月2万件の電話対応を自動応答で効率化。慶應義塾大学病院の電話予約業務改革への取り組み

慶應義塾大学病院が��、外来予約や予約変更に関する電話対応の膨大な業務負荷という課題を解決するために導入したのが、電話自動応答サービス「アイブリー」です。アイブリーの活用により、電話対応件数の削減と業務効率化を同時に実現しました。 本記事では、慶應義塾大学病院 医事統括室の滝田啓さんと黒瀬菜帆さんに、アイブリー導入の背景から具体的な活用方法、そして導入によって得られた効果について、詳しくお話を伺いました。

1920年に設立された慶應義塾大学病院は、高度急性期医療を担う「特定機能病院」として、一日あたり最大約4,000人もの外来延べ患者を受け入れています。先進的な医療技術と多様な診療科を強みに、患者様中心の医療サービスを追求し続けています。

その慶應義塾大学病院が、外来予約や予約変更に関する電話対応の膨大な業務負荷という課題を解決するために導入したのが、電話自動応答サービス「アイブリー」です。アイブリーの活用により、電話対応件数の削減と業務効率化を同時に実現しました。

本記事では、慶應義塾大学病院 医事統括室の滝田啓さんと黒瀬菜帆さん(以下、敬称略)に、アイブリー導入の背景から具体的な活用方法、そして導入によって得られた効果について、詳しくお話を伺いました。

-- まず、貴院の概要とご担当業務について教えてください。

滝田: 私が所属する医事統括室は、病院の医療事務全般を担う部署で、外来受付や診療後の会計、レセプト請求といった業務を担当しています。患者様の対応から行政への請求業務まで、その範囲は多岐にわたります。私は課長として、全体の運用管理やシステム導入なども担当しています。

黒瀬: 私も同じく医事統括室に所属しており、国際診療部も兼務しています。主な担当は外来で、外国人患者様の受診対応なども行いながら、日々、患者様の多様なニーズに向き合っています。

-- 貴院では「AIホスピタル」としてさまざまなDX・AI技術を導入されていますが、全体的な取り組みについて教えてください。

滝田: 当院は2018年、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」に採択されたことを機に、病院全体のIT化・AI化を積極的に推進しています。患者様向けには、LINEを活用した外来呼び出しや予約確認、車いす型自動運転サービス(WHILL)、デジタルタブレット問診などを導入。一方、医療者向けには、入院病床管理システム(コマンドセンター)やお薬搬送ロボット、AIによる画像診断支援システムなどを活用し、業務効率化に取り組んでいます。

予約に関する電話は月間2万件。鳴り止まない状態が続いていた

-- アイブリー導入前、電話業務にはどのような課題がありましたか?

滝田: 当院では総合相談窓口とは別に、「初診予約」と「予約変更」専用の電話窓口を設けています。医事統括室が15名体制でこの予約専用コールセンターを運営していますが、最大の課題は膨大な電話件数でした。

月間の着信はおよそ2万件。日中は常に電話が鳴り続け、「つながりにくい」状態が常態化していました。数年前にWebフォームによる受付も導入しましたが、電話件数はほとんど減らず、根本的な状況の改善にはつながらなかったのです。

-- 医療機関ならではの電話対応の難しさもあると思うのですが。

滝田: 初診の患者様の場合、症状を詳しくお伺いし、適切な診療科を判断してご案内する必要があります。このヒアリングには時間がかかり、患者様ご自身も症状を的確に説明するのが難しいことが多いです。

さらに、各診療科や医師ごとに受け入れ条件等の細かいルールがあり、その確認・調整も必要です。結果として、1件の対応に時間がかかる傾向があり、効率化が難しい面があります。

-- アイブリーを知ったきっかけ、導入の決め手は何でしたか?

滝田: 電話業務を改善するためにコンサルタントの支援を受けていたところ、電話件数が多すぎることから「電話からWebフォームへ誘導する」という方策を提案され、アイブリーを含む複数社のサービスを比較検討しました。

その中でアイブリーを選んだ決め手は、「Webフォームへのスムーズな誘導」「価格」「機能の使いやすさ」の3点です。特に、スマートフォンをお使いの方にはSMSでWebフォームのリンクを送り、予約変更などをオンラインで完結できる点は大きな魅力でした。これなら患者様の利便性を高めつつ、現場の負担も軽減できると導入を決めました。

緊急性のない予約変更はWebに誘導。5割がWebで手続きへ

-- 導入後の具体的な効果を教えてください。

滝田: 何より、電話の着信数が大幅に減少し、現場スタッフの負担が大きく軽減されたのが最大の効果です。Webフォーム経由での予約変更が増えたことで、「電話がつながらない」という状況もだいぶ解消されました。また、管理画面で分岐ごとのデータが可視化されるため、案内文言の改善効果をすぐに把握できるようになったのもポイントです。これにより、スタッフが本来注力すべき業務に集中できる環境が整いました。

「緊急の予約変更」など電話での対応が必須なケースは残りますが、全体でみると、かかってきた電話の4分の1はWebへ誘導することができています。

-- アイブリー導入後、どのような工夫をされましたか?

黒瀬: まず、案内文言や分岐設定を細かく調整し、Web誘導率の向上に努めました。例えば、当初「ご希望の方はWebへ」という案内にしたところ誘導率が10%台でしたが、試行錯誤を重ねて文言を工夫した結果、現在では「通常の予約変更」を希望する方の約5割の患者様がWebフォームへ移行してくださっています。

アイブリーは、管理画面から分岐や案内文言をすぐに変更できるため、現場の声を反映した改善サイクルをスピーディーに回せるようになったことも大きいですね。

-- 高齢者やスマートフォンが苦手な方への対応はどのようにされていますか?

滝田: 緊急の予約変更が必要な方や、スマートフォンの操作が苦手な方には、従来通りスタッフが電話で対応しています。あくまで患者様の多様なニーズに合わせて選択肢を用意しておく、というスタンスです。スマートフォンからおかけの方にはSMSでWebフォームをご案内しつつ、「操作が難しい方はこのままお待ちください」といったように電話対応への道も確保することで、誰も取り残さない運用を心がけています。

-- アイブリーの管理画面や運用面で便利だと感じる点はありますか?

黒瀬: 管理画面では、分岐ごとのデータがすぐに可視化されるので、案内文言を変更した効果がすぐにわかります。「この分岐はあまり機能していないな」と感じたらすぐに修正できるため、改善のサイクルが非常に速いですね。また、以前は音声案内の文言を一つ変えるだけでも、担当部署に依頼して録音し直す手間と時間が必要でした。それが今では、自分たちでテキストを打ち込むだけで済むようになり、現場の負担は劇的に減ったと感じています。

-- 今後、アイブリーに期待する機能や要望はありますか?

滝田: 当院は診療日が不規則なので、カレンダー形式でアイブリーの対応曜日を一括設定できる機能があると非常に助かります。現状では週ごとに手動で設定を変更しているのですが、1年以上先まで診療予定が決まっているので、それをまとめて登録できると運用の手間が省けてありがたいです。

黒瀬: SMSでの双方向コミュニケーション機能もぜひ導入して欲しいです。例えば、予約可否の確認といった簡単なやりとりがSMSで完結できれば、さらに便利になると思います。現状はSMSの送信が一方通行なので、もし双方向になれば、折り返しのお電話をした際のすれ違いなども減らせるのではないかと考えています。