電話DXとは?電話業務を効率化して負荷とストレスを 解消する方法を紹介

毎日のようにかかってくる営業電話や、同じ問い合わせへの繰り返し対応。電話業務に時間や労力を取られてしまい、本来の業務に集中できない…。そんな悩みを抱えている企業や担当者は少なくありません。しかし、電話対応をやめるわけにはいかず、人手での対応にも限界があります。
そこで、注目されているのが電話対応のDX(デジタルトランスフォーメーション)です。電話業務をデジタル化・自動化することで、業務の効率化・人件費の削減・顧客対応の品質向上が実現可能になります。
本記事では、電話DXの基本的な考え方から、導入によって得られるメリット・留意すべきデメリットまで、わかりやすく解説します。
電話DXとは?
電話DXとは、従来は人が対応していた電話業務にデジタル技術を取り入れ、効率化・自動化・高品質化を実現する取り組みです。
例えば、電話の自動応答が可能なシステムである「IVR(自動音声応答)」を活用すると、顧客の用件に応じて自動で担当部署に振り分けたり、よくある質問にはAIやボイスボットが対応したりできます。
また、通話録音やCRM(顧客管理システム)との自動連携、受電履歴の可視化、リモートワーク対応など、これまで人手で行っていた業務をデジタルの力で最適化できる点が大きな特長です。
なぜ今、電話対応にDXが必要なのか?非効率が招くデメリット
人手不足や働き方改革の推進、さらに顧客ニーズの多様化といった影響を受け、企業の電話対応はこれまで以上に大きな変化を求められています。「電話がつながらない」「待たされる」といった非効率な状態は、顧客の信頼を損なう原因となり、このまま放置すればビジネスに悪影響をもたらしかねません。
ここでは、電話対応のDX化を推進しない場合に起こりうる5つのデメリットについて解説します。
1. 電話対応の人手不足
これま で、多くの企業では電話業務は専用の電話番を雇ったり、新入社員に電話対応の教育をしたりして対応していました。しかし、電話対応のためだけに人件費を割くのはムダだと考える企業も増えています。また、新入社員の育成に関しても、電話対応をスムーズに行うまでには、一定の期間が必要です。即戦力を求める企業としては、電話対応は課題のひとつと言えるでしょう。
同時に、日本では少子高齢化が進む見通しで、ますます労働人口は減っていくことが予測されています。従来の「忙しくなったら人員を増やす」というやり方では立ち行かなくなってしまいます。それどころか、今よりもっと人手不足が常態化する可能性が高いでしょう。
2. 顧客管理ミスや情報伝達ミスが起こりやすい
電話業務では、記録が残らないため顧客管理や情報の伝達がしにくい、という問題点もあります。 電話中心の業務形態の場合、電話がかかってきたら通話をしながら顧客情報を調べる…というスタイルになり、顧客の会話を聞き逃したり、何度も聞き返したり、という手間が発生しがちです。また、顧客情報を調べることに手間取り、取り次ぎや保留時間が長くなってしまうこともあります。
3. 同じ質問に何回も対応しなければならない
電話は即座にコミュニケーションができる強みがありますが、一方でどんな内容であっても1対1で対応しなければならないという特徴もあります。例えば、営業時間の案内や会社へのアクセスなど、ホームページを見れば分かるような内容でも 、気軽に電話で質問されることがよくあります。こうした問い合わせの電話に対応することで、そのたびに作業が中断されてしまい、集中力が低下したり、業務効率の低下につながったりすることもあります。
4. 営業電話や迷惑電話への対応の負荷
企業には、日々あらゆる種類の電話がかかってきます。例えば、企業向けの営業電話だけでなく、従業員個人向けの営業電話なども多く、企業によっては毎日数十件の営業電話への対応が必要なこともあります。これらの電話は、1件あたりの通話時間は短くても、その都度作業をストップしなければならず、業務への集中力が削がれる原因になっています。
5. 電話の取りこぼしによるビジネス機会の損失
営業時間外や不在時に、電話を受けることができずに、貴重なビジネスチャンスを失ったり、他社へ発注されたりした経験はないでしょうか? また、電話を受けられないことでクレームにつながる場合もあるかもしれません。しかし、大事な電話は必ずしも営業時間内にかかってくるとは限らず、備えておくことが必要です。
これら電話業務の問題点に対応するには、電話DXを推進するのがおすすめです。
電話対応を効率化するメリットとは?DXで実現できる5つのこと
電話対応を効率化すれば、従業員の負担軽減だけではなく、企業経営の観点からも大きなメリットが期待できます。
ここでは、電話のDX化によって得られる具体的なメリットをみてい きましょう。
1. 電話対応の負担やストレスを軽減できる
電話DXにより、従来、人が行っていた電話対応の一部を自動化できます。例えば、自動音声応答(IVR)を導入することで、一次対応を自動化し、担当者への取り次ぎが効率化されます。
これにより、担当者は定型的な問い合わせ対応から解放され、より専門性の高い業務に集中できるようになるでしょう。また、顧客からの問い合わせ内容を事前に予測できるため、担当者の精神的な負担やストレスの軽減にもつながります。
2. 人件費や通信コストを最適化できる
電話DXによって、電話対応に必要な人員を削減し、人件費を最適化することが可能です。例えば、IVRやAIチャットボットを導入することで、24時間365日自動で顧客対応を行い、夜間や休日の電話対応にかかる人件費を削減できます。クラウドサービスを活用することにより、通信コストの削減も期待できます。
3. 場所にとらわれず電話対応が可能になる
クラウド型電話システムやクラウドPBXを導入することで、自宅や外出先でも会社の電話番号で電話対応が可能になります。これにより、テレワークやリモートワークを導入している企業でも、場所にとらわれず、従業員が円滑に電話対応を行うことができます。
4. 災害や障害時も電話対応を維持できる
従来の固定電話システムは、災害や障害が発生すると電話回線が寸 断され、電話対応が不可能になるリスクがありました。しかし、クラウド型電話システムは、インターネット回線を利用しているため、災害発生時でも、インターネット回線が維持されていれば電話対応を継続できます。
また、クラウド上にデータが保管されているため、万が一の事態が発生した場合でも、データを失うことなく、速やかに復旧することが可能です。
5. 正確かつ迅速な電話対応で顧客満足度が向上
電話DXにより、顧客の問い合わせ内容に応じて、最適な担当者に迅速に取り次ぐことが可能になります。自動音声ガイダンスや着信振り分け機能を活用することで、待ち時間の短縮とスムーズな対応が実現します。
また、事前にFAQチャットボットを導入することで、顧客は電話をかける前に自己解決できるため、問い合わせ全体の負担も軽減されます。これらの仕組みによって、顧客満足度の向上に大きく貢献します。
ツール導入前にやるべき電話対応の効率化テクニック
電話対応の効率化には、特別なシステムやツールがなくても始められる工夫があります。この章では、電話対応を効率化する3つのテクニックをご紹介します。
本格的なシステム導入を検討する前に、まずは自社でできることから着手してみましょう。
対応マニュアル(トークスクリプト)を作成する
個人の経験やスキルに頼る体制では、どうしても対応品質にばらつきが生まれます。担当者によって案内の質が 変わることがないよう、対応の手順や言葉遣いをマニュアルで標準化しましょう。
よくある質問への回答やクレーム時の切り返し方をまとめておけば、回答に迷う時間がなくなり、保留や取り次ぎも減らせます。対応時間が短縮される上、新人スタッフも安心して業務に取り組めるため、組織全体の効率が向上します。
よくある質問(FAQ)を整備しウェブサイトに掲載する
営業時間や店舗へのアクセス・商品の仕様といった頻繁に寄せられる質問と回答は、FAQとしてウェブサイトに掲載しましょう。
「営業時間は?」「駐車場はある?」といった定型的な質問や、急を要しない問い合わせはウェブサイト上で解決できるようにします。簡単な問い合わせの電話が減ることで、スタッフはより複雑な用件や、売り上げにつながるような重要度の高い問い合わせに集中できます。
入電数そのものが減って対応負荷が軽減されるため、組織全体の効率アップにつながるでしょう。
担当者を時間や曜日で割りふる
「手の空いた人が出る」という曖昧なルールでは、特定の人に負担が偏りがちです。また、誰も電話に出ずに対応が遅れる事態を招くおそれもあります。
そこで、「午前中はAさん、午後はBさん」「月曜はCチーム、火曜はDチーム」のように、時間や曜日で担当を分ける明確なルールを設けるのが効果的です。当番制にすれば、担当以外の時間は電話を気にせず業務に集中できるため、組織全体の生産性向上が期待できます。
電話対応の効率化に役立つ!DXを実現する代表的なツール・システム
運用の工夫だけでも、ある程度電話対応を効率化できますが、より抜本的な課題解決を目指すならツールの活用が近道です。
ひと口にツールといっても、その種類や役割はさまざまです。自社の課題や目的に合った最適な選択ができるよう、代表的な5つのツール・システムをご紹介します。
IVR(自動音声応答システム)
IVR(Interactive Voice Response)は、電話の着信時にコンピューターが自動音声で応答し、利用者にプッシュ操作などで用件を選択してもらうシステムです。問い合わせ内容に応じて担当部署へ振り分けるほか、よくある質問への自動回答もできます。
電話の一次対応を任せられるため、従業員はより重要な業務に集中できます。24時間365日、いつでも顧客対応が可能な体制を構築できる点も魅力です。
クラウドPBX
クラウドPBXは、従来オフィスに設置していた電話交換機(PBX)の機能をクラウド上で提供するサービスです。インターネット経由で社内外の通話や内線、転送、保留などの機能を利用でき、スマートフォンやPCからも会社番号で発着信が可能です。
場所を問わず利用できるため、テレワークやリモートワークにも柔軟に対応できます。
CTI
CTI(Computer Telephony Integration)は、電話とコンピューターのシステムを連携させ、電話業務を効率化するための技術です。