クラウド電話とは?固定電話との違いや仕組み・メリットを解説

近年、従来の企業における電話システムに代わる新しい仕組みとしてクラウド電話が注目を集めています。リモートワークやサテライトオフィス、スマートフォンの社用利用などのニーズに伴い、電話システムをクラウド化する動きが潮流となっています。
クラウド電話は、従来のPBXでは対応が難しい課題をクラウドで解決し、コスト削減や柔軟な運用が可能となります。
本記事では、クラウド電話の仕組みやメリット、従来型PBXとの違いをわかりやすく解説し、導入時のポイントもご紹介します。
クラウド電話とは?基本の仕組みと特徴
クラウド電話は、従来の電話システムに代わる新しい通信手段として注目されています。ここでは、その仕組みや特徴、導入のメリットなどを解説します。
クラウド電話とは
クラウド電話とは、インターネット上のサーバーを通じて通話機能を提供する電話システムです。物理的な交換機や専用ハードウェアが不要なため、初期コストを抑えたうえで導入できます。複数拠点での利用も可能で、拠点間の内線通話を効率化し、スムーズな業務連携を実現します。
クラウド電話の主な機能
- 内線通話:外線を使わずに社内間で通話する
 - 転送機能:通話をほかの内線や外線に転送する
 - 保留機能:通話中の保留
 - 自動応答(IVR):キー操作で自動的に担当者へ接続する
 - 発信者番号表示:発信者の番号を表示し、効率的な対応を実現
 - 留守番機能:不在時の自動応答とメッセージを録音する
 
クラウド電話と固定電話の違い
クラウド電話と従来の固定電話(レガシーPBX)は、コストや機能、運用面に大きな違いがあります。どちらもビジネスに電話機能を提供しますが、その仕組みと特性は大きく異なります。
以下の表で、主な違いを比較してみましょう。
項目  | クラウド電話(クラウドPBX)  | 固定電話(レガシーPBX)  | 
|---|---|---|
通信の仕組み  | インターネット回線を利用  | 従来の電話回線を利用  | 
初期コスト  | 0円〜数万円程度と安価。PBX本体の購入や工事が不要  | 数十万円〜数百万円と高額。PBX本体の購入や配線工事が必要  | 
利用料  | 月額数千円から利用でき、通話料も比較的安価  | 通話料が高く、特に長距離・国際通話はコストがかさむ  | 
機能  | 通話録音、IVR、CRM連携など豊富な機能を標準またはオプションで提供  | 転送、内線、保留など基本的な機能が中心  | 
柔軟性  | インターネット環境があればオフィス内外どこでも利用でき、リモートワークに対応  | 固定された場所でのみ利用可能  | 
拡張性  | Web上の管理画面からID数の増減や設定変更が容易  | 増設には機器の追加や工事が必要で、時間とコストがかかる  | 
運用・保守  | ベンダーが実施するため、専門知識を持つ担当者が不要  | 自社での運用保守、または専門業者との保守契約が必要  | 
このように、クラウド電話はコストを抑えつつ、場所を選ばない柔軟な電話環境をスピーディーに構築できる点が大きな強みです。一方、固定電話は導入コストが高いものの、自社でシステムを管理できるという特徴があります。
クラウド電話を導入するメリット・デメリット
クラウド電話の導入には多くのメリットがありますが、事前に理解しておくべきデメリットも存在します。ここでは、導入によって得られる利点と注意点を詳しく解説します。
クラウド電話を導入するメリット
場所を選ばない柔軟な働き方を実現
クラウド電話はインターネット環境があれば、場所を問わずに会社の代表番号で発着信が可能です。在宅勤務や外出先からでも個人のスマートフォンで対応できるため、電話の取り次ぎ業務の負担が大幅に軽減されます。
導入・運用コストの削減
物理的な交換機や配線工事が不要なため、従来のビジネスフォンに比べて初期費用を大幅に削減できます。また、電話番号の追加や設定変更もブラウザ上で簡単に行えるため、管理の手間やコストも抑えられます。オフィスの移転やレイアウト変更にも柔軟に対応可能です。
BCP(事業継続計画)対策に有効
クラウド電話は、物理的な機器を社内に置かないため、地震や水害といった自然災害時にも電話システムが破損するリスクを低減できます。インターネット環境が復旧すれば速やかに電話業務を再開できるため、BCP対策としても非常に有効です。
スマートフォンでの活用方法
クラウド電話の大きな特長の一つが、スマートフォンを内線電話機として活用できる点です。専用のアプリを個人のスマートフォンにインストールするだけで、場所を問わずに 会社の代表番号で発着信が可能になります。
これにより、以下のようなメリットが生まれます。
- 外出先や在宅勤務での電話対応: オフィスにいるのと同じ感覚で、顧客や取引先からの電話に対応できます。これにより、電話の取り次ぎ業務が大幅に削減されます。
 - 内線通話の無料化: 営業所や支店、在宅勤務の社員間など、離れた拠点同士の通話も内線扱いとなり、通話コストを削減できます。
 - 業務用携帯電話の削減: 社員個人のスマートフォンを利用するBYOD(Bring Your Own Device)が可能となり、会社で業務用端末を用意・管理するコストと手間を削減できます。
 - BCP対策: 災害などでオフィスに出社できない状況でも、社員のスマートフォンで事業用の電話を継続できるため、事業継続計画(BCP)対策としても有効です。
 
クラウド電話のデメリットや注意点
メリットの多いクラウド電話ですが、導入前にいくつか注意すべき点があります。
通信環境により通話品質が低下する恐れがある
インターネット回線を利用するため、通信環境が不安定な場合は通話品質が低下する可能性があります。安定した通信環境を確保するか、通話品質保証のあるサービスを選ぶことが重要です。
セキュリティ対策が不可欠
クラウド上にデータを保存するため、セキュリティリスクへの対策が欠かせません。通信の暗号化や二段階認証といった機能を備えた、信頼性の高いベンダーを選ぶようにしましょう。多くの場合、ベンダー側で厳格なセキュリティ 対策が施されているため、事前にセキュリティポリシーを確認することをおすすめします。
クラウド電話とIP-PBXの違い
クラウド電話とよく比較されるものにIP-PBXがあります。どちらもインターネットを利用する点は同じですが、仕組みやコスト、拡張性に違いがあります。しかし、両者は通話を管理する仕組みが異なり、IP-PBXでは一般的に物理的な機器の設置が必要です。クラウド電話とIP-PBXの主な違いを以下の表にまとめました。
クラウド電話とIP-PBXの違い
クラウド電話  | IP-PBX  | |
|---|---|---|
電話端末数  | 数台〜数千台以上  | 50台以上~  | 
オフィスの拠点数  | 複数拠点  | 複数拠点  | 
複数の外線電話の着信や発信の制御  | 〇  | 〇  | 
社内での内線電話  | 〇  | 〇  | 
パーク保留や転送  | 〇  | 〇  | 
録音・留守電  | 〇  | 〇  | 
拠点間やスマホとの内線電話  | 〇  | 〇  | 
パソコンとの連携、会話録音  | 〇  | 〇  | 
通話品質・安定性・セキュリティ  | 〇  | 〇  | 
インターネットの品質に依存する  | インターネットの品質に依存する  | |
端末数や拠点の追加の拡張性  | ◎  | 〇  | 
申し込みをすれば即拡張できる  | 可能だが機器追加などが必要な場合もある  | |
初期費用  | ◎  | ×  | 
月額サービス利用料のみなど安価で開始できる  | 機器購入費用や工事費用などが高額になりがち  | |
運用費用  | 〇  | 〇  | 
台数によっては、月額利用料が高額となる場合がある。長期間利用する場合、IP-PBXのほうがトータルで安価になるケースもある。  | 機器の保守費や電気費用のみで運用できる  | 
クラウド電話は、拡張性の高さと導入コストの安さが特徴で、迅速な拠点展開が可能です。
一方で、月々の利用量に対して課金されるケースが多く、台数によっては運用コストが高くなるケースもあります。
IP-PBXは、通話品質やセキュリティ面での安定性に優れており、長期的な運用コストが低いという利点がありますが、初期費用が高額で、拡張性に制約があります。
注意点としては、どちらもインターネット回線の品質に依存するため、安定した通信を確保するための対策が必要です。
クラウド電話で解決できる課題
クラウド電話の導入により、以下のような従来型のビジネスフォンの課題を解決できる可能性があります。
コスト削減
初期投資や設備メンテナンスのコストを大幅に削減できます。月額利用料のみで運用でき、柔軟な料金プランが用意されています。
リモートワーク対応
どこからでも内線通話が可能なため、在宅勤務や外出先からの業務もスムーズに進められます。業務効率が向上し、従業員の働き方改革が進むでしょう。
拠点展開の迅速化
新しい拠点の開設時にも、クラウド電話であれば短期間で通信環境を整備できます。追加の設備投資も最小限で済むため、ビジネスの拡大に対応しやすくなるはずです。
内線管理の煩雑さを解消
従来型のPBXでは、内線設定の管理が複雑でしたが、クラウド電話ではシステム内で一括管理が可能です。管理負担が軽減され、ほかの業務にリソースを集中できます。
企業のDX推進におけるクラウド電話の役割
クラウド電話は、企業のDX推進を支える重要な要素です。通信インフラのデジタル化により、業務フローが効率化され、迅速な意思決定が可能となります。
また、ほかのITシステムやIoTとの連携も容易なため、さらなる業務の自動化や最適化が期待できます。
クラウド電話を選ぶポイント
クラウド電話を導入する際は、機能や対応力、コスト面など、さまざまな観点から選定することが大切です。 ここでは、特に重要なポイントを紹介します。
機能の充実度
内線通話、転送機能、IVR(自動応答)、発信者番号表示、留守番機能など、基本的な機能が網羅されているかを確認しましょう。
対応可能な業務範囲
業務内容に適した機能が備わっていることも重要な選定ポイントです。リモートワークや多拠点間での通話は可能か、スマートフォンやパソコンなど複数のデバイスと連携できるかを確認しましょう。
セキュリティ対応
クラウド電話はセキュリティ面で懸念が残るため、通信データの暗号化や二段階認証の有無といったセキュリティ対策の充実度も確認する必要があります。特に、企業データを扱う場合、ISO27001(ISMS認証)などのセキュリティ認証を取得しているサービスが安心です。
費用対効果
月額利用料だけではなく、通話料金やオプション料金などの運用コストも確認し、長期的な費用対効果を検討しましょう。必要に応じた拡張性を持ちつつ、無駄なコストがかからないように、コストパフォーマンスが優れたサービスを選ぶことが大切です。
拡張性
クラウド電話は、企業の成長や業務の変化、事業の拡大などに応じて、端末数や拠点数を簡単に追加・削除できる点も大きなメリットですが、対応可能な台数や拠点数、使用可能な国はサービスによって異なります。想定している拡張性を担保しているサービスかもしっかりチェックしましょう。
おすすめクラウド電話の料金とサービスの比較
クラウド電話サービスは多数あり、それぞれ料金体系や機能が異なります。自社の規模や目的に合ったサービスを選ぶためには、複数のサービスを比較検討することが重要です。
料金体系の比較
クラウド電話の料金は、主に以下の要素で構成されています。
- 初期費用: アカウント開設や設定にかかる費用。無料のサービスも多くあります。
 - 月額基本料金: システムを利用するための固定費用。契約するID数やチャネル数に応じて変動します。
 - 通話料: 外線発信時にかかる費用。料金はサービスによって異なります。
 
多くのサービスでは、導入前に機能や通話品質を確認できる無料トライアル期間が設けられています。契約前にトライアルを活用し、自社の業務環境との相性を確認することをおすすめします。
おすすめサービスの機能比較
ここでは、代表的なクラウド電話サービスをいくつか紹介します。
サービス名  | 初期費用  | 月額料金(例)  | 主な機能  | 特徴  | 
|---|---|---|---|---|
MOT/TEL  | 29,800円〜  | 4,980円(20ID)〜  | スマホ内線、CTI、FAX、チャット  | 官公庁や上場企業への導入実績が豊富で信頼性が高い。  | 
OFFICE PHONE  | 0円  | 3,400円〜 + 98円/ID  | 通話録音、IVR、名刺管理、ネットFAX  | 初期費用無料で始めやすく、個人事業主にも人気。  | 
03plus  | 5,000円  | 980円/ID〜  | 10分かけ放題、Web電話帳、FAX受信  | 固定電話番号を安価に取得でき、発信が多い場合に強み。  | 
ナイセンクラウド  | 10,000円  | 2,000円〜  | IVR、電話会議、モニタリング  | 03や06番号、フリーダイヤルも取得可能。最短1日で導入できる。  | 
上記は一例です。自社の利用人数、必要な機能、将来的な拡張性などを考慮し、最適なサービスを選びましょう。
クラウド電話に関するよくある質問
クラウド電話の導入を検討する際によくある質問とその回答をまとめました。
個人事業主でも利用できますか?
はい、多くのクラウド電話サービスは個人事業主でも利用可能です。専用の機器が不要で低コストから始められるため、個人事業主やスタートアップ企業にとって大きなメリットがあります。
個人のスマートフォンで事業用の固定電話番号が使えるため、プライベートとビジネスを明確に分けられ、顧客からの信頼性向上にも繋がります。IVR(自動音声応答)機能を使えば、一人でも効率的に電話対応ができます。
IP電話との違いは何ですか?
IP電話は、インターネット回線を利用して通話する技術そのものを指します。一方、クラウド電話(クラウドPBX)は、IP電話の技術を基盤に、内線通話、転送、保留といったビジネス向けの電話交換機能(PBX)をクラウド上で提供するサービスです。
一般的なIP電話アプリだけでは、複数の電話機で代表番号の着信を受けたり、内線を回したりすることはできません。ビジネス利用にはクラウド電話が不可欠です。
既存の電話番号はそのまま使えますか?
現在利用している固定電話番号をそのままクラウド電話で使えるかどうかは、サービスや番号の種類によります。
「番号ポータビリティ」に対応しているサービスであれば、多くの場合で既存の番号を引き継ぐことが可能です。ただし、手続きに手数料や時間がかかる場合があります。導入前に、検討しているサービスが番号ポータビリティに対応しているか必ず確認しましょう。
クラウド電話は、コスト削減や柔軟な運用が可能な新しい電話システムです。迅速に導入でき、リモートワークや多拠点運営にも適しています。従来のPBXとの違いや選定のポイントを踏まえ、自社に最適なクラウド電話の導入を検討してみましょう。
2025年11月1日に、料金プランの月額料金およびサービス内容を改定させていただきました。
今後もお客さまに安心してご利用いただけるサービスを提供してまいります。
料金プランの改定内容については、以下のURLからご確認くださいませ。
