材が不可欠です。しかし、IPAの調査によると、多くの企業がDX人材の不足に悩んでおり、これがDX推進の大きな障壁となっています。
DX人材を育成するためには、社内研修や外部研修、OJTなどを積極的に活用していく必要があります。また、外部人材の活用や、既存社員のリスキリングなども有効な手段です。
日本企業のDX推進に向けた提言
IPAの調査結果を踏まえると、日本企業がDXを成功させるためには、以下の点が重要であると考えられます。
- 経営層がリーダーシップを発揮し、全社的なDX推進体制を構築する。
- 明確なDX戦略を策定し、KPIを設定する。
- DX人材の育成と確保に積極的に取り組む。
- データ利活用、AI/生成AIなどの最新技術を積極的に導入する。
- ビジネスモデル変革など、デジタルトランスフォーメーション段階の取り組みを強化する。
DXは、日本企業にとって、競争力を強化し、持続的な成長を実現するための重要な取り組みです。IPAの調査結果を参考に、各企業が自社の課題を認識し、積極的にDX推進に取り組んでいくことが期待されます。