ビジネスフォン工事ガイド｜費用相場から業者選び、自分でできることまで徹底解説

オフィスの開設や移転、電話設備の入れ替えは、担当者にとって悩みの種の一つではないでしょうか。「ビジネスフォンの工事が必要だけど、何から手をつければいいかわからない」「費用はどれくらいかかるのか、なるべく抑えたい」「そもそも自分で設置できないのか？」といった疑問は尽きません。

本記事では、そんなお悩みを抱える方へ向けて、ビジネスフォン工事の費用相場から信頼できる業者の選び方、自分でできる作業の範囲まで、知りたい情報を網羅的に解説します。この記事を読めば、専門知識がなくても最適な電話環境を構築するための第一歩を踏み出せるでしょう。

ビジネスフォンの工事は自分でできる？

ビジネスフォンを導入するにあたり、多くの方が最初に抱く疑問は、「工事は自分でできるのか？」という点でしょう。結論から言うと、専門資格を持つプロの業者への依頼が必須です。このセクションでは、その理由と、工事不要で導入できる新しい選択肢について解説します。

ビジネスフォン工事の基本と必要な資格

ビジネスフォンの設置工事は、単に電話機を置くだけの作業ではありません。オフィスの電話回線（公衆網）と、複数の電話機を束ねる主装置（PBX）を接続する専門的な作業が含まれます。

この公衆網に接続する工事は、通信網全体の品質と安全を守るため、電気通信事業法によって「工事担任者」という国家資格を持つ者でなければ行ってはならないと定められています。資格を持たない人が工事を行うと、法律違反になるだけでなく、通信障害や機器の故障を引き起こすという重大なリスクを伴います。

自分でできる作業範囲と注意点

資格が必要なのは、あくまで主装置の設置や配線といったシステムの根幹に関わる部分です。専門業者がすべての設置と設定を完了させた後であれば、ユーザー自身でできる作業も一部あります。

• 資格不要でできる作業
  • 設定済みの電話機を、壁や床に設置されたモジュラージャックに接続する
  • 電話機ごとの短縮ダイヤル登録や着信音の変更
• 専門業者への依頼が必須な作業
  • 主装置（PBX）の設置とデータ設定
  • オフィス内の配線工事
  • 電話機の増設や移設

「少しでもコストを抑えたい」という気持ちも分かりますが、安全かつ確実にビジネスフォンを運用するためには、資格を持つ専門業者に任せることが不可欠です。

工事不要で導入できるクラウドPBXという選択肢

「大掛かりな工事や高額な初期費用は避けたい」という方には、工事不要で導入できる「クラウドPBX」が有力な選択肢となります。

クラウドPBXとは、従来オフィス内に設置していた主装置（PBX）の機能を、インターネット上のクラウドサーバー経由で提供するサービスです。物理的な機器の設置が不要なため、配線工事も必要なく、初期費用を大幅に抑えることができます。

従業員のスマートフォンを内線端末として利用できるなど、リモートワークとの親和性が高いのも大きなメリットです。小規模オフィスや、柔軟な働き方に対応したい企業にとって、非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。

ビジネスフォンの工事にかかる費用相場

ビジネスフォン工事の全体像を掴んだところで、次に気になるのが費用です。ここでは、工事にかかる費用の内訳と相場を具体的に解説します。適正価格を知り、予算を立てる際の参考にしてください。

【一覧表】ビジネスフォン工事の費用内訳

ビジネスフォン導入にかかる費用は、大きく「機器代」と「工事費」に分けられます。一般的な費用の目安は以下の通りです。

端末（本体・主装置）の価格相場

費用の大部分を占めるのが、電話機本体と主装置（PBX）です。新品か中古かによって価格が大きく異なります。

• 新品の場合
  • 電話機本体：1台あたり1.5万円～5万円
  • 主装置：10万円（小規模向け）～
• 中古の場合
  • 電話機本体：1台あたり4,000円～1.2万円
  • 主装置：3万円～15万円

中古品は初期費用を大幅に抑えられる一方、メーカー保証がなく、故障リスクや製品寿命が短いといったデメリットも理解しておきましょう。

設置・配線・設定の工事費用

工事費用は、オフィスの広さや構造、設置する電話機の台数によって変動します。

特に、床下にケーブルを這わせるOAフロアがないオフィスや、階をまたいで配線する場合には、作業が複雑になり費用が高くなる傾向があります。正確な費用を知るためには、必ず業者に現地調査を依頼し、詳細な見積もりを取得することが重要です。

工事費用を安く抑える3つのコツ

専門業者への依頼は必須ですが、工夫次第で費用を抑えることは可能です。ここでは3つのコツをご紹介します。

1. 相見積もりを取る 複数の業者から同じ条件で見積もりを取り、比較検討しましょう。価格だけでなく、工事内容やサポート体制もしっかり比較することが失敗しないための鍵です。
2. 中古ビジネスフォンを活用する 初期費用を大幅に削減できる最も効果的な方法です。ただし、保証期間や保守契約の内容は新品の場合と異なるため、事前にしっかり確認しましょう。
3. クラウドPBXを検討する 前述の通り、物理的な工事が不要なクラウドPBXは、初期費用を劇的に抑えることができます。月額利用料は発生しますが、長期的なコストや柔軟性を考慮すると、小規模オフィスにとっては最適な選択となるケースも少なくありません。

依頼から設置完了まで｜ビジネスフォン工事の流れと期間

専門業者に依頼すると決めた後、どのようなステップで導入が進むのでしょうか。ここでは、問い合わせから工事完了までの一般的な流れと、それぞれの工程にかかる期間の目安を解説します。

①問い合わせから業者選定

まずは、インターネットなどで複数の業者を探し、問い合わせをしてみましょう。その際、自社の状況（オフィスの規模、従業員数、必要な電話機の台数など）を伝えることで、大まかな見積もりや提案を受けることができます。

各社の提案内容や対応の質、費用感を比較し、2〜3社に候補を絞り込みましょう。

②事前調査と打ち合わせ

候補となる業者に、オフィスの現地調査を依頼します。専門家が実際に現場を見ることで、正確な配線ルートの確認や、必要な機器のスペック、詳細な工事内容が確定します。

この段階で、自社の要望を具体的に伝え、疑問点をすべて解消しておくことが重要です。打ち合わせの内容をもとに、正式な見積書が提出されます。

③工事の実施と期間の目安

契約後、工事日程を調整し、いよいよ設置工事が実施されます。工事にかかる時間は、オフィスの規模や工事内容によって大きく異なりますが、一般的な小規模オフィスであれば半日〜1日程度で完了することが多いです。

ただし、回線の新設工事が伴う場合は、NTTなど通信事業者側の工事に数週間かかることもあるため、スケジュールには余裕を持っておきましょう。

④動作確認と引き渡し

工事完了後、担当者の立ち会いのもと、すべての電話機で正常に通話できるか、保留や転送などの機能が正しく動作するかを確認します。

問題がなければ、操作方法などの説明を受け、引き渡しとなります。この時点で、トラブル時の連絡先やサポート体制についても再度確認しておくと安心です。

失敗しない！ビジネスフォン工事業者の選び方

ビジネスフォンは一度導入すると長期間利用する重要なインフラのため、業者選びは価格だけでなく、信頼性やサポート体制を総合的に判断する必要があります。ここでは、後悔しないための業者選びの3つのポイントをご紹介します。

信頼できる業者の見極め方

信頼できる業者かどうかは、いくつかのポイントで見極められます。

• 「工事担任者」の資格保有者が在籍しているか これは法律で定められた必須条件です。公式サイトなどで資格保有の有無を明記しているか確認しましょう。
• 導入実績は豊富か 自社と同じくらいの規模や、同業種の企業の導入実績が豊富であれば、安心して任せることができます。
• 問い合わせへの対応は迅速で丁寧か 担当者の対応品質は、将来のサポート品質に直結します。質問に対して的確で分かりやすい説明をしてくれるかどうかも重要な判断基準です。

見積もりの比較ポイント

複数の業者から見積もりを取る際は、総額だけでなく、その内訳を詳細に比較することが重要です。

信頼できる業者の見積書は、「主装置」「電話機」「設置工事費」「配線工事費」「派遣費」など、項目ごとに費用が明確に記載されています。逆に、「工事一式」といった曖昧な記載しかない場合は注意が必要です。不要な項目が含まれていないか、各項目の単価は適正かなどをしっかりチェックしましょう。

アフターフォローとサポート体制の確認

ビジネスフォンは導入して終わりではありません。万が一の故障やトラブル時に、迅速に対応してくれるサポート体制が整っているかどうかが非常に重要です。

• 保証期間はどのくらいか
• 故障時の連絡先と受付時間は
• 修理にかかる時間は（駆けつけ対応の有無）
• 保証期間終了後の保守契約の内容と費用は

初期費用が多少高くても、手厚いサポートを提供してくれる業者を選ぶことが、長期的に見て安心して事業を続けるための鍵となります。

【状況別】ビジネスフォン工事の種類と注意点

ビジネスフォン工事と一言で言っても、オフィスの状況によって内容は様々です。ここでは、代表的な3つのケースにおける工事の種類と、それぞれで特に注意すべき点を解説します。

新設・増設工事

オフィスの新規開設や、従業員の増加に伴って電話機を増やす場合の工事です。主装置（PBX）の設置や、電話回線の引き込み、各デスクへの配線作業など、最も基本的な工事内容が含まれます。

増設の場合は、既存の主装置に接続できる電話機の台数や回線数に上限があるため注意が必要です。上限を超えて増設する場合は、主装置自体の交換が必要になることもあります。

移設・レイアウト変更工事

オフィスの移転や、社内のレイアウト変更に伴う工事です。既存のビジネスフォン機器を一度取り外し、新しい場所で再設置・再設定します。

移転先のオフィスの配線状況によっては、新たに追加の配線工事が必要になる場合があります。また、移転に伴い電話番号が変更になるかどうかも、事前に通信事業者に確認が必要です。

共通する工事の注意点

どの工事にも共通する注意点は、業務への影響を最小限に抑える計画を立てることです。工事中は電話が使えなくなる時間帯が発生するため、休日に工事を実施したり、顧客への事前告知を行ったりといった配慮が求められます。

また、工事当日は、設置場所の最終確認や仕様の変更などに対応できるよう、責任者が立ち会うことが不可欠です。

ビジネスフォンのよくあるトラブルと対処法

万全の準備をして導入しても、ビジネスフォンにトラブルはつきものです。ここでは、よくあるトラブルとその対処法、そして業者に相談する際のポイントを解説します。

「通話ができない」「音声が途切れる」などの対処法

専門業者に連絡する前に、まずは自分で確認できることがいくつかあります。

• 電源とケーブルの確認 電話機や主装置の電源プラグ、LANケーブルなどが抜けていないか、緩んでいないかを確認します。単純な接触不良が原因であるケースも少なくありません。
• 再起動 電話機や主装置、ルーターなどの関連機器を一度再起動することで、一時的な不具合が解消されることがあります。
• 他の電話機での確認 特定の電話機だけで問題が発生しているのか、すべての電話機で発生しているのかを確認します。これにより、問題の原因が端末側にあるのか、システム全体にあるのかを切り分けることができます。

解決しない場合の業者への相談ポイント

上記の対処法を試しても改善しない場合は、速やかに工事業者や保守契約を結んでいる業者に連絡しましょう。その際、以下の情報を整理して伝えると、スムーズな対応が期待できます。

• いつから問題が発生しているか
• どの電話機で、どのような問題が起きているか（具体的なエラーメッセージなど）
• 問題が発生する直前に行った操作など、きっかけに心当たりはあるか
• 自分で行った対処法とその結果

具体的な状況を正確に伝えることが、迅速な問題解決への第一歩です。

まとめ

本記事では、ビジネスフォン工事について、費用相場から業者の選び方、工事の流れ、注意点までを網羅的に解説しました。

最後に、重要なポイントを改めてまとめます。

• ビジネスフォン工事はDIYできず、国家資格を持つ専門業者への依頼が必須。
• 工事費用は機器代と工事費で構成され、電話機1台あたりの工事費相場は約1万～2万円。
• 費用を抑えるには、「相見積もり」「中古活用」「クラウドPBXの検討」が有効。
• 業者選びは価格だけでなく、信頼性やアフターフォローを重視することが長期的な安心につながる。

オフィスの電話環境は、ビジネスの根幹を支える重要なインフラです。本記事で得た知識を活用し、自社にとって最適なビジネスフォンの導入を実現してください。

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