東京都が制定を目指す「カスハラ防止条例」とは

東京都が、国内初となる「カスハラ防止条例」の制定に向けて、2023年10月に「カスタマーハラスメント防止に関する検討部会」を設置し、現状を分析するとともに、対策のあり方などについて検討が進められています。

東京都は、国内初の「カスハラ防止条例」の制定に向けて、2023年10月に「カスタマーハラスメント防止に関する検討部会」を設置し、現状を分析するとともに、対策のあり方を検討しています。

報道によると、年内の都議会への提出を目指しており、2024年5月22日にはこれまでの検討状況をまとめた資料が紹介されました。
この記事では、東京都が「カスハラ防止条例」の制定に動き出した背景と、現在の検討状況について紹介します。

カスタマーハラスメントの定義と影響

カスタマーハラスメント(カスハラ)は、商品やサービスを利用する客が従業員に対して、正当な理由がない過度な要求や暴行、脅迫などの違法行為を行うことを指します。

こうした行為は、働く人の就業環境を悪化させるだけでなく、サービスの品質低下や事業活動の継続にも悪影響を及ぼします。

特に働き手が集中する東京都では、カスハラが深刻化しており、法律がない中では条例が必要という考えから、今回の制定の動きにつながっています。

検討部会の構成と議題

「カスタマーハラスメント防止に関する検討部会」には、各団体からの推薦者や労働法の識者などが参加しています。これまでに4回開催され、以下の議題について意見が交わされました。

詳細に関しては、東京都の公式サイトで資料が公開されています。

  1. カスタマーハラスメントへの対応に関する現状分析と論点整理
  2. カスタマーハラスメント防止対策の具体的な手法
  3. カスタマーハラスメント防止のためのルール作り
  4. カスタマーハラスメント防止のルールの具体的な内容

カスハラ防止条例の検討状況

「カスハラ防止条例」は、基本的な定義を条例で定め、具体的な行為をガイドラインで示すことで、社会全体の共通理解を図る方針です。
また、罰則を設けずに広い行為を禁止していく考えです。

カスハラに該当する行為としては、「就業者に対する暴行、脅迫などの違法行為」や「暴言、正当な理由がない過度な要求などの不当な行為(著しい迷惑行為)」が挙げられ、就業環境を害するものとされています。

5月22日に共有された内容は、以下のYouTube動画で確認できます。

カスハラと正当なクレームの境界線

具体的にカスハラに該当する行為としてはどのようなものがあるのでしょうか。東京都はカスハラに該当する行為と該当しないと考えられる行為について、「3千円で購入した子どもの誕生日ケーキの名前が間違っていた場合」を例としてあげています。

申出の内容が不当な場合

  • 行為の手段が不当: 店員の胸ぐらを掴み1億円を要求 → カスハラに該当
  • 行為の手段が相当: 丁寧な口調で1億円を要求 → カスハラに該当

申出の内容が相当な場合

  • 行為の手段が不当: 店員の胸ぐらを掴み3千円の返金を要求 → カスハラに該当
  • 行為の手段が相当: 丁寧な口調で返金や交換の希望を申し出 → 原則としてカスハラに該当しないが、状況により該当する場合も


実際の現場では、これらの判断が難しいグレーゾーンも多いことが示されています。

東京都が制定を目指すカスハラ防止条例は、従業員の保護と企業の健全な運営を目的としています。具体的な防止策を盛り込み、企業向けのガイドラインや教育・研修の強化、被害者支援体制の整備など、多角的なアプローチを採用しています。この条例により、カスハラの問題が解決され、従業員が安心して働ける環境が実現することが期待されます。

ソース:公労使による 「新しい東京」実現会議(5月22日)

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