「電話が鳴り止まない」現場を変えた。 トヨタレンタリース熊本が挑んだ、CSとESを改善する店舗DX

トヨタレンタリース熊本は、店舗スタッフの働きやすさと顧客満足度の両立を図るため、2024年に電話自動応答サービス「アイブリー」を導入しました。その結果、熊本空港店の電話応答率は60%から93%へと劇的に向上し、電話に出られない状況が改善されました。さらに、録音機能によって「言った・言わない」のトラブルを防止できるほか、インバウンド顧客への迅速な対応が可能になるなど、多角的な効果が生まれています。

1965年創業の株式会社トヨタレンタリース熊本は、企業理念「BEYOND MAKE HAPPINESS(幸せを超えて)」のもと、レンタカー、カーリース、そして自動車整備・鈑金を行う「テクノショップ」の3事業を柱に、熊本の移動を支えています。車両保有台数は8,580台(リースカー6,092台、レンタカー2,488台)に上り、県内15拠点で事業を展開しています。

2024年11月には、熊本の玄関口である熊本空港店をリニューアルオープン。インバウンド客の増加やビジネス需要の拡大を見据え、約420台分の駐車スペースを完備。新店舗にて、より安心・安全なサービスの提供と地域に愛される拠点づくりを目指しています。

同社は、店舗スタッフの働きやすさと顧客満足度の両立を図るため、2024年に電話自動応答サービス「アイブリー」を導入しました。その結果、熊本空港店の電話応答率は60%から93%へと劇的に向上し、電話に出られない状況が改善されました。さらに、録音機能によって「言った・言わない」のトラブルを防止できるほか、インバウンド顧客への迅速な対応が可能になるなど、多角的な効果が生まれています。

本記事では、トヨタレンタリース熊本 総合営業支援部 企画推進室 室長の三浦さん、熊本空港店 店長の山本さん、同スタッフの惣田さんに、アイブリー導入の背景から具体的な活用法、そして店舗にもたらされた効果について詳しくお話を伺いました。

創業60年の挑戦。TPS・TSLの考え方を基盤に進める、店舗オペレーションの標準化

——まず、トヨタレンタリース熊本での皆様の役割について教えてください。

三浦:私は企画推進室にて、販促企画の立案や全事業のマーケティング・広報を担当しています。また、基幹システムの運用フォローなども行っています。

山本: 熊本空港店の店長を務めています。昨年11月のリニューアルを経て、熊本の玄関口として、ビジネスやレジャーで訪れる全てのお客様へ「安心・安全な車」を提供できるよう、サービス向上に努めています。

惣田: 私は日頃、カウンターでのお客様対応や電話対応、レンタカーの貸し渡し業務といった接客全般を担当しています。

——DX推進という観点では、どのような取り組みを行っていますか。

三浦:弊社ではTPS・TSL(トヨタ生産方式・トヨタのセールスロジスティクス)の考え方を基盤に、全社で業務改善やデジタル化を進めています。 具体的には、昨年度から勤怠・労務管理や申請承認フローにシステムを導入し、基本的な手続きをすべてデジタルで完結させるようにしました。また、熊本空港店、テクノショップ、本社をリニューアルした際にはモニターを整備し、紙管理からクラウドやデータによる管理へと移行しています。

主要店舗ではデジタルサイネージを活用し、ポスター等の掲示物をペーパーレス化しました。トヨタのコンテンツに加え、地域の情報や企業CMなども放映しています。また、社内に「TSL推進室(トヨタのセールスロジスティクスの思想に基づく改善チーム)」を新設し、現在は店舗オペレーションの改善として、タブレット端末を用いた運用も進めており、業務の属人化を防ぐ「標準化」を目指している最中です。


最大のボトルネックは「電話対応」。機会損失とクレーム発生の悪循環

——電話業務について、アイブリー導入前はどのような課題をお持ちでしたか。

惣田: 業務が集中する時間帯は電話に出られないことが頻繁にあり、それがお客様からのクレームにつながっていた点が最大の課題でした。

山本: 特にレンタカーの出発が集中する午前9時から12時、返却が重なる夕方4時から6時は、目の前のお客様への接客に追われ、電話対応まで手が回らないケースが多発していました。 

店舗で受けきれない電話は別拠点のコールセンターへ転送していましたが、そこでも2名体制で3店舗分の対応を行っていたため、カバーしきれない状況でした。留守番電話も導入しておらず、電話が鳴りっぱなしの状態が続き、結果として「いつも電話がつながらない」という事象を招き、お客様へのご不便をかけてしまっていたのです。 来店されたお客様の対応中にも電話音が鳴り止まないことが日常化しており、目の前の接客を優先するあまり、電話応対がおろそかになってしまうのが実状でした。

三浦:本部としても、応答率などの現状を正確に把握できていないことが課題でした。どの店舗でどれだけ電話が鳴り、どれだけ取りこぼしているのか。また、その用件が新規予約なのか問い合わせなのかといった内訳も不明瞭でした。結果的に「電話が繋がらない」というご指摘の声が増加しており、早急な対策が必要でした。

決め手は現場からの「やってみたい」。CSだけでなく、社員を守るための選択

——アイブリー導入のきっかけについて教えてください。

三浦: もともと店舗の電話対応には課題感がありました。社内アンケートでも問題点として挙がっており、これはCS(顧客満足度)だけでなく、ES(従業員満足度)の観点でも解決すべき問題だと捉えていました。

 そんな折、管理部宛に届いたダイレクトメールをきっかけに検討が始まりました。ちょうど社内には働き方を協議する分科会があり、そこでもオペレーションの標準化や電話対応改善による「余力創出」が議論されていました。そこでアイブリーが紹介されたことが後押しとなり、管理部と分科会の双方で話が進み、導入に至りました。

——導入の決め手となった点は何でしたか。

三浦: 何より現場スタッフから「こうした課題があるので、ぜひやってみたい」という声が上がったことです。現場の切実な声があり、それを解決できるソリューションであったことが最大の要因です。 正直、やってみないと分からない部分はありましたが、他レンタリース店での導入実績があったため、「まずはやってみよう」と安心して踏み出すことができました。


応答率が60%から93%まで改善。受電漏れゼロを目指す体制への転換

——アイブリーを導入して、もっとも大きな効果は何でしたか?

惣田:AIによる自動受付やSMS送信機能のおかげで、スタッフが直接対応すべき電話件数が減少し、かかってきた電話にはほぼ確実に出られるようになりました。これに伴い、お客様からの「電話がつながらない」というご指摘が減ったことが一番の効果だと感じています。

山本: 最初は「こんなに電話が鳴らなくなるものか」と逆に心配になるほど、自動応答でスムーズに対応できていました。電話に追われる状況がなくなり、一件一件の対応に集中できるようになったことは非常に大きな変化です。 応答率は導入前の体感値である約60%から、導入後は93%まで改善しました。また、対応できなかった電話についても、事前に用件や録音データを確認できるため、準備を整えてから折り返しのご連絡ができるようになりました。

惣田: 折り返しの際、AIが文字起こしした内容とお客様の予約情報を照らし合わせることで、事前に状況を把握して対応できる点が非常に役立っています。通話内容が記録として残るため、予約漏れの確認はもちろん、お客様が日程を勘違いされていた場合でも、すぐに正確な情報をご案内できる点もメリットです。

トラブル防止と連携強化——「録音・文字起こし」が実現した情報共有の最適化

——アイブリーで特に価値を感じている点を教えてください。

 惣田: 全通話が録音されているため、電話番号や履歴から会話内容を確認でき、「言った・言わない」のトラブル防止に役立っています。 以前は、多忙により予約入力を忘れたのか、そもそもお電話をいただいていないのか、原因が判然としないケースがありました。今は音声データが残っているため、検索すれば事実確認がすぐに可能です。お客様の勘違いであっても履歴をもとに説明できるため、正確な情報を即座に提供できるようになりました。

山本:過去の通話履歴を遡れるので、例えば「延長のお電話を受けていたのに記録し忘れていた」といったミスも防げます。以前ならお客様に電話をかけて確認する必要がありましたが、今ではこちら側だけで完結するため、お客様の手を煩わせることもなくなりました。

惣田:日中は10名以上のスタッフが動いているため、以前は「誰が電話を受けたか」が分からなくなることがありました。現在は「誰が・どのような対応をしたか」が全て記録されるので、スタッフ間の情報共有もスムーズです。

山本:店舗とコールセンターとの連携が強化された点も大きいです。例えば、店舗から忘れ物の件で連絡し、お客様からの折り返しがコールセンターに転送された場合でも、以前のように「事情が分からない」といったことがなくなりました。履歴を確認すればすぐに状況を把握できるため、確認の手間が大幅に削減されています。

電話対応の心理的ハードルを低減。スタッフの働きやすさが「業務の質」を変える

——スタッフの働きやすさや業務の質の改善には貢献できていますか。

惣田: 以前は来店応対と電話応対に同時に追われ、余裕がない状況でした。予約電話を受けた後、すぐにシステムへの入力ができず不安になることもありましたが、今は録音を聞き返しながら確実に入力できるため、安心して業務に取り組めています。

山本:以前は電話がつながりにくかったため、お客様の第一声が「やっと出た」というお叱りから始まることも少なくありませんでした。マイナスの印象から会話がスタートすることに心理的な負担を感じていましたが、今ではそうしたことが一切ありません。電話に出るハードルが下がり、スタッフの応対への意欲も向上していると感じます。

三浦: 今回の導入は、業務効率化だけでなく「社員を守る」というES(従業員満足度)の視点が大きな決め手でした。その点に関しても、会社として高く評価しています。スタッフに余裕が生まれ、笑顔が増えたことで、結果としてCS(顧客満足度)にも良い影響が出るという好循環が生まれています。

山本: 電話に追われていた頃は、改善しようにもその余裕がありませんでした。しかし今は、間違いなく「より良い接客」が可能になったと実感しています。

インバウンド対応もカスハラ対策も。「記録」と「AI」がスタッフの盾になる

——インバウンド顧客への対応について、どのような効果がありましたか。

山本: インバウンドのお客様は年々増加しており、店舗によっては半数を占めることもあります。以前は電話を受けてから「日本語が通じない」と分かり、慌てて対応可能なスタッフを探すためにお待たせしてしまうことがありました。 今は文字起こし機能で事前に言語を特定し、適切な多言語対応スタッフが折り返すことができます。これにより、海外からのお客様へもスピーディなご案内が可能になりました。

——カスタマーハラスメント対策という観点では、どのような効果がありましたか。

山本: 全ての通話記録が残ることで「言った・言わない」の問題が解消され、それがスタッフの心理的な安心感につながっています。万が一のクレームの際も、しっかりと根拠を持って対応できる点は非常に心強いです。

三浦: かつては「電話がつながらない」というご指摘が頻繁に本社に届いていましたが、導入後はゼロになりました。電話に出られないことによるお客様のフラストレーションが解消されたことに加え、通話が録音されていること自体が、不当なクレームの抑止力になっている可能性もあると考えています。


アイブリー導入による成功体験が次の挑戦へのきっかけに

——今後、どのような取り組みをしていきたいですか。

山本: 電話業務に関しては、まだ応答率が100%ではありません。今後は100%を目指し、有人対応すべき電話の優先順位や自動応答の分岐設定などを見直していきたいと考えています。 また、現状は電話だけで予約を完結させるには至っていません。将来的には、お客様が希望車種を話すだけで予約まで完了する仕組みを実現できれば理想的ですね。

三浦: アイブリーの導入は、弊社の歴史の中でも「新しいサービスを取り入れ、成果を出した」という大きな成功体験となりました。 本来は「IVRy Analytics」を活用して、さらに攻めの分析を行いたいところですが、まだその段階には至っていません。まずは現状の整理と業務改善を徹底し、次のステップとして「攻め」のフェーズへ移行していきたいと考えています。

アイブリー

電話自動応答のアイブリー

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