顧客体験と働きやすさの両立を目指す。コンフォートホテルなどを展開するグリーンズがIVRyを導入した背景
ホテルにとって電話は、お客様との大切なタッチポイントです。そんな電話業務に関して、顧客体験を損なわずに働きやすさの向上を目指した株式会社グリーンズによるIVRyの導入事例をご紹介します。
動画インタビュー
コンフォートホテルなどを中心に、全国97店舗のホテル(14,547室/2024年3月末時点)を運営する株式会社グリーンズ。世界45ヵ国・7,400軒以上のホテルを擁する米国チョイスホテルズインターナショナル社とのマスターフランチャイズ契約により、国内で「コンフォートホテル」「コンフォートホテルERA」「コンフォートイン」「コンフォートスイーツ」といった「チョイスブランド」を展開するほか、60年以上のホテル運営のノウハウを活かし、宴会場などを併設したシティホテルや宿泊特化型ホテルを三重県・東海地方を中心に展開する地域密着型の「オ リジナルブランド」を有しています。
2018年の新経営体制への移行を機に、新たな価値創造に向けて踏み出したグリーンズは、レジリエンスな企業(変化に対応できる柔軟な企業)としてDX推進による業務効率化と新しい顧客体験の創造に取り組むなかで、IVRyを導入。ホテルにおける電話という顧客接点を大切にしながらも、フロント業務で大きな比重を占めていた電話応答のリソースをうまく分配することで、顧客体験と働きやすさの向上を図っています。
本記事では、株式会社グリーンズ デジタル戦略室 専任課長 兼 システム管理課 課長の中本昇壱さんに伺った、IVRyの導入背景から活用方法と成果、そして今後の展望までをご紹介します。
お客様との大切なタッチポイントをデジタル化する際に、気をつけたいこと
——貴社は2022年8月に発表された中期経営計画「GREENS JOURNEY 2025」において、事業戦略を支える基盤のひとつとして「さらなるDX推進による業務効率化と新しい顧客体験の創造」を挙げておられます。貴社では具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。
顧客接点に関しては、店舗業務効率化を目的とした「セルフチェックイン・アウト機」を2019年より3年間で27店舗に導入しました。また、新しい顧客体験を創造するために、スマートフォンから最短30秒でチェックインできる「オンラインチェックイン」や、リアルタイムで朝食会場の混雑状況がわかるサービスを導入するなど、快適なホテル利用をしていただくためのデジタルタッチポイントを構築しています。
——DXを推進するなかで大切にしているのは、どのような点でしょうか。
当然、DXでは業務効率化や省人化も大切ではありますが、それよりもっと重要なのは、「お客様とのタッチポイントをデジタル化していくことで、お客様の体験がどのように変わり、顧客満足度にどんな影響を与えるのか」という点です。
いくら我々がお客様にとって便利だろうと思ってデジタル化を進めても、お客様自身にその利便性を感じていただけなければ、本末転倒です。人が臨機応変に対応したほうが、お客様にとっては早くてわかりやすい、ということも往々にしてありますから。身勝手で行き過ぎたDXになっていないかどうか、常に気を配るようにしています。
IVRyをテスト導入後、全店導入に踏み切った理由とは
——IVRy導入前は、電話業務において、どのような課題がありましたか。IVRy導入に至った経緯を教えてください。
電話の件数は昔に比べると減少しているものの、ピークの時間帯には依然として多くの電話がかかってきます。
ホテルにとってお客様からの電話は、大切なタッチポイントのひとつですから、以前は「電話が鳴ったら3コール以内に取らなければならない」というルールを設けており、優先度が非常に高いものでした。
フロントには3〜4名のスタッフが常駐しているものの、ピークの時間帯になると、電話を取るべきか、接客を優先すべきか迷う場面ができてしまっていました。
このバランスを見誤ると、どちらのお客様にもご迷惑をおかけすることになりかねません。
また、いつ電話がかかってくるかわからないため、常に電話をすぐに取れる場所から離れられない課題もありました。
「電話を取らなくても顧客満足度が下がらない、何か良い解決方法はないものか」と考えていたときに、ある展示会で見つけたのがIVRyでした。「こんなに安いなら、一度、試してみようか」と思ったのがきっかけですね。
——IVRyは1店舗でテスト導入したうえで、全店導入に切り替えましたが、どのようなことをテストしましたか。
最初にテストしたのが「コンフォートホテル伊勢」というセルフチェックイン・アウト機を導入している店舗でした。伊勢という土地柄、高齢のお客様が多く、Webサイトでの情報提供だけでは不十分。電話の数が非常に多く、他店舗に比べても電話業務の負荷が大きかったのです。
フロントスタッフが電話応答に追われていると、セルフチェックインのサポートができなくなってしまうことから、フロントスタッフが電話に縛られない環境をつくる必要がありました。
そこで、すぐに電話を取れるときには、そのままフロントスタッフが応答し、10秒間電話を取れなかったら、IVRyに転送して自動応答につながるようにしてみました。
これでもし顧客満足度が下がったり、お客様からのクレームが増えたりするようなことがあれば、導入を見送らざるを得なかったのですが、結果、そのような問題はまったく発生しませんでした。
最初のうちはつい無理をして電話に出てしまうこともありましたが、想定通りに使えることがわかりましたし、コストも許容範囲内だったので、全店導入に踏み切りました。
電話はIVRyに任せて、目の前のお客様を優先できる環境に
——IVRyの導入後、フロントスタッフの方から、どんな声が上がっていますか。
何が何でも電話を取らなければならないというプレッシャーから解放され、電話が鳴り続けていることによるストレスもなくなったことで「とにかく精神的に楽になった」と聞いています。
お客様が目の前にいる場合は、そのお客様が最優先ですが、IVRy導入前はお客様が遠くから自動ドアに入ってくるのを見て悩むこともありました。今は、電話応答はIVRyに任せることができるので、悩まずに目の前のお客様を優先できるようになりました。
また、本社では電話をしてIVRyに切り替わった際は「忙しい時間帯なんだな」と察することができるようになったといいます。その分、お客様からの大事な電話を取れるようになって、良かったのではないかと思います。
あとは、これまで電話の内容や件数、よくかかってくる時間帯など、電話に関するデータを把握できていなかったのですが、IVRyを導入したことで、これらが少しずつ見えるようになってきたことは、大きな進歩だと感じています。
たとえば「令和6年能登半島地震」の際には、金沢のホテルに多くのお問い合わせが寄せられていることがわかりました。このように、遠隔地からでも電話の着電数やお問い合わせ内容を把握できるようになったことは、非常に重要だと思います。
——ほかにも電話にまつわるデータが可視化されたことで、新たな気づきが得られたことはありましたか?
意外にも、電話での予約や企画の問い合わせはそれほど多くないということですね。
一方で、駐車場や朝食に関する情報、Webサイトでの予約方法など、Web上に記載があっても理解が難しいと感じるお客様からのお問い合わせが多いとわかりました。
すでにWeb上で予約を済ませたものの、「ちゃんと予約できていますか?」といった確認の電話もありますし、伊勢神宮に関する質問など、ホテルとは直接関係のないお問い合わせもありました。
ホテルの電話応答はサービスの一部になっていますが、実際、それがどのぐらいあるのかが見えたことで、お客様のニーズを把握できるようになったと思います。
——IVRyの機能の中で、特に役立っているものを教えてください
IVRyは、通話音声を自動で文字起こししてくれる機能が便利ですね。単に文字起こしするだけでなく、要約までされているので、全文を読まなくても内容を把握できます。
今までは見えていなかった「どんな内容の電話がかかってきているのか」「どの時間帯に電話が多いのか」といったことがすべて可視化されたメリットは大きいです。
——今後、電話業務の改善において、どのような取り組みをしていきたいですか。
IVRyの使い方に関しては、しばらくは現状維持で良い と考えています。お客様が使う面ではもちろん、我々が使う面でもあまり複雑にして利便性を損ねたくはないので。
ただ、「令和6年能登半島地震」の際に多くの電話があったことがわかったので、BCP(事業継続計画)対策の一環として、ホテルの状況を自動応答でお伝えできるような体制を整えていきたいと考えているのと、将来的にはIVRyの「AI電話代行サービス」を高齢者の方にも自然にご利用いただけるか検証していきたいですね。