コールセンターでのKPIとは?計算式や目安をまとめ て解説

コールセンターの運営状況を可視化し改善するには、KPI(重要業績評価指標)の設定が欠かせません。KPIには応答率や平均対応時間などの多くの種類があり、それぞれの意味や役割を正しく理解した上でKPIを設定すれば、コールセンター運営をより最適化できるでしょう。
本記事では、コールセンターにおけるKPIの基本や具体的な指標を解説します。あわせてKPI設定のポイントやAI活用によるコールセンター運営の改善もご紹介します。ぜひ参考にしてください。
コールセンターにおけるKPIとは
コールセンターを効率よく運営するには、KPIを設定し、定期的に振り返ることが重要です。ここでは、KPIの概要や役割、そしてその重要性について詳しく解説します。
KPIとは?
企業や組織におけるプロジェクトや業務の進捗を数値で可視化し、客観的に評価するための指標です。日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれています。
KPIを設定することで、目標に対する進捗や達成状況を、組織やチーム全体で共有できるようになります。
なお、KPIと似た言葉に「KGI(Key Goal Indicator)」があります。KGIが最終的な目標を示すのに対し、KPIはその目標に到達するまでの中間指標という違いがあります。
KPIの重要性と役割
KPIは、組織やチームが掲げた目標に対し、どの程度達成できているかを数値で評価する上で欠かせない指標です。明確なKPIが設定されていない場合、不要な業務が増えたり、従業員のモチベーションが低下したりする恐れがあります。
KPIを定めてチームで共有することで、全体の意識が統一され、進むべき方向性が明確になります。さらに、現場で課題やトラブルが発生しても、KPIを基準に迅速な対応や情報共有が可能になります。
【目的別】コールセンターにおける主要なKPI一覧
コールセンターにおける主要なKPIは、大きく次の4つに分類されます。
- 顧客満足度
- 応対品質
- オペレーターの効率と成長
- コスト効率
それぞれにどのようなKPIなのか、概要や計算式とともに解説します。
顧客満足度
顧客満足度に関連するKPIには、次が挙げられます。
項目 | 概要 | 計算式(×100省略) |
---|---|---|
顧客満足度(CS) | 対応の品質をスコアリングする | ー |
顧客推奨度(NPS®) | 企業やブランドへの愛着心・忠誠度を測る | (推奨者の割合 - 批判者の割合) ÷ 総数 |
それぞれのKPIについて、さらに詳しく解説します。
顧客満足度(CS)
顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)とは、顧客や利用者が企業のサービスにどのくらい満足しているかを表す指標です。コールセンターにおいては、電話応対の質や、問い合わせに迅速に対応できているかといった点を評価するために用いられます。顧客満足度を高めることには、顧客ロイヤルティの向上やブランド力の強化につながるというメリットがあります。
顧客満足度を調査する方法には、インターネット調査やアンケート調査、インタビュー調査などがあります。
顧客推奨度(NPS®)
顧客推奨度(NPS®:Net Promoter Score)とは、顧客が自社の商品やサービスを他人にどれだけ勧めたいか、その意思を数値化する指標です。これは顧客ロイヤルティを可視化するもので、「この商品・サービスを友人や同僚にどの程度勧めたいですか?」という質問に対し、0〜10の11段階で回答してもらいます。回答は以下のように分類されます。
- 0〜6点の人:批判者
- 7〜8点の人:中立者
- 9〜10点の人:推奨者
NPSとは、推奨者の割合から批判者の割合を引くことで算出します。。例えば、回答者全体が100人で、推奨者が50人、批判者が10人の場合、NPS®は「(50人 - 10人) ÷ 100人 = 0.4」、つまり40となります。
応対品質
コールセンターの応対品質を測定する指標は、次の通りです。
項目 | 概要 | 計算式(×100省略) |
---|---|---|
応答率 | 着信件数に対する対応数の割合 | 対応件数 ÷ 総着信数 |
サービスレベル | 指定の時間内で応答できた着信件数の割合 | 指定時間内に応答した件数 ÷ 総着信数 |
平均応答速度(ASA) | 着信からオペレーターが応答するまでの平均時間 | 総待ち時間 ÷ 応答件数 |
一次解決率(FCR) | 顧客の問題が一度の通話で解決された割合 | 一度で解決した件数 ÷ 総着信数 |
応答率
応答率とは、かかってきた電話(着信)のうち、オペレーターが実際に対応できた件数の割合を示す指標です。これは、コールセンターの「つながりやすさ」を表します。
応答率は「対応件数 ÷ 総着信数 × 100(%)」で求めることができます。例えば、総着信数が100件で、そのうち80件に対応できた場合、応答率は80%です。
応答率の目標は、一般的に90%以上に設定されます。80%を下回ると、顧客は「電話がつながりにくい」と感じ、機会損失を招く可能性があります。
サービスレベル
サービスレベル(Service Level)とは、設定した目標時間内にオペレーターが応答できた着信の割合を示す指標です。どれだけ迅速に電話応対を開始できるかを表します。
計算式は「指定時間内に応答した件数 ÷ 総着信数 × 100(%)」です。例えば、目標時間を20秒と設定し、総着信数1,000件のうち850件を時間内に対応できた場合、サービスレベルは85%となります。
総着信数に対してどれだけ対応できたかを示す「応答率」に対し、サービスレベルは「時間内にどれだけ対応できたか」という、応対の速さを測る点が異なります。
平均応答速度(ASA)
平均応答速度(ASA: Average Speed of Answer)とは、着信があってからオペレーターが応答するまでにかかった時間の平均値です。
この数値は「総待ち時間 ÷ 応答件数」で算出されます。仮に5件の着信があり、それぞれの待ち時間が10秒、15秒、20秒、25秒、30秒だった場合、総待ち時間は100秒です。したがって、平均応答速度は「100秒 ÷ 5件 = 20秒」となります。
平均応答速度が短いほど顧客の待ち時間は短縮され、ストレスの軽減につながります。
一次解決率(FCR)
一次解決率(FCR: First Call Resolution)とは、顧客からの最初の問い合わせで問題が解決した割合を示す指標です。「一度の問い合わせで解決した件数 ÷ 総問い合わせ件数 × 100(%)」で計算します。
この指標は、一度のやり取りで対応を完結できたかどうかを測るため、顧客満足度と強い相関関係があります。一次解決率が高いほど顧客の手間が省けるため、顧客満足度の向上に直結します。
また、この数値が高いと、担当者間の転送や折り返し電話(コールバック)が減り、結果としてコスト削減にも貢献します。
オペレーターの効率と成長
オペレーターの業務効率や自身の成長に関するKPIは、次を参考にしてください。
項目 | 概要 | 計算式(×100省略) |
---|---|---|
稼働率 | 勤務時間のうち稼働している時間の割合 | 稼働時間 ÷ 勤務時間 |
放棄率 | 着信件数に対する放棄呼数の割合 | 放棄件数 ÷ 総着信数 |
欠勤率 | オペレーターが欠勤した割合 | 欠勤数 ÷ シフト日数 |
稼働率
コールセンターにおける稼働率とは、オペレーターの勤務時間のうち、顧客対応に関連する業務にどれだけの時間を費やしたかを示す割合です。一般的に、稼働時間には以下の業務が含まれます。
- 電話応対
- メールやチャットでの問い合わせ対応
- 顧客を待たせている保留時間
- 通話後、対応後の事務作業(後処理)
- 次の着信を待つ待機時間
一方で、休憩やミーティング、研修といった時間は「非生産時間」とされ、稼働時間には含まれません。
稼働率は「実働時間 ÷ 総勤務時間 × 100(%)」で求められます。例えば、8時間勤務のうち顧客対応関連業務に6時間を費やした場合、稼働率は「6時間 ÷ 8時間 × 100 = 75%」です。
放棄率
放棄率とは、電話をかけてきた顧客がオペレーターにつながる前に切断してしまった割合(放棄呼)を示す指標です。計算式は「放棄呼の件数 ÷ 総着信数 × 100(%)」です。総着信1,000件のうち30件が放棄呼だった場合、放棄率は3%となります。
放棄率の高さは、顧客満足度の低下や機会損失に直結します。オペレーターの増員、一部業務のアウトソーシング、IVR(自動音声応答システム)の導入などが有効な改善策です。
欠勤率
欠勤率とは、オペレーターの総勤務予定日数に対し、実際に欠勤した日数が占める割合です。
この指標は、オペレーターの出勤状況を可視化するだけでなく、職場環境や業務負担を間接的に測るバロメーターにもなります。欠勤率が高まると、限られた人員で業務を回さなければならず、現場の負担が増加します。その結果、オペレーターの離職やサービス品質の低下を招く恐れもあるため、できるだけ低く抑えることが理想です。
コスト効率
コールセンターのコスト効率に関するKPIには、次が挙げられます。
項目 | 概要 | 計算式(×100省略) |
---|---|---|
CPC(Cost Per Call) | 1件あたりに費やすコスト | かかったコスト ÷ 総着信数 |
平均処理時間 | 1件あたり(応対や後処理を含む)の平均時間 | かかった時間 ÷ 総着信数 |
離職率 | 一定期間内に離職したオペレータの割合 | 離職した数 ÷ 全体の人数 |
CPC
CPC(Cost Per Call)とは、1件の電話応対にかかるコストのことです。「総コスト ÷ 対応件数」で計算されます。
CPCを算出する際は、オペレーターの人件費だけでなく、管理者や責任者の人件費、オフィスの賃料や通信費といったインフラコスト、CRM(顧客管理)システム利用料など、コールセンター運営に関わるすべての費用を含めることが重要です。
業界や事業内容によって応対件数や時間は大きく異なるため、CPCに一般的な目安はありません。自社の状況に合わせて目標値を設定し、効果を測定していく必要があります。
平均処理時間
平均処理時間(AHT: Average Handling Time)とは、1件の応対を完了するまでにかかる平均時間です。ここでの「処理時間」には、顧客との通話時間だけでなく、保留時間や通話後の後処理業務の時間もすべて含まれます。
計算式は「(総通話時間 + 総後処理時間) ÷ 総対応件数」です。例えば、150件の対応に対し、通話時間(保留時間を含む)が合計1,000分、後処理に合計500分かかった場合、AHTは「(1000分 + 500分) ÷ 150件 = 10分」となります。
AHTが長すぎると運営コストの増加や顧客の待ち時間長期化につながります。しかし、ただ短縮すれば良いわけではなく、応対品質を維持しながら改善していくことが大切です。
離職率
離職率とは、一定期間内に離職したオペレーターの割合を示すもので、「離職者数 ÷ 全オペレーター数 × 100(%)」で算出できます。例えば、オペレーター50人のセンターで1年間に10人が離職した場合、離職率は20%です。
離職率は欠勤率と同様、低いほど望ましい指標です。コールセンターでは、業務負担の大きさやクレーム対応による精神的ストレスが離職の主な原因となることがあります。
離職率が高いと、残ったオペレーターの負担が増え、サービス品質の低下を招く悪循環に陥りかねません。改善策としては、定期的な面談によるメンタルケアの実施や、研修制度・人事評価基準の見直しなどが有効です。
コールセンターのKPIを設定する際のポイント
KPIは単に指標に対して数値を設定するだけでは不十分です。効果を引き出すためには、次のポイントを押さえておく必要があります。
- コールセンターの目的・戦略と課題を明確にする
- 測定すべきKPIに優先順位をつける
- 現実的かつ挑戦的な目標値を設定する
それぞれのポイントを詳しく解説します。
コールセンターの目的・戦略と課題を明確にする
コールセンターが管理すべきKPIは多岐にわたります。それぞれの指標は相互に影響し合うため、個別のKPIだけを見るのではなく、組織全体の目的から逆算して考えることが重要です。
例えば、「顧客満足度の向上」という目的のために、応答率を改善しようとします。しかし、単にオペレーターの稼働時間を増やして対応件数を増やすだけでは、一人ひとりの負担が過重になり、ミスやモチベーションの低下を招きます。その結果、かえって応対品質が下がり、顧客満足度を損なうことにもなりかねません。
まずは目的・戦略と現状の課題を明確にし、KPI同士の関連性を考慮しながら慎重に目標を設計しましょう。
測定すべきKPIに優先順位をつける
KPIを設定する際は、重要度を見極めて優先順位をつけ、バランス良く選定することが大切です。一度にすべてのKPIを改善しようとするとリソースが分散し、どの施策も中途半端に終わってしまう恐れがあります。
最終目標の達成に最もインパクトを与えるKPIは何かを考え、その改善に集中して取り組むべきです。例えば、応答率の改善が最優先であれば、まずは放棄呼の数や待ち時間の長さを分析し、オペレーターの適正人数を見直すといった施策が考えられます。
現実的かつ挑戦的な目標値を設定する
KPIの目標設定においては、現実的でありながらも、適度な挑戦を促す水準にすることが重要です。
簡単すぎず、かつ達成不可能でもない目標は、チームのモチベーションを維持し、成長を促します。一方で、目標が高すぎると現場は疲弊してパフォーマンスが低下し、低すぎると成長の機会を失ってしまいます。
過去の実績や業界平均、市場の動向などを踏まえ、組織やチームが努力すれば達成できる、適切な目標を設定しましょう。
AI活用によるコールセンター運営の変化
最近では、コールセンター運営にAIが導入されるケースがあります。効率的なKPIの策定・達成のためにAIの導入を検討すると良いでしょう。
コールセンター運営でAIを活用すると、次のような変化が現れます。
- オペレーター支援と応対品質の向上
- 業務効率化と自動化の推進
- VOC(顧客の声)分析の高度化と戦略的活用
- KPI測定・管理の進化と予測もAIで進化
それぞれの変化の詳細を解説します。
オペレーター支援と応対品質の向上
AIを導入すれば、顧客とオペレーターの会話をリアルタイムでテキスト化できます。その内容を分析して適切な回答候補をオペレーターの画面に表示させることで、経験の浅いオペレーターでもスムーズで質の高い対応が可能になります。これにより応対品質が均一化され、顧客満足度の向上につながります。
業務の効率化と自動化の推進
AIの導入は、業務効率化と自動化を同時に推進します。
例えば、AI搭載のチャットボットが定型的な問い合わせに24時間対応することで、顧客は自己解決の機会を得られます。また、AI搭載のIVR(自動音声応答システム)は、顧客の話した内容をAIが認識し、適切な部署へつないだり、用件をテキスト化して担当者へ通知したりすることも可能です。
VOC(顧客の声)分析の高度化と戦略的活用
声のトーンや抑揚、話す速さから顧客の感情を分析できるAIも登場しています。こうした技術を活用すれば、顧客の感情に寄り添った、よりパーソナルな対応が実現します。
さらに、蓄積された膨大な音声データを分析し、サービスの課題や顧客ニーズを抽出することで、応対品質の改善だけでなく、商品開発やマーケティング戦略にも活かせます。
KPI測定・管理と予測もAIで
コールセンターでの顧客対応だけでなく、KPI測定や管理もAIには可能です。
BCGとMITスローン・マネジメント・レビュー誌の共同調査によると、すでに30%以上の企業がKPI策定にAIを活用していると報告されています。さらに、そのうち90%以上の企業でKPIが改善したという結果も出ており、今後この流れは加速していくと見込まれます。
コールセンターのKPIは課題に合わせて設定しよう
コールセンター運営の課題を解決し、パフォーマンスを最適化するためには、適切なKPI設定が不可欠です。
本記事で解説したように、KPIには多くの種類があります。まずは自社の課題がどこにあるのかを明確にし、それを解決するためにどのKPIを重視すべきかを考えましょう。そのうえで、現実的かつ挑戦的な目標値を設定することが成功の鍵です。
また、コールセンターへのAI活用も急速に進んでいます。業務の効率化や自動化、顧客の声の分析だけでなく、KPIの策定や管理そのものにもAIは貢献します。コールセンターのKPIを考える際は、ぜひAIの活用も選択肢に入れてみてください。
電話業務の効率化をご検討中なら、AIを活用したIVR(電話自動応答)サービス「IVRy(アイブリー)」も併せてご検討ください。