クラウドPBXとは?仕組みとメリット・デメリットを徹底解説

クラウドPBXとは、インターネット上からPBXを利用できるサービスを言います。PBXとはPrivate Branch eXchangeの略称で、直訳すると「私的支部交換」となりますが、日本語では「電話交換機」と呼ばれることが多いようです。
通常、会社にかかってきた電話を部署内で内線に回したり、離れた地域にある部署と部署とを内線でつないだりするシステム・機械を言います。近年はインターネット技術が発達し、PBXの専用機を設置しなくても、インターネットを通じて同様のサービスを利用できるようになりました。インターネットを利用した電話交換サービスをクラウドPBXと呼んでいます。
PBX・クラウドPBXとは
PBXとは電話交換機のことを指し、企業でよく使われる電話転送や内線を可能にするシステムです。PBXは社内にサーバー機器を設置するのに対し、クラウドPBXでは設備がいりません。インターネット回線を通じてPBX機能を使うことができます。
そのためクラウドPBXはリモートワークにも対応でき、コロナ禍を経て急速に浸透しています。

クラウドPBXの仕組み
構成図で見るクラウドPBXの仕組み
クラウドPBXは、物理的な交換機をオフィスに置く代わりに、ベンダーが管理するクラウド上のサーバーを利用します。この構成は主に「クラウドサーバー」「インターネット」「ユーザー端末」の3つの要素で成り立っています。
ユーザーが使うPCやスマートフォン、IP電話機などの端末は、インターネットを通じてクラウド上のPBXサーバーに接続されます。これにより、場所を問わずに内線・外線通話が可能です。
オフィス内に高価なPBX装置や複雑な電話配線が不要になるため、導入やメンテナンスのコストを大幅に削減し、オフィスの移転やレイアウト変更にも柔軟に対応できるのが大きな特徴です。
PBXとクラウドPBXの違い
クラウドPBXが生まれる前のPBXでは、会社へかかってきた電話は、専用のPBX(電話交換機)を経由して、それぞれの電話機へ回される仕組みになっていました。
一方クラウドPBXでは、専用のPBXの代わりにクラウド上にPBXを置き、インターネット回線を通じてサービスを利用できるようにしたイメージです。
従来のPBX運用
従来のような専用のPBXの設置・導入・維持には多大なコストがかかるため、中小企業・個人企業にはハードルが高いものでした。
具体的にはPBX機械本体の価格が数万~数百万円、月額の基本料金が数千~数万円、更に別途、専門業者に依頼してPBXのメンテナンスを行わなければならず、定期的なメンテナンス費用がかかるほか、PBX機械本体の経年劣化があり、数年ごとに買い替えが必要です。
進化したクラウドPBX運用
クラウドPBXは、専用のPBX(電話交換機)本体が不要です。クラウドPBXの提供者がメンテナンスをするので、買い替えや保守点検を手配する手間・コストもいりません。
また、スマートフォンや携帯電話など、外出先からでも同じPBXを利用できるので、世界中どこにいても外線・内線通話ができるなど、クラウドPBXならではのメリットもあります。
クラウドPBXを利用する際の費用も低コスト化が進み、登録料などの初期費用が数万円、月額基本使用料が数千~数万円程度です。
IP-PBXとは?
IP-PBXはクラウドPBXが生まれる前にできたサービスで、PBXのサービスも利用でき、インターネット接続もできるサービスです。ただしPBXの専用機を導入する必要があり、メンテナンスも必要です。
インターネット接続をしていることで内線コストがかからず、外部とのやり取りの記録を保管したり、共有しやすいという利 点があります。
クラウドPBXとビジネスフォンの違い
クラウドPBXと従来のビジネスフォンは、どちらも企業向けの電話機能を提供しますが、その仕組みや運用形態には大きな違いがあります。最も大きな違いは、PBX(電話交換機)を物理的にオフィスへ設置するか、クラウド上で利用するかという点です。
以下の表で、主な違いを比較してみましょう。
項目 | クラウドPBX | 従来のビジネスフォン |
|---|---|---|
PBX装置 | 不要(クラウド上で提供) | 必要(オフィス内に設置) |
初期費用 | 安価(無料の場合もある) | 高額(機器購入費、工事費) |
導入期間 | 最短即日〜数日 | 数週間〜数ヶ月 |
利用端末 | PC、スマートフォン、IP電話機 | 専用の多機能電話機 |
利用場所 | インターネット環境があればどこでも可 | 原則としてオフィス内のみ |
拡張性 | 容易(Web設定でユーザー増減可能) | 困難(追加工事や機器購入が必要) |
メンテナンス | 不要(ベンダーが実施) | 必要(自社または専門業者) |
クラウドPBXとIP電話の違い
「クラウドPBX」と「IP電話」はよく混同されがちですが、これらは指し示すものが異なります。
IP電話は、インターネット回線を使って音声通話を実現する「技術」そのものを指します。一方、クラウドPBXは、そのIP電話の技術を利用して、内線通話や転送、自動音声応答といったビジネス向けの便利な機能を提供する「システム」や「サービス」のことです。
郵便に例えるなら、IP電話が「手紙や住所」といった通信の手段で、PBXはそれらを仕分けして届ける「郵便局」の役割を果たします。クラウドPBXは、その高機能な郵便局を自社で持つことなく、インターネット経由で利用できるサービスと考えると分かりやすいでしょう。
PBX・クラウドPBXのメリット
①移転・模様替えしやすい
従来のPBXでは、事務所を移転する際などはPBXの移転を専門業者に依頼する必要がありました。しかしクラウドPBXではその必要はなく、電話番号の追加・削除・変更なども自分で自由に設定できます。
②固定電話機が不要
クラウドPBXはインターネットを経由しているので、電話機も必要ありません。電話アプリやブラウザを使って、PCやスマートフォンから電話の送受信ができます。
③ほかのツールと連携できる
クラウドPBXの中には、自動応答サ ービスなどの付加機能も同時に提供していることがあります。業種や形態に合わせたサービスと連携させることで、さらなる効率化を図ることができるでしょう。
④リモートワークにも活用できる
クラウドPBXでは、従来のようにPBX機を導入した建物の中にいる必要がありません。インターネット回線を通じてどこからでもサービスを利用できるので、自宅や外出先からでも会社内と情報を共有でき、リモートワークなどの在宅勤務に活用できます。
PBX・クラウドPBXのメリット・デメリットについて、詳しくはこちらの記事にまとめています。
クラウドPBXのデメリット
①電話番号が変わってしまう可能性がある
クラウドPBXによっては電話番号が変わってしまう可能性があります。電話番号を変更したくない場合は、それに対応した業者を選ぶか、電話を転送するなどの手続きが必要になります。
②通話品質が安定しないことがある
インターネット回線を通じてサービスを利用している以上、通信環境がよくない場合、通話品質が悪くなってしまうことがあります。まずは業者を選ぶときによく吟味したり、お試し期間を上手に利用するのがよいでし ょう。
③緊急通報ができない
クラウドPBXは、IP電話と呼ばれており110番・119番などの緊急通報のほか、0570で始まるナビダイヤルなど、発信できない番号がいくつかあります。緊急通報可能な電話と併用するなどの対策を講じるとよいでしょう。
クラウドPBX導入の失敗例と注意点
クラウドPBXは多くのメリットがありますが、計画なく導入すると失敗につながる可能性があります。ここでは、よくある失敗例と、それを避けるための注意点を解説します。
コストに関する失敗例
初期費用が無料のプランでも、必要なオプションを追加していくと月額料金が想定より高額になることがあります。また、既存ビジネスフォンのリース契約が残っている場合、解約できずにクラウドPBXの料金と二重払いになってしまうケースも少なくありません。
通話品質に関する失敗例
クラウドPBXの通話品質は、インターネット回線の速度や安定性に大きく依存します。社内のWi-Fi環境が不安定だったり、回線が混雑していたりすると、音声が途切れたりノイズが入ったりする原因になります。
準備・計画不足による失敗例
導入前に確認を怠ったため、長年利用してきた会社の代表番号が引き継げず、顧客への周知に多大な手間とコストが発生するケースがあります。また、従業員への使い方のアナウンスが不十分で、操作に手間取り、かえって業務効率が低下することもあります。
クラウドPBXの料金
クラウドPBXの料金は、初期導入費用(契約料など)、月額利用料、付加機能利用料などで構成されています。また、利用する人数が多いほど料金が加算される仕組みになっています。
業者によっては最低利用期間を設けている場合もあります。
クラウドPBXの料金について詳しく知りたい方は「クラウドPBXサービス比較!料金・価格など、選ぶポイントを紹介します」をご覧ください!
費用を抑えるポイント
クラウドPBXのコストメリットを最大限に活かすには、いくつかのポイントがあります。まず、自社の業務に本当に必要な機能を洗い出し、過剰な機能を持つ高額なプランを避けることが重要です。
また、月額料金だけでなく、通話料やオプション料金を含めた年間のトータルコストで複数のサービスを比較検討しましょう。多くのベンダーが無料トライアル期間を設けているので、契約前に操作性や通話品質を実際に試して、自社に合うかを見極めることも、長期的なコスト削減につながります。
クラウドPBXを選ぶときのポイント
クラウドPBXを選ぶときは、料金とサービス内容のバランスを考慮するのがポイントとなります。業務の拡 大・縮小を考え、柔軟に変更ができる業者を選ぶのも良いでしょう。
顧客情報を共有する場合などは、流出などの心配がないようセキュリティ面もチェックしましょう。
拡張性と柔軟性で選ぶ
PBXは比較的大規模なコールセンターや、大人数のスタッフが利用するのに適したサービスです。クラウドPBXは少人数~中規模に適しており、柔軟なプラン変更がしやすいサービスです。将来的に規模を拡大する予定があるならクラウドPBXが良いでしょう。
PBXシステムの中には、機能の追加やカスタマイズのたびに打ち合わせが必要なものも。初めてPBXを導入するならカスタマイズ性が高いものを選ぶのがおすすめです。
セキュリティにあわせて選ぶ
PBXは自社内での管理が重要となりますが、クラウドPBXであればセキュリティ対策がされているか必ず確認しましょう。外部からの攻撃、情報漏えい対策と合わせて、障害時・災害時の対策もチェックしてください。
コストにあわせて選ぶ
PBXは設備費用や導入時に数十万~数百万円のコストがかかるほか、システムのアップデートやソフトウェアの更新・保守などメンテナンス費用も考えなければなりません。
クラウドPBXは月額数千円~で利用でき、初期費用もかからないこともあります。しかし長期的に使う場合や、オプション利用料が追加されるとかえって割高になってしまうことも。どちらのつかい方がふさわしいか、よく考えて選びましょう。
ユーザビリティのしやすさで選ぶ
PBXを管理するにはサーバー機器の基礎知識も求められますが、クラウドPBXであれば、最低限、カスタマイズする部分だけ操作できればOKです。
実際にデモ画面に触れてみて、操作しやすい、使いこなしやすいツールを選ぶのが良いでしょう。
音質と通信品質
PBX・クラウドPBXを選ぶときは音声や通信の質に問題がないかどうか、よく確認しましょう。遅延や途切れが発生していないかどうかもチェックしてください。
その際は一度だけではなく、一定の期間試すことで、日によって品質に差が出ないか確認することをおすすめします。
クラウドPBX導入の流れ
クラウドPBXの導入は、従来のビジネスフォンに比べて迅速かつ簡単に行えます。一般的な導入ステップは以下の通りです。
1. 要件の整理: まずは、必要な電話機の台数や、通話録音・自動応答(IVR)など、自社に必要な機能を洗い出します。
2. サービス選定・比較: 各社のWebサイトで料金プランや機能を比較します。無料トライアルがあれば積極的に活用し、実際の使用感を確認しましょう。
3. 契約: 利用するサービスが決まったら、オンラインで契約手続きを進めます。
4. 設定: Webの管理画面から、内線番号の割り当てや転送設定など、自社の運用に合わせたカスタマイズを行います。
5. 利用開始: スマートフォンやPCにアプリをインストールすれば、すぐに利用を開始できます。
PBX・クラウドPBXの導入目的・利用シーン
病院・クリニック
PBXシステムは顧客管理機能と連携させやすいので、病院・クリニックでは電話対応の際に患者のカルテを呼び出して、ひとりひとりに最適な対応することができます。
クラウドPBXであればオンライン診療にも対応しやすく、患者の通院負担を減らすのに役立つでしょう。
ホテル業
ホテルや宿泊施設内にPBXシステムを導入すると、各客室とフロントや調理場など、各部署と連携が取りやすくなります。スタッフ同士でコミュニケーションを取ったり、顧客からの連絡を受け、サービス改善に生かすことができるでしょう。
小売業
小売業では、各店舗にPBXシステムを配置することで店舗間のコミュニケーションを活発にするような使い方が多く見られます。
カスタマーサポートセンターを構築するのにも役立ち、センターと各店舗が密な連携を取ることができます。
教育業
教員の長時間労働が問題視されていますが、クラウドPBXを導入すれば改善できるかもしれません。自宅にいながら学校・教員・家庭からの電話に対応できるようになり、残業を減らすのに役立ちます。
教員同士のコミュニケーションも取りやすくなり、よりきめ細かい対応ができるでしょう。
不動産業
不動産業では物件の内覧希望や、住んでいる物件のトラブルなどの電話が多くかかってきます。これら多種多様な業務をひとりの担当者がこなすことも多いようです。
クラウドPBXなら外出先・自宅でも電話に出られるため効率化につながり、社内同士でのコミュニケーションにも役立ちます。
ポイント別、おすすめPBX・クラウドPBXツール
拡張性と柔軟性で選ぶPBX・クラウドPBX
電話自動応答サービス「アイブリー」は、電話の一次対応を自動化できるIVRシステムを提供しています。
音声ガイダンスや分岐フローは自分で自由にカスタマイズでき、スタッフのアカウントを登録すれば通話料も節約できます。月額3,317円~という低コストで利用でき、柔軟性・拡張性ともに申し分ありません。
小規模企業向けのプランから、大規模コールセンター向けのプランまで幅広い形態に対応しており、拡張性・柔軟性の高いサービスになっています。コールセンター向けとあって、社員ひとりひとりのステータスを確認できる機能も搭載されています。
オフィスの電話環境から、コールセンター向けPBX環境、テレワーク環境など、用途に合わせて様々なシーンをカバーできるクラウドPBXサービスです。各企業に合わせて柔軟なカスタマイズができるほか、セキュリティ対策には定評があります。
コストで選ぶPBX・クラウドPBX
「スマホで持ち歩けるPBX」をテーマに、初期費用0円、月額基本料850円~と、コストパフォーマンスが優秀なサービスです。スタッフの増減に合わせて月額精算ができるので、繁忙期と閑散期があるような企業におすすめです。
03や06など、市外局番で始まる電話番号を使えるクラウドPBXサービスです。1人から契約できるなど、特に小規模事業者に徳化しており、初期費用0円、月額基本料980円~と、導入しやすい価格で利用できます。
少人数の店舗を多数展開しているなら、「アイブリー」がおすすめです。1店舗につき3,317円~と、導入しやすい価格にくわえて、電話自動応答サービス、顧客管理機能、ブラックリスト機能といった便利な機能も利用することができます。
これらの機能は月額利用料にふくまれており、追加料金はかかりません。
顧客管理機能で選ぶPBX・クラウドPBX
「アイブリー」の顧客管理機能を利用すると、電話がかかってきたときに番号から顧客情報を検索し、画面に表示します。過去のやり取りや注文履歴を見ながら対応でき、通話しながらメモを残すこともできます。
電話履歴などのデータはCSVファイル形式でダウンロードでき、データ分析などマーケティングにも活用出来ます。
スマホで使えるクラウドPBXサービスで、膨大な顧客情報を安全に保管することができます。セキュリティ対策が万全で、同社の事業者データベース・迷惑電話リストを利用し、迷惑電話を強力にブロックします。
NTTコミュニケーションズによるクラウドPBXサービスで、同社が提供する他のサービスと組み合わせることができる点が大きなポイントです。顧客管理機能のほかに商談管理、勤怠管理、リモートアクセスなど多彩な機能を取り揃えており、どんな企業にも最適にカスタマイズできます。
ユーザビリティに優れるPBX・クラウドPBX
「アイブリー」の管理画面は、一目で直観的に理解できるような分かりやすいデザインになっており、誰でも簡単に操作できます。もし困ったときはサポートチームが全力でお手伝いしますので、安心してご相談ください!
昔ながらの電話業務を意識したユーザビリティになっているクラウドPBXサービスです。ビジネス用の電話機がそのままスマホになったようなアプリデザインになっており、従来の電話業務に慣れたスタッフでもスムーズに移行できます。
日本人向けに自社開発されたクラウドPBXサービスで、ユーザーの声を取り入れながら常に使いやすさを追求しています。ビジネスフォンの販売から始まった15年以上の開発実績があり、業種を問わず支持されています。
PBX・クラウドPBXには、ほかにも色んなサービスがあります。ぜひこちらの記事もご参考にしてください!
PBX・クラウドPBXの活用事例
コロナ禍をきっかけに、クラウドPBXの利用は急速に浸透しました。固定電話から脱却し、スマホにアプリを入れるだけで使えるクラウドPBXサービスに切り替えた企業も多いです。
その結果、場所に縛られず電話業務ができ、コストダウンもできる、迷惑電話をシャットアウトできるなど、電話業務にかかるストレスが少なくなったと感じているようです。
緊急時やトラブル発生を考えると、電話業務を全てなくすのは難しいですが、PBXを導入することで自由な働き方につながるでしょう。
クラウドPBXに関するよくある質問
ここでは、クラウドPBXの導入を検討する際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q. 今使っている電話番号はそのまま使えますか?
A. 番号ポータビリティに対応しているサービスであれば、市外局番(03や06など)をそのまま引き継げる場合があります。ただし、提供エリアや番号の種類によっては引き継げないこともあるため、契約前に必ず確認が必要です。
Q. 通話の音質は問題ないですか?
A. 安定した高速インターネット回線があれば、固定電話と遜色ないクリアな音質で通話が可能です。ただし、ネットワーク環境に左右されるため、多くの人が同時に利用する時間帯などは品質が落ちる可能性もあります。無料トライアルで事前に確認することをおすすめします。
Q. 110番や119番にはかけられますか?
A. 多くのクラウドPBXサービスでは、発信場所を特定できないため、110番や119番といった緊急通報には発信できません。万が一に備え、携帯電話など別の通報手段を確保しておく必要があります。
