【弁護士監修】コールセンターに録音の開示義務はある?違法性の有無や注意点を解説

個人情報保護法の規定により、顧客から求められた場合には、コールセンターが録音した通話内容を遅滞なく開示する義務が生じます。ただし、通話を録音することは違法ではありません。 本記事では、コールセンターにおける通話録音の開示義務や通知義務、注意点について、法律の観点から詳しく解説します。

個人情報保護法の規定により、顧客から求められた場合には、コールセンターが録音した通話内容を遅滞なく開示する義務が生じます。ただし、通話を録音することは違法ではありません。

本記事では、コールセンターにおける通話録音の開示義務や通知義務、注意点について、法律の観点から詳しく解説します。

1.コールセンターにおける通話録音の開示義務はある?

通話内容について不満や疑問を感じた顧客から、録音内容の開示を要求されるケースがあります。この場合、e-Gov「個人情報の保護に関する法律」(以下「個人情報保護法」)に開示義務が定められているため、遅滞なく開示する必要があります。開示義務の根拠となる条文は以下です(一部省略、意訳)。

<第33条>

“本人は個人情報取扱事業者に対して、当該本人が識別される保有個人データの電磁的記録の提供による方法や、その他の個人情報保護委員会規則で定める方法により、開示を請求できる。”

<第33条2項>

“個人情報取扱事業者は、前項で規定されている請求を受けた場合、本人に対して、当該本人が請求した方法等により、遅滞なく、対象について保有する個人データを開示しなくてはならない。”

また、一般社団法人 日本コンタクトセンター協会「コールセンター業務倫理ガイドライン」にも、以下のとおり記載されています(一部省略、意訳)。

< 7.通話録音情報の保護・開示等(2)>

“コールセンター業務を実施する者は、個人情報である音声の開示等に関する求めに応じる手続きを規定し、本人が知り得る状態に置き、本人から開示等を求められた場合は、遅滞なく開示等をしなくてはならない。”

法律およびガイドラインの双方で規定されており、遅滞なく録音データの開示を行うことは不可欠です。

参考

2.そもそもコールセンターの通話録音は違法? 

通話内容の録音を禁止する法律がないため、コールセンターの通話録音は違法にはなりません。また、事前に通知せず顧客に無断で録音した場合でも、原則として合法です。

盗聴と秘密録音の違い

通話録音が違法だと考える人がいる理由として「許可なく会話を録音する行為」と「悪いイメージが付いている盗聴」を同一視していることが挙げられます。しかし、コールセンターの通話録音は、以下の違いから盗聴ではなく「秘密録音」に該当します。

  • 盗聴:第三者間の会話を同意なく録音・音声傍受すること
  • 秘密録音:会話している同士において、一方が相手から同意を得ずに録音すること

裁判所「最高裁判所判例集  平成11(あ)96」で最高裁が示したことから、秘密録音に違法性はないとされています。そのため、コールセンターによる通話録音は原則として適法です。

ただし、録音データの悪用(故意による第三者への漏えいなど)によって個人の権利を侵害した場合、e-Gov「民法」の不法行為(第709条)による損害賠償が認められたり、e-Gov「刑法」の名誉毀損罪(第230条1項)に問われたりするおそれがあります。

なお、盗聴に関しても、取り締まる法律がないことから犯罪には該当しません。ただし、盗聴の前後で行った行為(電話に盗聴器を仕掛ける、他人の家に無断侵入するなど)は違法となり得ます。また、秘密録音と同様に、第三者の権利を侵害した場合、民法上の不法行為などに問われるリスクがあります。

参考

3.コールセンターにおける通話録音の通知義務はある?

前述のとおり、取り締まる法律がないため、原則として通話録音をする際に通知する義務は発生しません。ただし、e-Gov「個人情報の保護に関する法律」の第21条の規定に該当する場合は注意が必要です。具体的な条文の内容(一部意訳)は以下のとおりです。

<第21条>

“個人情報取扱事業者が個人情報を取得した際は、事前に利用目的を公表しているケースを除いて、その利用目的を速やかに本人に通知し、または公表しなくてはならない。”

条文に出てくる用語の意味は以下のとおりです。

用語

意味

個人情報取扱事業者

個人情報データベースなどを事業用に使用している事業者(第16条2項)

個人情報

以下いずれかに該当するもの(第2条)

  • 氏名、生年月日、その他の記述によって特定の個人を識別できる情報
  • 個人識別符号(※)が含まれる情報

※特定個人を識別できる文字や番号など

つまり上記に該当するケースでは、事前に情報の利用目的を公表しておくか、取得時に利用目的を通知することが求められます。また、単に通話録音することだけでなく、録音の目的を伝える必要がある点にも注意しましょう。

「個人情報取扱事業者」について、以前の個人情報保護法では5,000人以下の個人情報しか取り扱っていな事業者は除外されていましたが、法改正により現在では人数の制限はありません。そのため、ほとんどすべての事業者が個人情報取扱事業者に含まれると理解しておいた方が良いでしょう。

個人情報取扱事業者が個人情報を取得する際には利用目的を公表ないし通知する義務があります。コールセンターでの録音は、その内容から個人情報の取得に該当するケースが多いと考えられ、利用目的の通知を行う義務があると言えますので、利用目的の通知を義務と考えておくとともに、併せて録音することも通知することを徹底しておいた方が良いでしょう。

なお、前述したガイドラインに以下の項目が規定(一部意訳)されているため、多くの企業ではモラルとして事前通知が行われています。

< 7.通話録音情報の保護・開示等(1)>

“コールセンター業務の実施者は、個人情報である音声を収集・利用する際に、収集する情報に関する利用目的を可能な限り具体的に特定すると同時に、可能な限り広く公表する、もしくは本人に通知しなくてはならない。”

以上を踏まえると、すべてのケースで義務があるとまでは言えないものの、利用目的も含めて録音する旨を顧客に通知することが望ましいでしょう。

参考

4.コールセンターにおける通話録音の注意点

最後に、法律および顧客対応の視点から、コールセンターが通話録音する際の注意点を解説します。

適切な保存期間を設定する

個人情報保護法や日本コンタクトセンター協会のガイドラインには、保存期間に関する規定がありません。そのため、各企業が実情に応じて適切であると考える保存期間を設定する必要があります。

基本的には可能な限り長期間保存することが、トラブル対応やスタッフ育成などの観点からは望ましいです。しかし、録音システムの保存件数に上限があるケースも少なくありません。この場合、上限がないシステムを利用するか、定期的にデータのバックアップを取ることが対策となります。

法律やガイドラインに則って録音データを活用する

コールセンターで録音する情報には、個人のプライバシーに関わるものも少なくありません。そのため、個人情報保護法やガイドラインの規定に則って、録音データを慎重に保存・活用することが不可欠です。

具体的には、前述した録音目的の事前通知や、開示請求への対応義務などが挙げられます。また、セキュリティ対策を万全に行い、情報漏えいを防ぐことも求められます。こうした規定を遵守しなければ、企業の社会的信用力が低下するだけではなく、罰則の対象にもなりかねません。

顧客の心理に配慮して通話録音を行う

顧客に通話録音する旨を事前に伝えると「悪用されるのではないか?」などと顧客に不安や疑問を与えるおそれがあります。顧客にとって通話内容を録音されることは大きなプレッシャーとなり得るため、心理に配慮しましょう。

具体的には、顧客が安心して話せるようなコミュニケーションを心がけることが効果的です。また、通話前のアナウンスを安心できる内容にする(録音目的を「サービスの向上」とするなど)対策もおすすめです。

コールセンターにおける通話内容の録音は違法ではありません。ただし、個人情報保護法やガイドラインの規定に則り、顧客から求められた場合には、録音の内容の開示義務が生じます。また、原則として通知義務はありませんが、個人情報保護法の規定に該当する場合には事前通知が求められます。本記事の内容をもとに、コールセンター業務に伴う法的リスクの軽減を図りましょう。

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南陽輔 弁護士

(一歩法律事務所 / 弁護士)

一歩法律事務所所属。大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(大阪弁護士会所属)。大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件など幅広い領域の法律業務を担当。2021年3月に一歩法律事務所を設立し、企業を対象に契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主とした支援を行っている。