【業界別】企業のカスハラ対応方針 の事例まとめ。共通点や対策のポイント
近年、顧客から過度な要求や脅迫行為をするといった「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題になっています。増加の一途をたどるカスハラは、従業員の精神的・身体的負担を増大させ、離職率の上昇や企業イメージの低下など、企業活動にも深刻な影響を及ぼしています。
このような状況を受け、多くの企業がカスハラ対策に乗り出しています。従業員を守るための社内体制の構築、対応マニュアルの作成、従業員教育など、様々な取り組みが行われています。
この記事では、カスハラの実態や企業がカスハラ対策を行う必要性を解説するとともに、様々な業界における企業のカスハラ対応方針の事例を15件紹介します。各社の取り組みを知ることで、自社のカスハラ対策に是非活用してください。
- カスハラとは
- 企業がカスハラ対策をするメリット・デメリット
- 法律・ガイドライン
- 【業界別】企業のカスハラ対応方針事例15選
- 航空業界
- 鉄道業界
- 通信業界
- 小売業界
- 金融業界
- IT業界
- エネルギー業界
- 各社の共通点・特徴
- カスタマーハラスメント対策のポイント
- 社内体制の構築
- 従業員教育
- 対応マニュアル作成
- 相談窓口の設置
- 法的措置の検討
- 記録・情報共有
- 顧客への周知
- 外部機関との連携
- カスタマーハラスメントから従業員を守るために
- 電話でのカスハラ対策ならIVRy
- 自動で音声録音される
- 自動音声ガイダンスで相手を待たせない
- 担当部署へ自動転送できる
- 顧客対応履歴を残してスムーズに対応
カスハラとは
カスタマーハラスメントは、商品やサービスを利用する客が従業員に対して、正当な理由がない過度な要求をするなどの不当な行為や、暴行や脅迫などの違法な行為といった、著しい迷惑行為を指します。
近年、客という立場を利用して、不当な要求をすることが問題となっており、労働環境を守るためにその対策の必要性が高まっている問題です。
企業がカスハラ対策をするメリット・デメリット
企業がカスハラ対策を行うメリットとしては、従業員の精神的な健康を守り、離職率を低下させることができる点が挙げられます。また、企業イメージの向上や顧客満足度の向上にもつながる可能性があります。安心して働ける環境を作ることで、従業員のモチベーション向上や生産性向上も見込めます。さらに、顧客とのトラブルを未然に防ぎ、企業のリスクマネジメントにも繋がります。
一方、デメリットとしては、対策費用がかかることや、顧客とのトラブル増加のリスク、対応に時間を要することなどが挙げられます。また、過剰な対策は顧客満足度を低下させる可能性も孕んでいます。しかし、長期的には、カスハラ対策を行うことによるメリットの方が大きいと考えられます。適切な対策を講じることで、デメリットを最小限に抑えつつ、従業員と顧客双方にとってより良い環境を構築することが可能になります。
法律・ガイドライン
カスハラに関連する法律としては、労働契約法や民法などがありますが、カスハラを直接規制する法律は現時点ではありません。しかし、厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業向けマニュアル」を公表し、企業がカスハラ対策を行う際の指針となるものをまとめています。
このマニュアルでは、カスハラの定義や類型、企業が取るべき対策などを具体的に示しています。また、相談窓口の設置や従業員教育の重要性も強調しています。企業は、このマニュアルを参考に、自社のカスハラ対策を検討することが求められます。
【業界別】企業のカスハラ対応方針事例15選
ここでは、各業界におけるカスハラ対策の具体的な事例を紹介します。
航空業界
- ANAグループ・JALグループ
共同で「カスタマーハラスメントに対する方針」を策定。長時間拘束やSNSでの誹謗中傷もカスハラに該当すると明記し、社員への心のケアや対応に関する教育を実施予定。両社は、業界全体でカスハラ対策を強化していく姿勢を示しています。 - AIRDO(エア・ドゥ)
暴言や人格を否定する言動、過剰な要求などをカスハラと定義。毅然とした対応を取り、エア・ドゥ便の利用を断る場合もあると明示。安全運航のためにも、毅然とした対応が必要であることを明確にしています。 - スターフライヤー
暴言や差別発言、過剰な要求などをカスハラと定義。従業員の就業環境を守るため、警告やサービス提供の拒否、悪質な場合は弁護士との相談や警察への通報も行うとしています。社員・顧客・関係者の皆が互いに尊重され、安全かつ安心で快適な利用環境を確保するため方針を策定したとのことです。
鉄道業界
- JR東日本
「JR東日本グループカスタマーハラスメントに対する方針」を発表。身体的、精神的な攻撃や威圧的な言動、拘束的な行動、SNSへの投稿などをカスハラと定義しています。同社は「カスタマーハラスメントに該当する行為に対しては、毅然とした対応を行い、グループで働く社員一人ひとりを守ることも、継続的に安全で質の高いサービスを提供していくためには不可欠と考えた」としています。 - 東急電鉄
身体的または精神的な攻撃や威圧的な言動、拘束的な行動などをカスハラと定義。カスハラに該当すると判断した場合は、対応を中断もしくは断ることがあるとしています。社内対応として、研修やサポート体制の構築、カスハラに関する相談体制の構築、警察や弁護士などの外部専門家と連携していくとのことです。
東急電鉄が発表した「カスハラ」に対する方針
通信業界
- ソフトバンク
厚生労働省のガイドラインに基づき、「カスタマーハラスメントに関する当社の考え方」を発表。暴力・暴言、過剰または不合理な要求、セクハラややストーカー行為などのハラスメント行為などをカスハラと定義し、相談窓口やメンタルケアの体制強化を表明。同社の従業員などに対する暴言や過剰な要求が見受けられることから、より良いサービスを継続して提供していくには、従業員などの就業環境を適正に保つことが重要だと考えたとしています。 - KDDIグループ
従業員に対する身体的な攻撃、電話や売り場での長時間拘束などをカスハラと定義。カスハラに該当する言動があったと判断した場合、サービス・商品の提供、カスタマーサポートの対応などを断る場合があるとしています。「安全で働きやすい労働環境の整備」に対する取り組みを一層強化するために策定したとのことです。 - NTTグループ
妥当性を欠く要求や言動、身体的・精神的な攻撃などをカスハラと定義。悪質な行為は警察や弁護士と連携し、法的措置を含む厳正な対応を行うと明言。従業員一人ひとりを守り、安全で働きやすい環境をつくることが、お客さま体験(CX)を重視した質の高いサービスの提供につながるという考え基本方針を策定したとしています。 - NTTドコモ
身体的、精神的な攻撃、土下座の要求、拘束的な行動などをカスハラと定義。毅然とした対応を行い、場合によってはサービスの提供を中止することもあると明示。社員一人ひとりを守り、今後も質の高いサービスを持続的に提供していくために方針を策定したとしています。
小売業界
- 高島屋
暴力や不当・過剰な要求、長時間の拘束などをカスハラと定義。理性的な対話を重視しつつも、悪質と判断した場合は対応を打ち切り、以降の来店を断る場合があるとしています。取引先を含む高島屋グループで働く全ての人々が働きがいを感じ、安心して働ける環境を構築するために、方針を策定したとしています。 - ローソンエンタテインメント
要求の内容が妥当性を欠くものや要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものをカスハラと定義。カスハラに対しては、従業員個人の対応とせず、上長及び本社管理部門が連携して組織的に対応していくとしています。 - ブックオフグループ
要求内容に妥当性がみとめられないもの、要求を実現するための言動が社会通念上不相当なものをカスハラと定義。カスハラに該当する事案が発生した際には、合理的な解決に向けて理性的な話し合いを行い、より良い関係の構築に努め、悪質な場合は取引を断る場合もあるとしています。社内対応として、研修や社内相談窓口の設置、警察や弁護士など外部専門家との連携も実施しているとのことです。
金融業界
- 損保ジャパン
威嚇や脅迫、継続的・執拗な言動、合理的な理由のない謝罪要求などをカスハラと定義。カスハラと判断した場合は、組織で毅然とした対応を行うとし、カスハラを継続する場合や悪質と判断した場合は、警察・弁護士等と連携し、厳正に対応していくとしています。カスハラへの取り組みとして、教育・研修の実施や相談・報告体制の整備などをあげています。
IT業界
- 楽天グループ
暴言や威嚇、セクハラ・ストーカー行為、差別的言動などをカスハラと定義。取引やサポートの停止、民事訴訟を含む法的措置、楽天IDの利用停止などの対応を行うと明示。社内体制として、相談窓口の設置や被害にあった従業員に適切なケアをしていくなどをあげています。
エネルギー業界
- 東京ガス
長時間の拘束行為、過剰な繰り返し行為、過度に批判的な発言などをカスハラと定義。カスハラと判断した場合は、従業員による対応を中止し、悪質な場合は警察や弁護士と連携するとしています。社内体制として、カスハラへの適切な対応ができるようにするための教育や、体制構築、被害を受けた従業員に対するアフターケアなどをあげています。
各社の共通点・特徴
上記の事例を見ると、多くの企業がカスハラを明確に定義し、従業員保護のための対策を強化していることがわかります。具体的には、相談窓口の設置、対応マニュアルの作成、従業員教育などが挙げられます。また、悪質なケースには法的措置も辞さないという姿勢を示している企業も多いです。
近年、カスハラは社会問題化しており、企業は従業員を守るだけでなく、顧客との良好な関係を維持しながら、適切な対応を行うことが求められています。各社の事例を参考に、自社の課題やリスクを分析し、実効性のあるカスハラ対策を構築することが重要です。
カスタマーハラスメント対策のポイント
社内体制の構築
カスハラ対策を行うためには、まず社内体制を構築することが重要です。カスハラ対策責任者や担当部署を明確化し、役割分担を決めましょう。また、社内規定を整備し、対応フローを明確化することも重要です。
従業員教育
従業員に対して、カスハラに関する研修を実施しましょう。カスハラの定義や類型、対応方法などを理解してもらうことで、適切な対応ができるようになります。また、ロールプレイングなどを実施することで、実践的な対応能力を養うことも効果的です。
対応マニュアル作成
カスハラが発生した場合の対応手順をまとめたマニュアルを作成しましょう。マニュアルには、カスハラの定義、対応フロー、対応時の注意点、エスカレーション手順などを記載します。マニュアルに従って対応することで、冷静かつ適切な対応が可能になります。また、状況に応じてマニュアルを改訂していくことも重要です。
相談窓口の設置
従業員がカスハラを受けた際に相談できる窓口を設置しましょう。相談窓口は、従業員の心のケアを行う役割も担います。相談窓口には、専門的な知識を持つ担当者を配置し、従業員が安心して相談できる環境を作る必要があります。また、相談内容を記録し、分析することで、今後のカスハラ対策に活かすことも重要です。
法的措置の検討
悪質なカスハラに対しては、法的措置を検討することも必要です。警察や弁護士に相談し、適切な対応を取りましょう。法的措置を取ることで、従業員を守るだけでなく、企業の権利を守ることもできます。ただし、法的措置は最終手段であり、慎重に判断する必要があります。
記録・情報共有
カスハラが発生した場合は、その内容を記録し、社内で共有することが重要です。記録には、発生日時、場所、状況、対応内容などを記載します。情報を共有することで、同様のカスハラの発生を防止することができます。また、記録は、法的措置を取る際の証拠としても重要になります。
顧客への周知
カスハラ対策の内容を顧客に周知することも重要です。例えば、店舗にポスターを掲示したり、ウェブサイトに掲載したりすることで、顧客にカスハラに対する理解を深めてもらうことができます。また、顧客からの意見を収集し、カスハラ対策に活かすことも重要です。
外部機関との連携
必要に応じて、警察、弁護士、労働基準監督署などの外部機関と連携しましょう。外部機関の専門的な知識やノウハウを活用することで、より効果的なカスハラ対策を行うことができます。
カスタマーハラスメントから従業員を守るために
カスハラは、従業員の精神的な健康を損ない、企業の業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。企業は、カスハラ対策を積極的に行い、従業員が安心して働ける環境を整備することが重要です。
上記の事例を参考に、自社のカスハラ対策を見直し、従業員と顧客双方にとってより良い環境を構築しましょう。顧客満足度を向上させながら、従業員を守るためには、カスハラ対策への継続的な取り組みが不可欠です。
電話でのカスハラ対策ならIVRy
電話でカスハラに対策するなら、電話自動応答サービスIVRy(アイブリー)がおすすめです。IVRyは、かかってきた電話に自動で対応し、「〇〇のお問合せは1番を押してください…」と案内するシステムを提供しています。
電話によるカスハラ対策には、こうしたテクノロジーを活用する方法が効果的と言われており、事前のカスハラ防止に役立つほか、万が一、法的措置を取ることになった際にも有効的です。
自動で音声録音される
IVRyではすべての電話を録音しており、なにかあった時には改めて聞き返して確認したり、万が一の際に証拠として利用することもできます。録音データはクラウド上で安全に管理されているため、いつでもアクセスできます。
通話の履歴は日時順、顧客順というように、用途に合わせて確認できるので、顧客ごとに電話の件数をチェックしたり、今日1日でどんな電話があったか、と振り返るなど、必要なデータをすぐに見つけることができます。
自動音声ガイダンスで相手を待たせない
IVRyは、かかってきた電話に自動で対応し、AIによる音声ガイダンスが流れる仕組みになっています。相手を長時間待たせることがないので、カスハラの防止になるほか、顧客にとっては利便性が高まることになり、顧客満足度向上も期待できます。
担当部署へ自動転送できる
IVRyは、用件に応じて適切な部署に電話を転送できる機能を備えています。発信者がガイダンスに従って番号を選ぶと、指定された部署に自動で電話が転送されます。
顧客にとっては待ち時間が短縮され、何度も同じことを繰り返し説明する必要がなくなるため、クレームやカスハラの防止にも効果的です。
顧客対応履歴を残してスムーズに対応
IVRyでは、かかってきた電話番号ごとに、自動的に電話履歴が記録されます。過去の通話履歴を見ながら対応できるので、つねにスムーズな対応ができます。誰が電話に出ても安定した対応ができるので、カスハラやクレームを防ぐのにつながります。