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DX進捗に課題、約4割が「不十分」と回答 - 専門人材不足とデータ活用の遅れが浮き彫りに ー タナベコンサルティング調査

調査データ
DX Stock編集部DX Stock編集部
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タナベコンサルティングが発表した「2024年度 デジタル経営に関するアンケート」の結果から、多くの日本企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に課題を抱えている現状が明らかになりました。約4割の企業がDXの進捗度を「全体的にまだ不十分」と回答し、その割合は昨年から6.9ポイント増加しました。この結果は、DXの取り組みが進んでいないだけでなく、その必要性を認識する企業が増加していることを示唆しています。

DX進捗は「不十分」が最多、戦略の欠如も深刻

アンケートでは、DXの取り組み進捗度について「全体的にまだ不十分」と回答した企業が37.2%と最も多くなりました。次いで「複数の業務でデジタル活用」が25.0%と続き、一部の業務ではデジタル化が進んでいるものの、全社的な変革には至っていない現状が浮き彫りになりました。

さらに、DX戦略についても、3割以上の企業が「デジタル施策は場当たり的」と回答しており、明確な戦略を持たないまま、個別のデジタル化を進めている実態が明らかになりました。また、26.3%の企業が「DX戦略はあるが推進度に課題」と回答しており、戦略を立てても実行に移せていない企業も多いことが示唆されました。

DX推進部門は設立も、専門人材不足が深刻化

DX推進体制については、約4割の企業が「DX推進部門を保有」していると回答しましたが、その多くが兼任中心であるということです。兼任中心の割合は昨年より7.0%増加しており、DXの需要に対して組織は作られたものの、専門知識やスキルを持つ人材が不足している状況が伺えます。

デジタルマーケティングへの取り組みも二極化

デジタルマーケティングの取り組み状況については、「現在実施はしていないが、これから取り組みたい」と回答した企業が33.7%と最も多く、依然としてデジタル化に着手できていない企業が多いことが判明しました。一方で、「デジタル施策は実施しているものの、成果に結びついていない」と回答した企業も29.6%に上り、デジタルマーケティングの取り組み成果には二極化が見られました。

データ活用の遅れが課題、表計算ソフト依存も

デジタルマーケティングの成果に課題を抱える企業では、データ活用レベルの低さも問題となっています。「有用なマーケティングデータがつかめていない」と回答した企業のうち、4割以上が「顧客データは表計算ソフトレベルで管理」しており、データ分析基盤の整備が遅れている状況です。

また、経営判断にデータを活用している企業でも、3割以上が「Excelでデータ加工している」状態であり、効率的なデータ活用には至っていないことが分かります。さらに、「データ活用できる人材が不足している」と回答した企業も24.1%に上り、データ活用のための人材育成・確保が急務となっています。

専門コンサルタントからの提言

タナベコンサルティングの専門コンサルタントは、今回の調査結果を踏まえ、以下の提言を行いました。

  • DXは単なるデジタル化ではなく、企業変革です: DXは、競争優位性を築くための企業変革であり、全社的な視点での取り組みが必要となります。推進組織には、各部門から横断的にメンバーを集め、IT・DX分野に明るく、戦略的な思考を持つリーダーを配置することが望ましいです。
  • 専門人材の育成とリスキリング: 外部からの人材採用だけでなく、継続的に人材が育つ仕組みを構築することが重要です。デジタルスキルだけでなく、経営知識やマネジメントスキルもバランスよく習得させるためのリスキリングも必要となります。
  • データ活用のための戦略策定: 「どのようなデータを何のために活用するか」という目的を明確にし、その上でデータ収集・分析基盤を整備する必要があります。
  • レガシーシステムの刷新: 柔軟なシステムを基幹に据え、新たな技術やツールを効果的に導入できる体制を構築することが重要です。
  • 業務整理と標準化: 業務効率化のためだけでなく、システム化の際に無駄な投資を防ぐためにも、業務整理と標準化が必要となります。
  • デジタル化によって生まれた時間の活用: デジタル化によって生まれた時間を、新たな利益創出や戦略的な業務に活用できるように、業務設計を行うことが重要です。

今回の調査結果は、日本企業のDX推進における課題を明確に示しました。多くの企業がDXの重要性を認識しつつも、具体的な取り組みや人材育成、データ活用など、多くの課題に直面しています。企業は、これらの課題に真摯に向き合い、具体的な戦略と計画を策定し、DXを推進していく必要があります。

調査概要

  • [調査対象] 全国の企業経営者、役員、経営幹部、部門責任者、デジタル担当者など
  • [調査期間] 2024年8月19日~2024年9月6日
  • [調査エリア]全国 
  • [有効回答数]計312件

※各図表の構成比(%)は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。

ソース:2024年度 デジタル経営に関するアンケート(PDF)

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