自治体DXとは?市区町村の取り組み事例や成功のポイント
DXとは、デジタル技術を活用することで、新たなビジネスモデルを生み出したり、私たちの生活に変革を起こすことを言います。日本では今「2025年の崖」問題を前に、企業内でDX推進が求められていますが、同様に自治体にもDXが求められているのです。
その大きな理由は、少子高齢化に伴ってインフラ維持が難しくなると考えられているためです。これから各自治体は、どんなDXを進めていけばよいのでしょうか?この記事では、自治体DXについて詳しく解説すると共に、取り組み事例や成功のポイントについて解説します。
- 自治体におけるDXとは?
- なぜ自治体にもDXが必要?
- 自治体DX推進計画の6つの重点取組事項
- ①自治体の情報システムの標準化・共通化
- ②マイナンバーカードの普及促進
- ③自治体の行政手続のオンライン化
- ④自治体のAI・RPAの利用促進
- ⑤テレワークの推進
- ⑥セキュリティ対策の徹底
- 自治体がDX推進させるためのポイントとは?
- ポイント①小規模なDXから取り組む
- ポイント②組織全体でDX体制を構築する
- ポイント③デジタル人材の育成
- ポイント④DX計画を立てる
- ポイント⑤ データを活用する
- 自治体のDX成功事例
- AIチャットボット
- 地域通貨
- ペーパーレス化
- オープンデータ活用
- スマート人材育成
- DXを推進し始めるなら電話業務からがおすすめ
- まとめ
自治体におけるDXとは?
企業に求められるDXとは異なり、自治体に求められるDXは、地域住民の利便性や、行政サービスを向上させるためのものです。そのための一環として、マイナンバーカードを活用していくことや、行政手続きのオンライン化、テレワークの推進、セキュリティ対策の徹底、脱ハンコなどが挙げられます。
また、政府によると、自治体DXを通して「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」が求められています。
DXの具体的な進め方や手順については、こちらの記事でより詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください!
なぜ自治体にもDXが必要?
自治体にDXが必要とされる理由のひとつに、少子高齢化が挙げられます。高齢者が増加する一方、労働世代の人口が減少し、公務員の数が不足することが予想されています。そのため、インフラ維持・行政サービスの維持が難しくなると言われているのです。
そこで自治体DXに取り組み、業務効率化を進め、職員の負担を軽減することが急務となっています。自治体もDXを進めることで、紙の書類を基本としたアナログ体制からの脱却や、サービス遅延の改善が実現するでしょう。
自治体DX推進計画の6つの重点取組事項
自治体DX推進計画とは、総務省が提示した資料によるもので、6点の事項に重点的に取り組むべきとされています。
なお、こちらは経済産業省が企業向けに作成した「デジタル・ガバナンス コード2.0(旧:DX推進ガイドライン)」をモデルに作成されており、「目指すべき姿」「現状の課題」「取り組みの方針」「国からの施策・支援」「取り組みスケジュール」という項目に分けて、方針や目標が示されています。
それでは、6つの重点取組事項について、それぞれ詳しく解説しましょう。
①自治体の情報システムの標準化・共通化
経済産業省の「DXレポート」によると、日本企業の多くは基幹システムのレガシー化に直面しています。基幹システムの開発者がまもなく定年を迎えることに加え、レガシーシステムのメンテナンスに労力をかけるあまり、最先端のデジタル技術を生かすことができていません。
これにより最新技術を扱うことのできるエンジニア育成にも支障が出る事態となっているのが「2025年の崖」と呼ばれる問題です。これは民間企業だけにとどまらず、地方自治体についても同じことが言えます。古い基幹システムを使い続けることで、様々な支障をきたしているのです。
そこで自治体のシステムをクラウド化し、常に最先端の技術を取り入れられる環境を用意すること、開発ベンダーの適正な競争環境を準備すること、各自治体が必要なシステムを取捨選択できる仕組みを構築することが目標とされました。
現在は各自治体ごと・目的ごとにばらばらのシステムが利用されていますが、2025年までには全国で統一された新システム「Gov-Cloud(仮称)」への移行が予定されています。移行後は住民台帳・税金・健康保険・年金・子育て支援・健康管理など、17種の業務をはじめ、各種行政サービスを統一したシステムで管理できるようになります。
②マイナンバーカードの普及促進
マイナンバーカードは、デジタル社会を早期に実現するために必要不可欠なものです。マイナンバーカードの本人確認・認証機能を活用し、今後は行政手続きのオンライン化、電子証明書発行、図書館や地域施設利用時のカードとしたり、民間企業での利用促進などが施策として予定されています。
また、マイナンバーカードと社会保障制度や税制を紐づけることで、国民ひとりひとりの所得状況を把握しやすくなります。不正受給の防止や、生活に困っている人の支援につながると言えるでしょう。
マイナンバーカードの普及を促進するために、交付率によって地方交付金を受けられる仕組みが考えられています。
③自治体の行政手続のオンライン化
引っ越しの際は「転出届」「転入届」をそれぞれの市区町村役場へ提出する手続きが必要です。加えて、お子さんがいるご家庭では児童手当の住所変更手続、小中学校の転校手続、幼稚園・保育園の転園手続が必要です。
このほか、対象となる人は印鑑登録や国民健康保険、国民年金、介護保険、ペットの登録住所の変更手続が必要となることがあります。こうした手続は、うっかり漏れてしまったり、手続が遅れてしまったりすると、必要な行政サービスが受けられない、といったトラブルに発展することも。
そこでマイナンバーカードを利用したり、行政手続のオンライン化を促進することで、自宅からでも手続ができるようにしたり、一か所でまとめて手続きが可能になる「引越手続のワンストップ化」が検討されています。
引越時に限らず、行政の色んな手続きがオンラインで出来るようになれば、住民の利便性が大いに高まります。オンライン化を促進するために、キャッシュレス化、ハンコ廃止、書面・対面手続きの見直しなどが進められる予定です。
④自治体のAI・RPAの利用促進
RPAとはRobotic Process Automationの略称で、人が手作業で行っていたことをロボットシステムにより自動化することを言います。合わせてAI(人工知能)の利用を促進することで、業務効率化、時間短縮、人的ミスの削減、人手不足解消に役立ちます。
また、より高度な判断が必要な業務など、人にしかできない業務に注力できるようになるでしょう。すでに導入されている施策としては、AIチャットボット、ドローンを活用したスマート農業などが挙げられます。
AIやRPAの利用を促進するため、総務省では各自治体にガイドブックを共有したり、参考事例を紹介するほか、財政措置を拡充するなどの措置をとっています。
⑤テレワークの推進
新型コロナウィルスの流行を踏まえ、民間企業ではテレワークが急速に広まっています。地方自治体もテレワークを推進することで、過密状態を避けるほか、新たなライフスタイルへの転換につながるでしょう。
介護や育児で仕事との両立が難しい職員が働きやすくなることや、出勤が困難な人材を採用することによる、人材の有効活用・人手不足解消も期待されています。こうした体制を整えておくことで、今後新たなパンデミックや災害時でも業務維持につながると考えられます。
総務省では、テレワークに適したシステム環境を構築するほか、事例紹介、相談支援、財政措置を講じる見通しです。
⑥セキュリティ対策の徹底
自治体DXを促進するために、重要となるのがセキュリティ対策です。自治体で保管する情報は、住民ひとりひとりの個人情報がふくまれるため、徹底した管理が必要となります。一方で、セキュリティを強化すればするほど、システムの利用に制限が出てしまう、という問題も浮上しました。
自治体によってはIT人材の不足、ネットリテラシーが低い、といった問題が指摘されることも。職員ひとりひとりが対応していかねばなりません。
現在は総務省が認定するセキュリティレベルの高いクラウドシステムへ移行するのを支援する取組が行われていますが、セキュリティ対策については、総務省・デジタル省でも未だ討議・検証の段階です。今後、改めて詳しい方針が発表されることとなるでしょう。
自治体がDX推進させるためのポイントとは?
ポイント①小規模なDXから取り組む
DXを導入する際は、小規模なものから大規模なものまで、色々な種類があります。まずは小規模なものから取り組み、住民の混乱を最小限に抑えるのがおすすめです。職員も少しずつ新しいシステムに慣れながら、業務を進めることができるでしょう。
段階的に次のDXシステムに移行したり、導入したりすることで、最終的に全体でDX化を完成させるのが理想です。
ポイント②組織全体でDX体制を構築する
日本国内の公務員の人数は、平成初期をピークに減少傾向にあります。その一方でひとりひとりのニーズが多様化し、人手不足を実感している自治体も多いでしょう。少子高齢化の今、今後もその傾向は続くことが予想されます。効率化や人手不足へ対応するためにDX推進は急務となっています。
しかしその反面、各自治体の職員ひとりひとりにDX推進の意識が薄いと言われます。個人家庭や民間企業のデジタル化に比べても、各自治体のデジタル化は遅く、未だにハンコや紙ベースの書類でのやり取り、対面を重視する昔ながらのアナログ文化を重視するところが少なくありません。
まずはこうした意識から変えていく必要があります。わずかの労力で目に見えて分かりやすい効果を得られるようなDX技術を導入し、少しずつ職員の意識をDX推進に向けていくのが良いでしょう。
また、DX導入に当たっては組織や部署の垣根を超えた体制が必要です。各部署で混乱が出ないよう、統一したシステムを構築しましょう。
ポイント③デジタル人材の育成
日本では開発ベンダーに設定・管理・メンテナンスを全て丸投げしている民間企業や自治体が多くあります。しかしDX技術を使いこなし、常に最先端の技術を取り入れていくなら、それでは不十分と言えるでしょう。とは言え、新たにDXのための人材を採用しようとしても、労働人口が減少している現在では、それも難しい状態です。
つまり、これからDXを推進していくためには、企業内部、自治体内部でデジタル人材を育成していくことが重要です。DX化を行う上で、住民や職員にどんなメリットがあるか、設計できるような人材が求められます。
政府では「デジタル専門人材派遣制度」を創設し、協力企業から専用人材を派遣してもらえるようにしました。デジタル人材のオンライン育成ツールも開発されています。今後も民間企業と手を取り合って、デジタル人材の育成に注力する必要があるでっしょう。
ポイント④DX計画を立てる
DX技術には様々なものがありますが、中には効果が実感できるまで時間がかかるものもあります。数年という単位で見るべきものもあり、長期的な視点が重要となります。この点の理解が足りないと、中途半端な状態で投げ出してしまう可能性も。なんのためのDXなのか、常に目標を意識することも大切です。
定期的に計画の進捗度を測定するのも良いでしょう。中長期的な計画であれば、まずは定着させる、習慣化することから始めて、最終的な目指すべき姿・理想とする状態をゴールとして描くのがおすすめです。
ポイント⑤データを活用する
自治体がDXを進めるにあたって、気を付けて欲しいことがあります。それは「DXを導入すること」自体が目的となってしまうことです。
DX推進の本当の目的は、住民へのサービス向上にあります。DXを導入し、職員が利用できるようになった状態に満足するのではなく、さらなる効率化やサービス向上を考えなければなりません。DX技術はそのためのものです。
そこで役立つのがデータの収集・活用です。DX技術を利用すれば、各自治体のデータを大量に収集し、そこから住民が求めるサービスや、より効率化できる業務などを導き出すことができます。DX技術を使い続けることで、進化・発展し続けることができるのです。
DX推進のためのポイントや手順については、民間企業の例も参考になります。ぜひこちらの記事も合わせてご覧ください!
自治体のDX成功事例
AIチャットボット
AIチャットボットは、すでに多くの市町村役場で導入されています。住民からの問い合わせがあると、AIチャットボットが自動で回答する仕組みです。これにより、役場の受付時間内に問い合わせができない住民からも問い合わせができるようになりました。
地域通貨
地域通貨は、一部の地域のみで利用できる通貨です。地域外では利用できず、金融機関へ預けられることもなく、地域内での支払いに使われる可能性が高いため、地域経済の活性化が期待できます。
近年では電子化が進み、スマホアプリやQRコードつきのカードなどで決済ができるようになっています。
ペーパーレス化
埼玉県や、北海道北見市では、申請の際も書類に記入をすることがありません。「書かない窓口」と呼ばれ、申請書に署名をするだけで電子申請書が完成する仕組みになっています。
初めはセミナーの利用申請など5種類程度の申請だけを取り扱っていたものが、現在では1000件近くの電子申請ができる自治体もあります。オンライン申請との連携にも期待大です。
オープンデータ活用
オープンデータとは、二次利用が可能な公開データのことで、人手や労力・費用などのコストをかけずに多くの人が利用できるものです。
横浜市金沢区では、子育てポータルサイトで保育園の空き状況、公園の情報、予防接種の予定などを公開しており、子供の生年月日や、住まいの郵便番号などで情報を絞り込める機能も実装しています。
スマート人材育成
いち早くDX人材の育成に乗り出した三重県では、AIによるデータ活用や、DX技術に関する研修を行った上で、県内事業者のスマート漁業・スマート農業を通し経験を重ねています。前年度の課題を洗い出してプログラムを改善するなど、今後の成果にも期待が寄せられています。
DXを推進し始めるなら電話業務からがおすすめ
DX推進を始めるなら、まずは小規模なものから取り組むのがおすすめです。「何から手をつけてよいか分からない」と悩んでいるなら、最初は電話DXに取り組むのはいかがでしょうか?
自治体の核施設には、毎日何十件、何百件と電話がかかってきます。このうちの半分以上は「よくある問い合わせ」と言われるもので、必ずしも職員が対応する必要がない問い合わせです。こちらを電話DXシステムで自動回答にした場合、電話業務の効率化になり、職員の業務負担が大きく軽減されるでしょう。
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かかってきた電話番号へSMSを返送したり、重要な電話は担当者へ直接転送するなど、様々な使い方が可能です。DX推進を始めるなら、ぜひ合わせてIVRyをご検討ください!
まとめ
未だアナログな手作業による業務が多く残る自治体の各施設では、労働人口により人手不足が慢性化しています。このまま続けば、2025年には行政サービスが滞ったり、業務が維持できない恐れもあるでしょう。
そこで総務省より、各自治体にはDX推進が求められています。そのための支援制度も拡充される見通しで、マイナンバーカードの普及、ハンコ脱却などはその一環です。今後は電子申請・オンライン申請、書面・対面手続きの見直しなどが予定されており、DX推進の波は加速していくでしょう。
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