悪質なカスハラは弁護士に相談!企業が事前にできることや選び方を解説

従業員を疲弊させる度を越したカスタマーハラスメント(カスハラ)は、多くの企業にとって深刻な経営課題です。弁護士への相談が有効だとわかっていても、「どのタイミングで相談すべきか」「費用はどれくらいか」といった不安から、一歩を踏み出せない企業も少なくないでしょう。
こうした中、企業に対してカスハラ対策を義務付ける法律が2025年6月に成立しました。施行後は、企業規模を問わず、全ての会社で防止措置を講じることが法的な義務となります。カスハラ対策を講じる上では専門家である弁護士の知見がこれまで以上に重要になるでしょう。
そこで本記事では、カスハラ問題を弁護士に相談するメリットや費用相場、依頼すべき具体的なケースを解説します。また、弁護士に相談する前に社内でできる対策や、実際に相談できる弁護士事務所もご紹介します。
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資料をダウンロー ドする弁護士に相談するメリットと具体的な依頼内容
カスハラ問題を弁護士に相談することで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。具体的に依頼できる内容とあわせて解説します。
弁護士に相談するメリット
弁護士に相談するメリットは、法的な専門知識を背景とした「適切な対応」が可能になる点です。
- リスクを回避し適切な対応を実現できる:弁護士はカスハラに関する法律知識と経験を持ち、現場での対応方法や不当要求への対処や法的手続きまで幅広くサポートできます。これにより、不適切な対応による法的責任やトラブルを未然に防ぐことができます。
- 法的手続きの負担を軽減できる:悪質なクレーマーとの直接交渉や、損害賠償請求・刑事告訴といった法的な手続きは、担当者にとって大きな負担です。これらを専門家である弁護士に一任することで、担当者は本来の業務に集中できます。
- 企業のブランドイメージを守る:専門家による適切な対応は、問題の深刻化や長期化を防ぎます。結果として、企業のブランドイメージや社会的な信用を守り、企業価値の維持につながります。
このように、弁護士への相談は単なるトラブル解決だけでなく、従業員の保護や企業価値の維持といった、経営的な観点からも重要と言えるでしょう。
具体的に依頼できる内容
カスハラが発生した際に弁護士に依頼できる内容は、主に以下の通りです。
【カスハラ発生時の対応】
- 法的助言の提供
- 加害者(顧客等)への警告・通知書送付
- 代理人としての交渉・対応
- 仮処分申し立てや訴訟提起などの法的手続き
- 警察への被害届・刑事告訴のサポート
弁護士事務所によっては、こうした事後の対応だけでなく、カスハラの予防につながる体制づくりまで幅広くサポートしてくれるところもあります。
【カスハラを未然に防ぐ予防策】
- カスハラ対応マニュアルの作成
- 従業員向けカスハラ研修の実施
専門家からサポートを受けて体制を整備することで、万が一カスハラが発生しても組織として一貫した対応ができ、リスクを最小限に抑えられるでしょう。
カスハラ問題を弁護士に相談する前に企業ができること
カスハラ問題が深刻化する前に、企業として取り組めることは数多くあります。ここでは、弁護士に相談する前に企業が取り組んでおきたい3つの対策を解説します。
対応マニュアル・ガイドラインの作成と研修の実施
まず大切なのが、カスハラ対応の基準となる社内マニュアルやガイドラインの整備です。どのような言動がカスハラにあたるのか、現場での具体的な対応フロー、上司や関係部署への報告ルートなどを具体的に定めておきます。ルールが明確にあれば、担当者一人に判断の負担を押し付けることなく、組織として一貫した対応が可能になります。
また、マニュアルを作っただけで終わらせないために、定期的な研修も欠かせません。ロールプレイングを交えた研修を実施し、全従業員が対応方法を身につけている状態を目指しましょう。
マニュアル作成にあたっては、東京都が公開している「カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル」のフォーマットなども参考になります。
参考:カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル|東京都
社内相談窓口の設置と周知
従業員がカスハラ被害を一人で抱え込まないよう、社内に相談窓口を設置することも重要です。相談者のプライバシーを守り、安心して話せる環境づくりを心がけましょう。人事部やコンプライアンス部門といった担当部署と、相談後の対応フローをあらかじめ決めておくと、より実効性が高まります。
ただし、窓口は存在が知られていなければ意味がありません。社内イントラでの定期的な案内や部署内での回覧などを通じて、全従業員へ窓口の存在と利用方法を周知徹底させる必要があります。
録音・録画など記録体制の整備
カスハラ被害を証明するには、客観的な証拠が重要です。あとから「言った・言わない」の論争になるのを避け、事実関係を正確に把握するために、記録体制を整えましょう。
例えば、電話でのやり取りには通話録音システムの導入が有効です。対面の場合は、防犯カメラの設置や許可を得た上での録画が考えられます。こうした音声や映像の記録は、弁護士や警察に相談する際の重要な資料となります。
また、記録の存在そのものが、悪質な言動に対する抑止力となる効果も期待できます。
弁護士への相談を検討すべきケースとは?
では、どのような状況になったら弁護士への相談を具体的に検討すべきなのでしょうか。社内での対応が困難になる前に、判断の目安となる5つの代表的なケースを見ていきましょう。
- 顧客の行為が犯罪に該当しうる場合:脅迫、威力業務妨害、暴力行為など、刑法に触れる可能性がある場合は、弁護士や警察との連携を含めた対応が必要となります。
- 悪質・執拗な要求が続く場合:顧客の不当な要求が繰り返し行われ、解決せず長期化している場合、従業員や現場担当者の負担が大きくなります。弁護士の介入による早期解決が効果的です。
- 従業員の心身に不調が出ている場合:カスハラによって従業員が精神的苦痛や体調不良、不眠、抑うつなどを訴え、業務に支障が出ている場合も早急な対応が必要です。
- SNSやネット上での誹謗中傷・風評被害が発生した場合:顧客がSNS等で悪質な書き込みや誹謗中傷を行い、企業や従業員の名誉が著しく毀損されている場合は、投稿削除や発信者情報開示請求などの法的対応が求められます。
- 社内での対応に限界を感じた場合:「これはカスハラか正当なクレームか判断がつかない」「社内での対応が難航している」「来店禁止や仮処分など法的措置を検討したい」といった場合も、弁護士の専門的な助言が有効です。
これらの状況に該当する場合は、早めに弁護士へ相談し、従業員や企業を守るための適切な対応を検討しましょう。
カスハラ問題に強い弁護士の探し方と選び方のポイント
弁護士を探す際、どのように選べばよいか迷う方も多いでしょう。ここでは、カスハラ問題に強く、自社に合った弁護士を見つけるための具体的な探し方と選び方を解説します。
中小企業法律支援センターを活用する
まず検討したいのが、公的な相談窓口である「中小企業法律支援センター」です。日本弁護士連合会(日弁連)が主体となり、全国の弁護士会と連携して運営しており、中小企業や個人事業主が抱える法的な悩みに対応しています。
例えば、東京弁護士会の中小企業法律支援センターでは、自社の状況やニーズを丁寧にヒアリングした上で、カスハラ問題に精通した弁護士を紹介してくれます。そのため、自力で探すよりもミスマッチが少なく、効率的に信頼できる弁護士と出会えるでしょう。
参考:ご相談の流れ|東京弁護士会 中小企業法律支援センター
初回無料相談を活用する
多くの法律事務所では、30分~1時間程度の初回無料相談を実施しています。無料相談を利用すれば、費用をかけずに弁護士の専門性や人柄、自社との相性を見極められます。
相談の際は、カスハラの具体的な状況を伝え、考えられる解決策や依頼した場合の費用について遠慮なく質問しましょう。事前に情報をまとめ、質問したいことをリストアップしておけば、限られた時間を最大限に活かせます。
一つの事務所だけでなく、複数の相談を経験した上で、「カスハラ案件の実績は豊富か」「報告や連絡は密にしてくれそうか」といった視点から比較検討しましょう。
対応可能な範囲を確認する
カスハラ問題を弁護士に相談する際は、業務の範囲をよく確認しましょう。
カスハラ対策には、すでに起きてしまった問題への「事後対応」と、トラブルを防ぐ「予防策」の2つの側面があります。弁護士によっては、損害賠償請求のような法的手続きだけでなく、対応マニュアルの作成・監修や従業員向けの研修といった、カスハラの予防につながる取り組みまで積極的に支援してくれます。
長期的な視点でカスハラ対策を行うなら、予防策までサポートしてくれる弁護士が理想です。
費用体系や契約形態を比較検討する
弁護士への依頼費用は、事務所や契約形態によって大きく変わります。
一般的には、法律相談料に加えて、依頼時に支払う「着手金」や、問題解決の成果に応じて支払う「報酬金」が発生します。また、案件ごとに依頼するのではなく、月額で継続的に相談できる「顧問契約」という選択肢もあります。
まずは初回相談の機会を利用して、費用体系について説明を受けましょう。その上で、複数の事務所から見積もりを取り、比較することが大切です。
カスハラ対応における弁護士費用の相場を表にまとめました。こちらも目安として参考にしてください。
費用の種類 | 費用相場 | |
---|---|---|
法律相談 (スポット相談) | 時間制 | 5,000~10,000円/30分 (初回無料の場合も多い) |
警告書作成・送付 | 着手金+報酬金 | 5~15万円 |
交渉代行 | 着手金+報酬金 | 着手金:15~30万円 報酬金:固定額または経済的利益の一定割合 |
訴訟 | 着手金+報酬金 | 着手金:30万円以上 報酬金:経済的利益に応じた料率制 |
顧問契約 | 月額顧問料 | 3~10万円/月 |
※実際の金額は、事案の難易度や法律事務所の方針によって変動します。詳細は必ず各事務所にご確認ください。
弁護士に相談する際の事前準備と流れ
弁護士との相談時間を最大限に活用するには、事前の準備が欠かせません。
ここでは、弁護士相談をスムーズかつ有益なものにするための具体的な準備と、相談当日に確認しておきたいポイントを解説します。
事前準備
相談前に情報を整理し、弁護士に分かりやすく伝えることで、より適切なアドバイスが得られます。事前に以下の情報を準備しておきましょう。
- 事実関係の整理:カスハラが発生した日時、場所、具体的な内容(どのような言動・要求があったか)を時系列で整理しておくことが重要です。
- 証拠の収集:メールやメッセージのやり取り、録音、スクリーンショットなど、カスハラの証拠となる資料を集めてください。口頭のみの場合は、内容をメモし、日時や対応時間も記録しましょう。
- 社内対応記録:これまでに自社がとった対応策や、社内での相談・報告履歴、マニュアルの有無なども整理しておくと良いです。
- 被害状況の整理:精神的・身体的な影響、業務への支障など、被害の具体的な内容も記録しておきましょう。
資料は日付順に整理し、要点にマーカーを引くなど、弁護士が短時間で全体像を把握できるようにしておくと相談がスムーズです。
当日の流れと確認したいポイント
当日は持参した資料をもとに弁護士によるヒアリングから始まります。その後、法的な見解や考えられる解決策についてアドバイスを受け、依頼する場合の費用や契約に関する説明へと進むのが一般的です。
当日の流れ
- 予約・日程調整
- ヒアリング(事情聴取)
- 資料の提示・説明
- 法的アドバイス・今後の方針検討
- 費用・契約説明
- 今後の進め方確認
限られた時間の中で、自社に最適なパートナーかを見極めるためにも、相談当日は以下の点を確認しましょう。
相談時に確認したいポイント
- 経験と実績: カスハラ問題の対応経験や、類似の解決事例
- 進め方とリスク: 提示された解決策の具体的な進め方と、想定されるリスク
- 今後のアドバイス: 証拠の追加収集や社内体制の整備に関する助言
- 費用体系:着手金、報酬金、実費など
- 連絡体制: 依頼後の情報共有や、進捗報告の方法・頻度
カスハラ問題に対応できる弁護士事務所
ここでは、これまで多くの企業のカスハラ問題に対応してきた実績豊富な法律事務所をいくつかご紹介します。自社の状況や求めるサポート内容に合った相談先を見つけるための参考にしてください。
松田綜合法律事務所
松田綜合法律事務所は、「カスタマーハラスメント」という言葉が生まれる以前からクレーマー対応を手掛けてきた法律事務所です。
顧客対応の現場を実際に知る弁護士が在籍しているため、従業員の目線に立った現場感覚と、専門家としての法的観点を兼ね備えた実践的なサポートが期待できます。
カスハラ発生前のマニュアル作成や研修といった予防策から、発生後の法的措置に至るまで、一貫した支援体制が整っているのも強みです。
法律事務所マネジメントコンシェルジュ
法律事務所マネジメントコンシェルジュでは、クレーム・カスハラ対応に特化した顧問契約を提供しています。また、社内体制の構築や従業員教育までを網羅した、ベース顧問契約も選択可能です。
クレームを受けた担当者が、初動段階から直接LINEで弁護士に相談できる体制を整えており、迅速で的確な初期対応を可能にします。クレーム対応に起因するSNSの炎上対策や名誉毀損・業務妨害的な書き込みがなされた場合の対応など、現代的なリスクに強いのも特徴です。
能勢総合法律事務所
能勢総合法律事務所は、弁護士歴16年以上の能勢弁護士が代表を務める事務所です。丁寧なヒアリングを行い、ときには現場にも足を運び、実情を踏まえた柔軟な解決策を提案してくれます。
カスハラ事案への対応はもちろん、体制構築のコンサルティングやカスハラに関する講演・研修などにも対応しており、幅広く頼れる事務所です。
電話のカスハラ対策ならアイブリー
悪質なカスハラには弁護士への相談が有効ですが、それと並行して、従業員を守り問題を深刻化させない社内体制の構築が不可欠です。特に、顔が見えない電話でのカスハラは担当者の精神的負担が大きく、証拠の確保も重要な課題となります。
こうした電話特有のカスハラ対策として、電話自動応答サービス「アイブリー」の導入が効果的です。自動音声で一次対応を任せられるため、従業員と顧客の間にワンクッションを置くことができます。

アイブリーを導入いただくことで、以下のようなメリットが期待できます。
- 全通話録音:全ての通話を録音し、クラウド上に保管。万が一の際の事実確認や証拠として活用できます。
- 自動応答による一次対応:職員が直接電話を受ける件数を減らすことで、従業員の心理的負担を軽減できます。
- 用件に応じた自動振り分け:用件に応じて適切な部署へ自動で電話を振り分けます。顧客の待ち時間短縮やたらい回しによる不満の発生を防ぎます。
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