既存の電話機と固定電話番号は クラウドPBXでもそのまま使える?

近年、ビジネスフォンの導入手段として、クラウドPBXが選ばれるケースが増えています。 クラウドPBXは、さまざまな最新機能が利用できるうえ、拡張性や柔軟性が高いことから、急速に浸透してきています。一方で、既存の電話機や固定電話番号をそのまま使えるのか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、クラウドPBXで利用できる電話機の種類を整理したうえで、固定電話番号の利用可否を解説します。
1. クラウドPBXに利用できる電話機の種類
結論、クラウドPBXはインターネット経由で利用するため、電話機の種類に依存しません。
また、リモートワーク(自宅)ではスマートフォンやPC、オフィスではIP電話機のように、場所やニーズによって使い分けができる点も強みです。
クラウドPBXに利用できる電話機の種類は以下のとおりです。
IP電話機 | スマートフォン・PC | アナログ電話機 (固定電話) | |
---|---|---|---|
接続方法 | LANケーブル(有線接続) | Wi-Fiまたはモバイルデータ通信 | ATAアダプタを介してクラウドPBXに接続 |
通話品質 | 高い (ただし、インターネット環境に依存する) | 高い (ただし、インターネット環境に依存する) | 高品質/安定的 |
導入コスト | 数万円〜 | 数万円〜 | 数万円〜 |
操作性 | 従来の電話機と近い操作性 | スマホやPC操作に依存、慣れるまでやや難しい場合も | 従来どおり |
設置場所 | 固定(デスク設置型が多い) | どこでも利用可能 | 固定(デスク設置型が多い) |
導入コストについては、既存の端末を利用する場合は費用は発生しません。
IP電話機
IP電話機とは、 VoIP(Voice over IP)技術を利用し、インターネット回線を利用して音声通話を行う電話機です。 LANケーブルやWi-Fiでネットワークに接続し、SIPプロトコルなどを使用して通信を行います。
- メリット: 高音質で安定した通話が可能。転送や内線、保留といったビジネス向けの機能が多く、操作性に優れ、管理の一貫性も取りやすいです。
- デメリット: 初期費用が高いほか、設置が固定的となるため、移動が多い業務には不向きです。
スマートフォン/PC
スマートフォンは携帯電話の一種で、インターネットやアプリケーションの利用が可能な多機能デバイスです。タッチスクリーンを搭載し、電話やメッセージのほかにもカメラ、GPS、電子決済など幅広い用途に対応しており、ビジネスの場で活躍します。
PC(パソコン)はオフィスで利用する一般的なタイプでクラウドPBXを利用できます
- メリット: 初期コストを抑えて簡単に導入可能です。リモートワークや出張先など、場所を問わず利用でき、柔軟な働き方に適しています。
- デメリット: ネット環境や端末の影響を受けやすいため、品質の安定性に欠けることがあります。また、社員が個人端末を利用する場合、端末やセキュリティの管理に手間がかかります。
アナログ電話機(ATAアダプタ利用)
従来のアナログ電話機を、IP電話として利用できるようにするデバイスです。IPネットワークに接続することで、VoIP技術を用いた通話が可能となります。これにより、既存のアナログ電話機を活用しながら、IP電話の低コスト通話や柔軟な機能を利用できます。
- メリット: 既存の電話機を流用できるため、初期投資を抑えつつクラウドPBXを導入できます。従来の使い慣れた電話機を使用できます。
- デメリット: 通話品質はIP電話機に劣る場合があります。また、転送や内線などの機能が制限されることが多く、ビジネス向けの機能が少ないため、業務効率化にはやや不向きです。
2.クラウドPBXと固定電話(レガシーPBX)の違いとは?
以下の表に、クラウドPBXと固定電話(レガシーPBX)の違いを表に整理しています。
クラウドPBX | 固定電話(レガシーPBX) | |
---|---|---|
通信の仕組み | インターネット回線を 利用 | 従来の電話回線を利用 |
柔軟性 | インターネット接続があれば、オフィス内外で自由に通話できる。リモートワークや在宅勤務にも対応 | 固定された場所でのみ使用可能。移動先や在宅勤務などでは使えない |
拡張性 | ビジネスの規模に合わせて簡単に拡張が可能 | 増設するにはPBXサーバーの増強や物理的な電話回線の工事が必要で、設備投資も高くなる |
初期コスト | 0円〜数万円程度 (0円の サービスも多い) | 数十万円〜数百万円程度 |
利用料 | 月額費用数千円程度〜で利用でき、通話料金が比較的安価 | 通話料金が高く、特に長距離通話や国際通話ではコストがかさむ |
機能 | 転送、内線通話、保留、ボイスメール、カスタマイズ可能な自動応答、通話録音、分析機能など、豊富な機能を装備 | 転送や内線通話、保留、ボイスメールなど、標準的なビジネスフォンの機能を搭載 |
運用・保守 | ベンダーにて実施 | 自社で物理的なPBXサーバーや回線の運用保守が必要 |
3. クラウドPBXへ移行するメリット・デメリット
メリット
クラウドPBXに移行することで得られる主なメリットは以下の5つです。
1.低コストで導入・運用できる
従来のPBXで必要だった高価な交換機の設置や配線工事が不要なため、初期費用を抑えられます。安価な月額制プランが多いため運用コストも安く、メンテナンスは提供元に任せられます。
2.場所にとらわれない働き方を後押しできる
インターネット環境さえあれば、スマートフォンやPCを使って、どこからでも会社の電話番号で発着信できます。オフィスに出社しなくても電話業務が可能となり、テレワークや在宅勤務といった多様な働き方に対応できます。
3.拡張性に富んでいる
社員の増減に伴う電話回線の追加や設定変更は、Web上の管理画面から簡単に行えます。事業規模の拡大や縮小に合わせて、迅速かつ柔軟にシステムを調整することが可能です。
4.BCP対策を推進できる
インターネット環境があればどこからでも業務を行えるため、災害時や緊急時に備えるBCP対策としても有効です。ベンダーの多くはシステムを複数の拠点で分散管理しているため、不測の事態が発生してもビジネスを継続することが可能です。
5.生産性の向上につながる
サービスによっては自動音声応答(IVR)や通話録音、CRM(顧客管理システム)との連携など、ビジネスの効率化に役立つ機能が利用できます。
デメリット
一方で、クラウドPBXにはいくつかの注意すべきデメリットもあります。
1.通話品質がインターネット環境に左右される
インターネット回線を使うため、通信が不安定な環境ではノイズや遅延が発生する場合があります。対策として、高速で安定したインターネット環境を整備する、あるいは専用の回線を契約することが有効です。
2.緊急通報など一部発信できない番号がある
サービスや番号によっては110番や119番などの緊急通報に発信できない場合があります。万が一の事態に備え、代替手段をあらかじめ準備しておくことが重要です。
3.既存の電話番号を引き継げない場合がある
サービスによっては、現在利用中の電話番号をそのまま引き継げないことがあります。導入前に番号ポータビリティに対応しているかを確認し、対応していない場合は転送サービスなどの活用を検討しましょう。
4.セキュリティリスクへの対策が必要
インターネット回線を利用する以上、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクはゼロではありません。多くのサービスでは通信の暗号化などの対策が講じられていますが、信頼できる実績豊富なベンダーを選び、従業員のセキュリティ意識を高めることも大切です。
クラウドPBXのデメリットについて、より詳しい対策や失敗例を知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【失敗例あり】クラウド電話のデメリットは?通話品質やセキュリティに関する疑問を解説
4.クラウドPBXで固定電話の番号をそのまま使う方法
クラウドPBXで固定電話の番号をそのまま使う方法には、以下の3種類があります。
番号ポータビリティを利用する
番号ポータビリティとは、現在の固定電話番号をクラウドPBXのサービスプロバイダに移行する方法です。 既存の固定番号をそのまま利用できるため、顧客や取引先に新しい番号を知らせる必要がありません。
ただし、番号を移行するには手続きが必要で、契約中の電話会社によっては手数料が発生します。また、すべての固定電話番号が番号ポータビリティに対応しているわけではないため、事前に確認が必要です。クラウドPBXのベンダーが、番号を引き継ぎ可能であるかどうかも確認しましょう。
ゲートウェイ機器を設置する
番号ポータビリティを利用できない場合は、現在利用している電話回線にゲートウェイ機器を設置することで利用できる場合があります。
固定電話の転送設定を利用する
既存の固定電話番号に転送設定を行い、クラウドPBX番号に着信を転送する方法です。オフィスにかかってきた電話がクラウドPBXに転送され、PCやスマートフォンなどで受けられるため、すぐに導入したい場合や、段階的な移行を検討している場合に適しています。
ただし、転送先への通話費用が発生するため、通話量が多いとコストが増大するおそれがあります。
ハイブリッドPBXを利用する(クラウドPBXとレガシーPBXの併用)
クラウドPBXと従来のオンプレミス型PBXを併用することで、固定電話番号を残しつつクラウドの利便性を利用できます。既存の電話設備を活用しながら、クラウドへの段階的な移行を進めたい場合に有効(最終的にはすべてクラウドに移行) な方法です。
多くの場合、新たなハードウェアの設置が必要ですが、レガシーPBXとクラウドPBXが連携することで、業務を中断せずに移行を進められます。
ただし、オンプレミス型の場合、連携が容易にできないケースがありますので、一気にクラウドPBXに切り替えてしまった方が、労力が少なくなる場合も多いでしょう。
クラウドPBXはさまざまな電話機に対応しています。また、サービスにもよりますが、多くの場合固定電話番号をそのまま引き継いで利用できます。
クラウドPBXを導入すれば、オフィス外でも固定番号を利用でき、リモートワークや外出先での業務がより効率化されます。積極的に利用して業務改善に活かしてみてください。
5.クラウドPBXの選び方
クラウドPBXを選ぶ際は、自社の課題を解決できるサービスか見極めることが重要です。特に「セキュリティと信頼性」「機能とカスタマイズ性」「サポート体制」の3点は必ず確認しましょう。
1.セキュリティと信頼性
ISMS認証の取得状況や通信の暗号化、IPアドレス制限といった不正アクセス対策が講じられているかを確認しましょう。安定した稼働実績も判断材料になります。
2.機能とカスタマイズ性
IVR(自動音声応答)や通話録音、CRM連携など、自社の業務に必要な機能が揃っているかを確認します。また、従業員の増減に合わせてID数を柔軟に変更できるかといった事業の成長に対応できる拡張性も重要です。
3.サポート体制
導入後のトラブルに備え、サポート体制も確認が不可欠です。電話やメールなど問い合わせ方法の多様さや、対応時間、初期設定の代行などサポートの範囲を事前にチェックしておくと、安心して運用を開始できます。
利用シーン別のより詳しい選び方や主要なサービスの評判については、以下の記事で解説しています。こちらもあわせてご覧ください。
関連記事:クラウドPBXの評判は?|コスト削減・柔軟性で選ばれる理由を解説
クラウドPBXの導入を検討中なら「アイブリー」がおすすめ
クラウドPBXは多様な働き方を実現するソリューションの一つです。しかし、企業の課題によっては、クラウドPBXが必ずしも最適解とは限りません。
もし自社の課題が「内線の連携」や「複数拠点管理」ではなく、「電話対応の効率化」という点にあるのなら、クラウドPBXよりも手軽に導入できる「クラウド型IVRサービス」が解決策になるでしょう。
例えば、電話自動応答サービス「アイブリー」では、電話の着信時に自動音声ガイダンスが応答し、用件に応じて音声案内や転送を自動的に行います。日本語、英語、中国語、韓国語に対応しているため、海外拠点での利用にもおすすめです。

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