コールセンターのAI導入事例17選!効果的な導入方法、注意点も解説
人材不足によるサービスの品質低下やコスト削減の圧力など、現代のコールセンターはさまざまな課題を抱えています。
そんな厳しい現状を打破する一手として期待が高まっているのが、AIテクノロジーを用いたコールセンターシステムです。チャットボットやボイスチャット、声紋認証といったAIツールを活用することで、コールセンター業務を効率化して顧客満足度を向上させるとともに、コスト削減を図れます。
今回は、AIツールを導入したコールセンターの成功事例と、AIツールの導入手順、導入の注意点について詳しく解説します。人材不足や顧客満足度の低下、コスト削減といった課題を抱えている現場管理者やご担当者の方は、ぜひ本記事を参考に業務負担を軽減する方法をご検討ください。
- コールセンターでAI導入が加速する背景
- コールセンターでAIはどのように活用されている?
- チャットボットによる自動対応
- ボイスボット(AI自動音声応答)
- FAQシステムとAI検索システム
- 音声認識と議事録作成
- テキストマイニングとVOC分析
- 声紋認証など
- コールセンターのAI導入事例20選
- AIオペレータ導入で集荷依頼のストレスを軽減|ヤマト運輸
- AI事前診断でネット住宅ローンを最短1分で審査|みずほ銀行
- AI導入でオペレーター応答時間を短縮|東京ガス
- AIマニュアル検索でオペレーターの工数削減|小林製薬
- 生成AIでFAQ作成の工数を75%削減|NEC
- AIヘルプデスク導入でサポート業務の属人化防止|パナソニックホームズ
- 声紋認証AIでスムーズな本人確認|アフラック生命保険
- 声認識AIで通話の見える化が可能に|レオパレス21
- AIチャットボット導入でオペレーター数削減|スカパー・カスタマーリレーションズ
- 生成AI導入でオペレーターのサポートと育成に寄与|ベネッセホールディングス
- AIチャットボット|多言語生成系AIチャットボットで観光客をおもてなし|大阪観光局×JTB
- AIチャットボットで口座開設方法を自動案内|SMBC日興証券
- AIチャットボットでよくあるお問い合わせに自動対応|チューリッヒ生命保険
- AI音声自動応答でコールセンターの保険手続きをサポート|三井住友海上火災保険
- LINEチャット連携で24時間365日対応を実現|日本コープ共済生活協同組合連合会
- メール内容要約に生成AIを活用|JR西日本カスタマーリレーションズ
- AI検索システムで問い合わせ時間を50%削減|ユーコット・インフォテクノ
- コールセンターのAI導入を成功させる方法&手順
- STEP 1:導入前の準備
- STEP 2:AIツール選定
- STEP 3:導入テスト
- STEP 4:運用開始
- コールセンターにAIを導入するときの注意点
- 機能性
- コスト
- スケーラビリティ
- セキュリティ
- サポート体制
- クラウド vs オンプレミス:規模に合わせたシステム選び
- AIで進化するコールセンター業務
コールセンターでAI導入が加速する背景
世界のコールセンターAIの市場規模は、2023年に16億米ドルと評価されました。2024年から2032年までには、19億5000万米ドルから100億7000万米ドルまでに達すると予想されています。つまり、2024年から2032年までに、コールセンターにおけるAI市場の年平均成長率が22.7%に達することを示しています。
このようにコールセンターのAI導入は加速しており、以下のような課題解決に活用されています。
- 業務の効率化とコスト削減
- 顧客対応品質の向上
- 人材不足の解消
- データ分析によるサービス改善など
そして、これらの課題解決には、クラウドベースのAIソリューションが重要な役割を果たしています。
また、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」では、2025年に迎えるいわゆる「2025年の崖」を境に、過去の古い技術で構築されたシステム(レガシーシステム)を刷新できない国内企業の競争力低下が懸念されています。経済産業省をはじめとする政府のDX推進が追い風となり、国内企業のデジタル化が加速している背景もあるでしょう。
さらに、本記事でご紹介するように、DXにより目覚ましい成果をあげる国内企業も可視化されてきました。AIの導入は、コールセンターをはじめ新時代を生きるさまざまな業種にとって、必要不可欠なツールになりつつあります。
コールセンターでAIはどのように活用されている?
各種AIツールは、商品やサービスによって機能がそれぞれ異なりますが、主に以下のような形で活用することができます。
- チャットボットによる自動対応
- ボイスボット(AI自動音声応答)
- FAQシステムとAI検索システム
- 音声認識と議事録作成
- テキストマイニングとVOC分析
- 声紋認証など
それぞれ詳しく解説します。
チャットボットによる自動対応
チャットボットは「自動応答プログラム」のことで、お客様からのお問い合わせに自動応答する機能を備えています。
あらかじめ登録された複数の回答例から、お客様のお問い合わせに対して適切な回答を返すのが特徴です。
また、24時間365日対応できるため、企業の問い合わせ対応を効率化し、コールセンター業務や社内の問い合わせ窓口での負担を軽減します。
ボイスボット(AI自動音声応答)
ボイスボットは「AI自動音声応答」のことで、音声認識機能と自然言語処理機能を用い、AIが自動でオペレーションを展開するシステムです。顧客の発話をテキスト化して解析し、最適な回答を音声で返答するのが特徴です。
会話を重ねることで機械学習により精度が向上し、より高品質な対応をするようになります。
FAQシステムとAI検索システム
FAQは、お客様からよくあるお問い合わせへの回答をまとめたページのことです。FAQシステムを使うと問い合わせ内容やナレッジを集約し、FAQサイトを構築できます。つまり、顧客対応の効率化や社内知識の共有が実現可能になるわけです。
さらに、AIをチャットボットと連携させることで、FAQの編集やデータの共有が可能になります。AIによる学習も進むため、FAQの表示順が自動調整され、関連性の高い回答がサジェストされ、自動的にお客様の課題や疑問を解決へと導きます。
音声認識と議事録作成
音声認識機能とテキスト化機能、AIの要約や議事録作成機能を活用することで、オペレーターやスーパーバイザーの対応内容を自動で視覚化できるほか、顧客情報のデータ化を効率的に行うこともできます。
テキストマイニングとVOC分析
SNSや口コミなど顧客の声(VoC)には、企業のマーケティングや商品開発に有益な情報が豊富に含まれています。テキストマイニングは、これらのテキストデータを収集・解析し、必要な情報を抽出する手法です。
例えば、SNS投稿やアンケート回答を分解してパターンを見つけ出すことで、顧客のトレンドやニーズを迅速に把握できます。これにより、マーケティング戦略の最適化や製品開発が効率化され、企業の競争優位性に貢献します。
声紋認証など
声紋認証は、コールセンターにおいて安全に本人を確認できるテクノロジーの一つです。お客様の声の特徴から個人を特定する仕組みで、口頭で氏名や住所などの情報を確認していた従来の確認手順より短時間で認証が可能となっています。
また、通話中にリアルタイムで認証するため偽装が難しく、通話可能な環境ならどこからでも利用できるため、顧客満足度への貢献にも期待できます。
コールセンターのAI導入事例20選
次に、実際にAIツールをコールセンターに導入した事例を、具体的なツール名とともに20件ご紹介します。
AIオペレータ導入で集荷依頼のストレスを軽減|ヤマト運輸
ヤマト運輸は、電話での集荷依頼に「AIオペレータ」を導入し、顧客の待ち時間を短縮しました。
このAIは音声認識や会話制御技術を用いて自動で集荷依頼に対応し、対応が難しい場合はコールセンターの担当者につなげる仕組みです。これにより、顧客のストレスを軽減し、より迅速なサービスを実現。今後は、集荷依頼以外にも対応できるよう、AI機能の強化が予定されています。
参考:ヤマト運輸 「AIオペレータ」による自動受付で集荷依頼
AI事前診断でネット住宅ローンを最短1分で審査|みずほ銀行
みずほ銀行は、住宅ローンの事前審査を効率化するため「住宅ローンAI事前診断」を導入しました。
従来は2~3営業日かかっていた審査が最短1分で完了し、書類や申込書も不要に。物件が決まっていなくても利用可能で、少ない入力で簡便に利用できるため、顧客対応の質向上や業務負荷の軽減に貢献しています。
AI導入でオペレーター応答時間を短縮|東京ガス
東京ガスはコールセンター業務の効率化と顧客満足向上のため、アクセンチュアのAIサービスを導入しました。
このAIは過去の応答記録を学習し、問い合わせに適した回答をオペレーターに提示します。導入により応答時間が平均10秒短縮され、エスカレーション率が14%削減、年間1万1000時間の応答時間が削減されました。また、一貫性のある回答が確保され、顧客満足度も向上しています。
参考:東京ガス AI導入で年間1万1000時間の応対時間削減◆コールセンター効率化の取り組み
AIマニュアル検索でオペレーターの工数削減|小林製薬
小林製薬は、電話応答の工数削減と対応品質の均一化を目指し、AI検索「Cogmo Search」とクラウド型CTI「CT-e1/SaaS」を導入しました。
このシステムでは、顧客との会話を自動でテキスト化し、クリック操作でFAQやマニュアル検索が可能です。これにより、キーワードを入力せずに対応ができ、応答時間が短縮されました。
特に経験が浅いオペレーターの品質向上に効果があり、後工程の作業時間も大幅に削減されています。
参考:cogmo AI 検索と音声認識を連携しマニュアルや FAQ の自動検索を実現 ~小林製薬コールセンターで、業務効率化を目的に採用~
生成AIでFAQ作成の工数を75%削減|NEC
NECは、セキュリティ強化とコンタクトセンター業務の効率化を目的に、社内向け生成AIを導入しました。
コンタクトセンターでは、マニュアルや応答履歴から自動で回答を生成することでFAQ作成の工数を75%削減し、顧客対応での回答時間を35%短縮する見込みです。
さらに、攻撃診断や社員への攻撃シミュレーション訓練も実施し、今後は自動応答精度や報告業務の自動化にも取り組む予定です。
参考:NEC、コーポレート・トランスフォーメーション加速に向け生成AIを積極活用
AIヘルプデスク導入でサポート業務の属人化防止|パナソニックホームズ
パナソニック ホームズは、管理部門の工数削減を目的に「AI ヘルプデスク for Microsoft Teams」を導入しました。
このサービスは問い合わせ内容の要約や高精度の回答、担当者への引き継ぎ機能を備え、Microsoft Teams上で利用可能です。
情報システム部門と経理部門の対応の7割自動化を目指し、定時外や休日にも対応可能に。属人化の防止と業務効率化に貢献しています。
参考:PRタイムズ「パナソニック ホームズがAI ヘルプデスク for Microsoft Teamsを導入、住宅メーカーでの初導入事例」
声紋認証AIでスムーズな本人確認|アフラック生命保険
アフラック生命保険は、コールセンターでの本人確認を効率化するため、声紋認証AIシステムを導入しました。
これまで、本人確認には「証券番号」「氏名」などを聞き取る必要があり、平均すると2分ほどの時間がかかっていました。しかし、声紋認証の導入により、契約者が所定のフレーズを読み上げる約30秒で完了できるようになりました。
結果、顧客の手続きが簡便化され、顧客満足度と業務効率が向上。アフラックはサービス品質をさらに向上させています。
声認識AIで通話の見える化が可能に|レオパレス21
レオパレス21は、業務効率化と応答品質向上を目的に、AI音声認識「AmiVoice Communication Suite3」を導入しました。このシステムは、通話の見える化、FAQ検索、通話記録のテキスト化、クレーム傾向分析が特徴です。
導入により、オペレーターのスキル差が解消され、対応品質が均一化。FAQ検索機能で迅速な対応が可能となり、顧客満足度が向上しました。また、テキスト化で年間約2,633時間の作業削減を実現しています。
参考:PRタイムズ「レオパレス21 全国5拠点のコールセンター全席に 音声認識ソリューションAmiVoice® Communication Suite3を導入」
AIチャットボット導入でオペレーター数削減|スカパー・カスタマーリレーションズ
スカパー・カスタマーリレーションズは、コンタクトセンターの効率化と顧客の自己解決促進を目的に、AIチャットボット「Cogmo Attend」を導入しました。
このシステムはSalesforceとの連携が容易で、応答率80%以上を維持しながら深夜を含む24時間対応が可能です。月約1万件の問い合わせを処理し、季節変動にも柔軟に対応。自動応答と有人チャットをシームレスに切り替えられるため、リソースの最適化とオペレーター数の削減を実現しました。
参考:Cogmo 「ノンボイス領域が顧客コミュニケーション成功の鍵」
生成AI導入でオペレーターのサポートと育成に寄与|ベネッセホールディングス
ベネッセホールディングスは、業務改革と顧客体験・生産性向上を目指し、Hmcommの生成AI技術を導入しました。この技術は顧客対応の自動化や繁忙期対応、個別対応を可能にし、自動回答やコールバック予約機能も備えています。
導入により業務効率と顧客満足度が向上し、オペレーターのサポートと育成も促進。生産性向上や付加価値業務へのリソース再配分も実現し、ベネッセは次世代コンタクトセンターの構築を進めています。
AIチャットボット|多言語生成系AIチャットボットで観光客をおもてなし|大阪観光局×JTB
JTBは、多言語対応を強化するため、20言語以上に対応するAIチャットボット「Kotozna laMondo」を導入しました。
このチャットボットは、旅行者の質問に自然な会話で回答し、観光案内の効率化とサービス向上を目指します。大阪観光情報サイト「OSAKA-INFO」にも搭載され、24時間体制で観光情報を提供。これにより、顧客満足度と業務効率が向上し、観光業界全体の発展にも貢献しています。
参考:JTB 観光案内に多言語生成系AIチャットボットを日本初導入
AIチャットボットで口座開設方法を自動案内|SMBC日興証券
SMBC日興証券は、夜間・休日の問い合わせ対応と業務効率化、顧客満足度向上のため、AIチャットボット「COTOHA」を導入しました。このAIはLINEでの自動応答機能を持ち、口座開設やIPO、NISAの案内にも対応。オペレーターへの切替機能も備えています。
導入により時間外対応が可能となり、労働負担が軽減。高精度な回答でサポート業務の最適化が進み、顧客満足度の向上に寄与しています。
参考:Call Center Japan 「SMBC日興証券、一部の問い合わせ業務をチャットボットで自動化」
AIチャットボットでよくあるお問い合わせに自動対応|チューリッヒ生命保険
チューリッヒ生命保険は、業務効率化と顧客満足度向上を目指し、AIチャットボット「Cogmo Attend」を導入しました。
このシステムは自動応答機能を備え、必要に応じて有人チャットへ切り替え可能です。住所変更や生命保険料控除証明書の再発行も自動化され、オペレーター対応時間が約5分短縮されました。セルフ解決の促進で入電が減り、顧客満足度とサポート品質が向上し、コールセンターの運営が大幅に効率化されています。
参考:チューリッヒ生命 「ご契約者様向けサービスにAIチャットボットを導入」
AI音声自動応答でコールセンターの保険手続きをサポート|三井住友海上火災保険
三井住友海上火災保険は、業務効率化と顧客対応品質向上を目指し、IBM WatsonとBEDORE Voice Conversationを導入しました。このAIシステムはリアルタイムで音声認識し、FAQを自動表示、24時間365日の対応も可能です。
導入により、新人研修期間が短縮され、オペレーター業務が効率化。自動車保険の解約手続きも簡素化され、年間1万5千時間の業務削減を達成しました。顧客満足度と離職率の改善も実現し、今後もサービス品質向上に取り組む予定です。
参考:三井住友海上 「AI音声による事故受付サービスを開始 」
LINEチャット連携で24時間365日対応を実現|日本コープ共済生活協同組合連合会
日本コープ共済生活協同組合連合会(コープ共済連)は、業務効率化とオペレーター負荷軽減、顧客満足度向上を目的に、AIチャットボット「FastHelp5」と「FastAnswer2」を導入しました。
このシステムはLINEでの自動応答を提供し、24時間365日の対応が可能です。FAQとの連携で即時対応が実現し、必要に応じて有人対応にスムーズに切り替えられます。導入により平均処理時間が30秒短縮され、自己解決率が向上し、コールセンター運営が大幅に効率化しました。
参考:TechMatrix 「LINEチャットサポートを導入、24時間365日の顧客対応を実現」
メール内容要約に生成AIを活用|JR西日本カスタマーリレーションズ
JR西日本カスタマーリレーションズは、顧客対応の品質向上と業務負荷軽減のため、言語AI「ELYZA Brain」を導入しメール対応の要約作業を半自動化しました。これにより、業務時間を短縮しつつ対応品質の向上を実現しています。
AIシステムは大量のメール内容を的確に要約し、スタッフの負担を軽減しました。これにより、顧客の声に集中し、より質の高いサービス提供が可能となりました。業務効率化と顧客満足度向上が両立しています。
今後もAI技術を活用し、顧客対応のさらなる進化を目指す方針です。この取り組みはコンタクトセンターのデジタル化事例として注目され、他業界への展開可能性も示しています。
参考:PRタイムズ 「言語AIのELYZA、JR西日本グループのDXを推進。”二刀流”でGPT/国産AIを使い分け多領域で高速DX推進。顧客対応業務の半自動化に成功。」
AI検索システムで問い合わせ時間を50%削減|ユーコット・インフォテクノ
ユーコット・インフォテクノは、問い合わせ対応の効率化を図るため、富士通のAIシステム「Zinrai FAQ検索」を導入しました。
従来の課題であった問い合わせ件数の減少停滞や時間外対応の不足が、自然文検索に対応するAIの導入で改善され、検索ヒット率と速度が大幅に向上しました。
結果として対応時間が50%短縮され、時間外対応も強化。今後はグループ会社への展開も予定し、さらなる業務効率化を目指しています。
参考:富士通 「問合せ対応時間を 1 件あたり 50%削減 AI 活用で即時対応できるサポート環境を実現」
コールセンターのAI導入を成功させる方法&手順
コールセンターにAIを導入する具体的なステップや、効果的に活用するためのポイントについて詳しく解説します。
STEP 1:導入前の準備
コールセンターシステムを導入する前に、まずはコールセンターを構築する目的や目標、現在の課題や問題点などを洗い出し、AIシステムの導入で現状をどのように改善したいのかを明確にしましょう。
課題は一つとは限らず、各種テクノロジーで対応できる領域もそれぞれです。課題が複数ある場合は、それぞれの課題の優先順位を決め、ツールを導入する業務範囲を策定しましょう。
STEP 2:AIツール選定
導入前の準備が整ったら、導入するAIツールを選定していきます。
AIツールを選定する際は、自社が抱えている課題を解決できる機能が十分に備わっているかどうかをしっかり検証し、費用対効果も視野に入れて検討しましょう。
また、導入後のサポート体制は十分か、他のツールとの互換性や拡張性などカスタマイズ性は十分かなども確認しましょう。
STEP 3:導入テスト
導入するAIツールを選定したら、次は稼働に向けた導入テストと試験運用を行います。必要な業務範囲の中でAIツールを適切に運用できるよう、蓄積データや対応フローなどを設定しましょう。
設定に要するデータを入力するには、かなりの時間を要することがあります。余裕を持った期間を設けましょう。
ツールの設定を終えたら、試験運用を開始して問題なく稼働するかどうかを確認します。不具合があれば再設定し、本稼働に向けて微調整を行います。問題なく試験運用できるようになれば、スムーズに本稼働へと移行できます。
STEP 4:運用開始
試験運用を終えたら、いよいよ運用を開始します。
AIツールは、蓄積データが増えるほど、回答の精度も上がっていきます。PDCAサイクルを回しながらツールをチューニングし、より高い精度で運用できるよう調整していきましょう。
コールセンターにAIを導入するときの注意点
AIツールの導入にあたり、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
ここからは、コールセンターにAIを導入するときの注意点について解説します。
機能性
チャットボットや音声認識、FAQ検索システムなど、必要な機能が備わっているかどうかを選定するのも大切ですが、技術的なトラブルも想定しておかなければなりません。
例えば、AIツールを既存のCRM(顧客管理システム)などと統合する際、連携が難しかったり不具合が生じたりする可能性があります。
また、複雑な問い合わせや、クレーム対応などお客様の感情に寄り添った対応が必要な場面など、AIでは対応が難しい局面があることも理解しておかなければなりません。
コスト
初期導入費用や月額料金、追加機能のコスト試算もしっかりと行っておきましょう。特に自動化システムの導入には、ソフトウェアライセンスやハードウェア、導入コンサルティング費用など、各種サービスに応じた初期費用が必要になります。高度なAIチャットボットシステムの導入には、数千万円規模の初期投資が必要になるケースも。
さらにシステムの管理や維持、アップデート、トレーニングなど、ランニングコストも考慮する必要があります。
スケーラビリティ
将来的に必要になりそうな機能を追加したり拡張したりできるかどうか、他のツールと柔軟に連携できるかどうかも、AIツールを長期的に運用していく上で重要な視点です。
特に自社独自のシステムにカスタマイズしたいというニーズが高い場合は、ツールのスケーラビリティだけでなく、システムのインフラや他のツールの拡張性なども視野に入れ、総合的に判断する必要があります。
セキュリティ
自動化システムは、大量の個人情報を扱うため、セキュリティ対策が不可欠です。特にチャットボットやIVRシステムから収集されたデータの漏洩は、企業の信頼性に影響を与える恐れがあります。そのため、データ保護の法令遵守が求められ、サイバーセキュリティの強化が重要です。
サポート体制
自動化システムは、導入後も最新の顧客ニーズや技術トレンドに対応するため、継続的な最適化が必要です。
例えば、AIチャットボットでは、新製品や市場の変化に応じて応答内容を更新し、機械学習モデルの再トレーニングやAIアルゴリズムの導入といった技術的なアップデートが求められます。
ツールのアップデートやチューニングに伴う技術サポートが十分かどうか、カスタマーサービスは充実しているかどうかなど、AI導入後のサポート体制を確認しておきましょう。
クラウド vs オンプレミス:規模に合わせたシステム選び
事業規模に伴わないシステムを選ぶと、機能を十分に生かせないどころか、かえってコストがかさんでしまう可能性もあるため注意が必要です。
ある程度の事業規模にあり、十分な予算を投じて自社のニーズに最適化した独自のシステムを構築したい場合は、オンプレミス型のシステムを導入するのがよいでしょう。
一方、スタートアップや小規模事業などで、できるだけ予算をかけずにコールセンターを構築したい場合は、クラウド型のシステムがおすすめです。
オンプレミスはカスタマイズ性やセキュリティの高さが特徴で、システム構築の自由度が高く、自社ニーズに合わせた設計が可能です。デメリットとしては、初期費用が高く、システム管理や運用に時間と手間がかかる点があげられます。
一方、クラウドは低コストで導入が容易で、業務量の変化に応じた柔軟な拡張・縮小が可能です。ただし、カスタマイズ性に限界がある点や、既存の独自システムとの連携が難しい場合があるため注意が必要です。
AIで進化するコールセンター業務
人材不足に伴うコスト削減やサービスの低品質化など、さまざまな課題や問題を抱えるコールセンターですが、AIテクノロジーの進化により業務負担やコストが大幅に削減できるようになりました。
特にクラウドベースのAIソリューションは日々進化しており、複数の問い合わせの同時処理や、顧客情報などのデータの整理や統合といった煩雑な作業の効率化など、人間の力だけでは実現が難しい領域を補完しています。
今やAIツールの導入は、業務の合理化や効率化、最適化のために欠かせない選択の一つといえるでしょう。