地方公務員の35%がカスハラ被害 ー 総務省が初の全国調査を公表
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執筆者 : アイブリー編集部

総務省は2025年4月25日、地方公共団体の一般行政部門に勤める職員を対象に実施した「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査結果」を発表しました。過去3年間に「カスタマーハラスメントを受けた、または受けたと感じた」と回答した職員は全体の35%でした。民間企業の従業員を対象とした厚生労働省調査(10.8%)と比べると約3倍で、公務現場の深刻さが明らかになりました。
調査の概要
- 対象:都道府県・市区町村の一般行政部門職員2万名(常勤14,191名・非常勤5,809名)
- 方法:無作為抽出方式のオンラインアンケート
- 期間:2024/11/26〜12/16
- 回答:11,507名(有効回収率57.5%)
回答は匿名で集計し、個人や所属団体は特定されない形を取った。
カスハラを受けた経験が多い部署は「広報広聴」「年金保険関係」
過去3年間にカスハラを受けた割合が高い部署は次のとおりです。広報広聴では「ほとんど毎日〜月に数回」と回答した職員が31.6%に達しました。

部署 | 被害率 |
---|---|
広報広聴 | 66.3% |
年金保険関係 | 61.5% |
福祉事務所 | 61.5% |
戸籍・住民票窓口 | 59.9% |
税務 | 55.5% |
年代は30代が44%で最多。非管理職が多い
年代は30代が44%で最多。次に20代の40%が多くなっています。任用形態別では、任期の定めのない常勤職員(非管理職)が43.2%が最も多くなっています。男性・女性のそれぞれの比率では、男性の方が38.4%と割合が多い結果となりました。

被害のきっかけは「行政サービスの利用者・取引先の不満のはけ口・嫌がらせ」が72.5%
被害経験者4,031名が挙げた原因(複数回答)は次のとおり。利用者側の不満が主因とする回答が7割を超えた一方、17.5%は職員の説明不足や言葉遣いが引き金になったと認識しています。
- 行政サービス利用者・取引先の「不満のはけ口・嫌がらせ」 72.5%
- 行政サービス利用者・取引先の「誤解や思い込み」 57.1%
- 「職員の対応が一因」 17.5%
一人で対応させず組織的な対応を
総務省は、カスハラの対応策として以下を示しています。
主な対応策
- 各部門における共通的な対応策として、一人で対応させず組織的に対応を行う
- その上で、部門によっては当該部門の特性に応じた対応も必要
- カスタマーハラスメントのきっかけとなった理由について、「職員側の対応が一因」を回答した割合は全体の17.5%となっており、行政サービスの利用者・取引先に対する接遇の向上がカスタマーハラスメントの減少に一定程度資すると考えられる
取組例
- 職員アンケートによる実態把握
- 職種や現場等の違いに応じた対応マニュアル等の整備
- 行政サービスの利用者・取引先に対する接遇向上
総務省は、民間企業では顧客を選別した対応が可能である一方、公務職場では全ての行政サービスの利用者に対して、公平・公正に行政サービスを提供することが必要であるほか、行政サービスの利用者の権利を不当に侵害しないよう慎重な対応が求められると述べています。