AIで本社営業時間外の電話応答を自動化。「や台ずし」のアルバイト採用の歩留まりを改善【株式会社ヨシックスホールディングス】
祖業である建築業から飲食業に進出した異色の歴史を持ち、チェーン店と個人店の良いとこ取りをして地域一番店を目指す「老舗理論」、繁華街ではなく住宅街のある駅近に出店する「田舎戦略」、建築業と居酒屋の両輪を回すことで新規出店のコスト効率を上げるなど、ユニークな経営手法で注目を集めています。
そんな同社はDX推進の一環としてIVRyを導入。これにより、これまで対応できなかった本社での営業時間外のアルバイト応募電話を24時間体制で受付可能に。結果、これまで取り逃がしていた、全体の約4割に当たる営業時間外の応募にも対応できるようになりました。
IVRyの導入背景から活用方法、成果まで、株式会社ヨシックスホールディングス 常務取締役 伊達富夫さんにお話を伺いました。
店舗運営を効率化するためにDXを推進
——まずは伊達さんの役割について、教えていただけますか。
ホールディングスの常務取締役としてグループ全体に関わる部分もありますが、株式会社ヨシックスフーズの常務取締役 執行役員として、居酒屋チェーンの運営統括とDX推進などを担っています。 幹部を含めたメンバーの多くが飲食店運営経験者の中、私は広告業界出身という異色の経歴です。ビジネス全体を俯瞰し、異なる視点からの意見やアイデアも含めて新たな可能性を追求していくことが私の役割だと考えています。
——DX推進ではどのような取り組みを行っていますか。
私が入社した当時、店舗運営は紙ベースの業務が多く、レジも統一されていないなど、非効率な側面がありました。個人店のような店舗づくりは「や台ずし」の魅力ではありますが、その魅力を損なわない部分で、費用対効果を考えながらDXを推進しています。
例えば、売上分析ツールや勤怠システムを入れ替えて連携させたり、リファラル採用ツールなどを導入し、業務の効率化を進めています。以前は週に一度Excelを印刷して確認していた全体売上レポートが、今では勤務実績などの労働生産性を含めてリアルタイムで確認できるようになり、迅速な意思決定を可能にするための環境も整えています。
——モバイルオーダーも導入されましたよね。
はい、2024年の春に全店舗に導入しました。お客様にとってより快適な注文方法の選択肢を提供したいという想いからです。「ビールちょーだい!」といった店員とのやり取りによる賑やかさも居酒屋ならではの魅力の1つだと思いますので、その活気を損なわないよう、引き続き口頭での注文も歓迎しています。席に設置しているモバイルオーダーのポップには「口頭注文も、お気軽にどうぞ!」とあえて書いてあります。
一方で日本人は遠慮しがちな面もあり、スタッフが忙しそうにしていると注文するのをためらってしまう方もいます。単なる店側の都合ではなく、こうした、お客様側で選択できる良いサービスを提供したい、みなさんが楽しめる環境をつくりたい、そんな想いで導入しています。
約4割の応募を取り逃がしていた? IVRyで見えてきた可能性とは
——アルバイト採用では、どのような課題がありましたか?
アルバイトの応募に関しては、インターネットによる応募が多くなっているものの、電話番号の記載が必須な求人媒体もあるため、電話による応募もある程度あります。
以前は、エリアマネージャーなどがアルバイト応募の電話を携帯電話で直接受けていたのですが、電話に出られないことが多く、着信を常に気にしなくてはならないという問題がありました。
そこで、名古屋の本社で一括して受ける形に変更したのですが、本社は月〜土の8時45分から17時45分までしか電話に出ることができません。営業時間外の電話はすべてコール音がなるだけになってしまい、留守番電話も残せない状況でした。
営業時間外も含めてすべての電話に社内で応答するか、コールセンターに外注するか、の2択しかなかったところに、新たに現れた“第3の選択肢”がIVRyでした。
IVRyがあれば、これまで全く応答できていなかった営業時間外の電話をある程度、自動化できるのではないかと考えました。
——夜間や休日などの営業時間外はIVRyのAI電話代行サービスで自動応答
そもそも営業時間外にどれぐらいの電話がかかってきているのかも把握できていなかったのですが、IVRyは着電履歴がすべて残るため、営業時間外の着電数が可視化できます。その件数を見ると、約4割の電話が営業時間外にかかってきていることがわかりました。つまりこれまで約4割の電話を取り逃がしていたことになります。
この結果から、採用の歩留まりを改善できる可能性が高いと判断し、本格的に導入を進めることにしました。
求人への応募の電話は、ヒアリングしたいことが明確なので、まずはIVRyのAI電話代行サービスで対応することにしました。
ヒアリングしたいのは、「氏名」「電話番号」「希望する店舗」の3点です。ある程度うまくいっていたのですが、導入した当初は設問を変更できなかったことから、「希望する店舗」がうまくヒアリングできない問題がありました。その為、希望店舗を別途ヒアリングする必要が出てしまうのがネックとなっていたのですが、先日の機能アップデートにより、設問が変更できるようになり、うまくヒアリングできるようになりました。
AI電話代行サービスの良いところは、電話がかかってきてから、ヒアリングした内容がすぐにメールで送られてくる点です。音声を聞くと時間がかかってしまうため、テキストで確認できるほうが時短になります。
いまは、アルバイト応募者は同時に2~3社に応募することが一般的で、対応スピードが重要になっています。ATS(採用管理システム)や、録画面接を導入するなどにより、スピードの改善を図っていますが、電話応募に関してはIVRyによりスピードを速めるための仕組みづくりをしていきたいと考えています。
現状はすべての店舗の応募を1つの電話番号で受けているのですが、どうしてもその後にエリアの振り分け作業が発生してしまいますので、これから各エリアを統括する事業所ごとに電話番号を発行し、着電時点で事業所ごとに該当する応募を確認できるようにしていきたいと考えています。
スモールスタートで実験しやすいのがIVRyの魅力
——IVRyに対して最も価値を感じているところを教えてください。
何より安価に始められるので、スモールスタートで実験しやすい点がひとつあります。
また、これまで見えていなかった電話の着電状況を簡単に可視化できるようになり、これをもとに新たな考え方も生まれました。その結果、どこに投資すべきかの判断がしやすくなり、会社に対する説明も容易になったと思います。
そして、IVRyでは分岐の設定もノーコードで簡単に変更できるため、PDCAサイクルを回しやすいのも大きなポイントです。
これらの要素は、どんな規模の店舗であっても、導入後すぐに価値を享受できるところだと思います。
今後、我々は、人材採用の歩留まり改善だけでなく、忙しい時間帯にかかってくる電話予約の取り逃がしについてもIVRyを活用できないか、検討していきたいと考えています。
——IVRyは「最高の技術をすべての企業に届ける」をミッションに掲げているので、そのように評価していただけて嬉しく思います。
先日、某飲食企業の人事の方から「新店舗の応募対応と面接をすべて本部で行っているので、人事が疲弊して中長期的な動きが取りづらくなっている」という話を聞きました。これをIVRyでどこまで解決できるかは分かりませんが、今は人がすべて対処しなくても、テクノロジーを活用することで対応の選択肢を増やせる時代になったと思うのです。
IVRyは10年前には存在しなかったテクノロジーです。個人店でもチェーン店でも、それぞれに合った使い方ができると思うので、我々ならIVRyで他にどんな改善策を打てるのか、今後もいろいろと模索していきたいと考えています。